ネタバレあり!『アナと雪の女王2』はストーリーが複雑難解でキャッチーな歌も無い?ディズニー映画としての評価は・・・

アナと雪の女王2


監督:クリス・バック
出演:イディナ・メンゼル、クリスティン・ベル、ジョナサン・グロフ、ジョシュ・ギャッド 他
言語:英語
リリース年:2019
評価★★★★★☆☆☆☆☆

Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures『参照:https://www.imdb.com


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~”続編作ろ~よぉ♪6年ぶりのアナ雪、話はアレンデール王国の過去と女王エルサが持つ不思議な力との知られざる因果を探るが、ストーリーは目新しさが無い雑な御伽噺でした”~
~”映像美は前作より格段にアップし、劇場の巨大スクリーンでは圧巻!でも今一つ耳に残らない楽曲の数々は残念だし、アナ雪の世界をこねくり回すのはこれが限界”~

もくじ


あらすじ

不思議な力を授けられたアレンデール王国の女王エルサ
戴冠式から3年が経ち、王国は秋色に染まっていた
ある日を境にエルサには不思議な声が聴こえる様になる
好奇心に抗えず、声の主を探ると王国は突如現れた精霊に襲われてしまう
王国を救う手立ては声の主と王国の隠された秘密を暴くこと
何故エルサにはその力が与えられたのか
そして姉妹は謎暴くべく、全てを変えてしまう旅に出る・・・


レビュー

『アナと雪の女王』(2013年)で幕を閉じた姉妹の物語は、再びフランチャイズ・ランドのドル箱となる。

『アナと雪の女王2』は2度鑑賞しましたが、初回での印象は最悪でした。物語の幹も晦渋で疑問点が多く、ストーリーの進行に合わせて場当たり的に脚本の筆を進めた様な所感が否めず。実質、2度鑑賞しても続編の為の続編である心証は拭い切れていない部分があり、殊にオープニングがアナとエルサの幼少期に戻る必要がある時点で、前作でセットアップし切れなかったバック・ストーリーがある事を如実に語っていました。

『アナと雪の女王』(2013年)で続編の創出を想定していなかったからこそ、この期に及んで前作ではその存在が示唆さえされなかった魔法の森や精霊を『アナと雪の女王2』の世界に捻じ込む必要があり、ウォルト・ディズニー・スタジオが鉄面皮を被って創り出した金の木に過ぎません。

しかしエルサのコスチュームに包まれ、満面の笑みで”オラフ!”と燥ぐ隣の席の少女には全く関係無い様子。続編の為に拵えたストーリーである事を忘れる事さえ出来れば、相応にエンターテイニングな作品です。

キャッチコピーの通り、『アナと雪の女王2』はアレンデール王国の女王エルサが生まれながら持つ氷を操る能力のオリジンを辿る物語を描きます。

アレンデール王国の女王に即位してから3年の月日が経ち、王国には秋が訪れた頃。エルサは時折聞こえる不思議な歌声に悩まされるが、善良な意図を感じ取ったエルサは声の主に惹かれてしまい、図らずもエルサの力に呼応した太古の精霊を目覚めさせてしまう。その精霊とは、今は亡き父アグナルが少年として訪れた魔法の森に棲まう火、水、風、大地を司る精霊だった。アグナルは当時の国王だった父ルナードと共に、精霊と共存するノーサルドラの民と友好を築こうとするが、戦争が勃発してアグナルは辛くも一命を取り留めたものの、ルナードは闘いで命を落としてしまいます。


映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
アレンデール王国に隠された驚愕の過去、祖父ルナードが命を落とした時、一体何が・・・?

出典:”Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures”『参照:https://www.imdb.com

ノーサルドラとアレンデール王国の諍いに憤慨した精霊は、ノーサルドラが暮らす森と外界を魔法の濃霧で隔離し、以来森から出入り出来ない状態が現在も続いていました。覚醒した精霊はアレンデール王国に猛威を振るい、国民は退避を余儀無くされてしまいます。突如の事態に混乱するアナとエルサですが、クリストフを育てたトロール、パビーはアレンデール王国の過去に隠された真実を見付け出さねば、王国に未来は無い事を告げる。姉妹はエルサに聴こえる声を頼りに、魔法の森へと急ぎます。

『アナと雪の女王2』ではミュージカルの如くのべつ幕無しに新曲が撃ち込まれますが、本作では質より量。前作と異なり、耳に余韻を残さないナンバーが多い。『アナと雪の女王』で全国に驚異的なブームを齎した『レット・イット・ゴー~ありのままで』に追従すべく、『アナと雪の女王2』ではエルサが『イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに』をソロで歌い上げますが、聴かせどころを除くとメロディも歌詞も印象に残りません。唯一の救いはエルサの声を演じるイディナ・メンゼルのパワフルで透き通った声が素晴らしかった点です。

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大人の耳にも美しい音色や詩の様に凝った歌詞も無く、幼稚園の教室から流れて来そうなコンテンツが多い。

ストーリーは差し置いて見慣れたキャラクターが歌い、踊り、跳ね回っていれば満足する子供には魅力的な映画です。しかし前作と異なり、楽曲も奥深さが無く、キャッチーになろうと努力した痕跡だけは伺える様な出来栄えで、テイラー・スウィフトのMVが映画に割り込んだ様な錯覚に陥る。


映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
日に日に力を強めるエルサの能力も王国の知られざる過去に関係があった

出典:”Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures”『参照:https://www.imdb.com

子供に向けた映画の観点からは、明らかなメッセージやテーマが垣間見えます。オラフが歌う『サムシングス・ネヴァー・チェンジ』で成長や時の経過と共に訪れる変化を恐れずに受け入れる事や、『ウェン・アイム・オールダー』で今は理解出来ない事も大人になれば分かる様になる事(皮肉な事に大人である我々の方が理解出来ない事は多いので、その点二面的な意味を持ったメッセージ)を歌う内容はストレートなメッセージ。故にラストでUターンして重要なメッセージを撤回した瞬間は正直癇に障りました。

主要なキャラクターが1人、静かな死を迎えるシーンがありますが『アナと雪の女王2』で唯一、心を撫でられる様な感覚が訪れる場面です。上映から10分程度で退屈していた私も、このシーンばかりは涙腺を少し緩められました。子供にも死について教える気概に率直に感心しましたが、それも束の間。ラストで忽ち息を吹き返す、安易なハッピーエンドに帰依してしまいます。ここまで子供向けでありながら、このラストは子供にどの様な意味を与えてしまうのか、制作陣は考え抜いたのか疑問です。

あのラストは2時間費やして積み上げた微々たるセンチメンタルなエネルギーを済し崩しにし、途端に映画館が冷え込んだ瞬間。『アナと雪の女王2』は前作には及ばず、危惧していた通り作品としての価値よりも回収してくれる札束の枚数を強く意識した映画でした。

映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
スカイ君
最近は過去作品の実写化とか、続編作りばっかりだからなーディズニーは・・・そう思ってしまうのも分かるがな、そこそこ楽しい映画だったんじゃないか?映像美はすげぇし
映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
モカ君
ボクも楽しかったよ!エルサも最後格好良かったなぁ
映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
スカイ君
オラフには結構笑わされたしな、今回は可愛く見えたぜ。こっからはいつも通りネタバレありだ、王国の謎にも触れてるから、まだ知りたくない人は映画を観てネタバレOKになってからまた来てくれ!
『アナと雪の女王2』の魔法よりも難解なストーリーの謎でお腹が一杯、でもオラフとクリストフが笑わせてくれるから大丈夫

少し考えれば際限無く疑問が湧き出るストーリー。

『アナと雪の女王2』では火、水、風、大地を司る精霊の他に物語の中核となる第5の精霊の存在が明かされますが、私としては2度の鑑賞を以てしても腑に落ちませんでした。第5の精霊は人間と魔法や自然の架け橋となる存在であると説明されますが、アレンデール王国がノーサルドラを奇襲するまでノーサルドラは火、水、風、大地の精霊と共存し、架け橋を必要としていなかった様子。しかし、その存在はアナとエルサの母、イドゥナのスカーフに刻まれている事から、太古より知られている精霊のはず。第5の精霊の役割、そしてその能力が皆目解せません。

ラストでエルサが第5の精霊である事を示唆されますが、エルサが誕生する以前から知られている存在である為、エルサが第5の精霊と考えるのは不自然です。当のエルサは架け橋には袂が2つ必要で、一方がエルサ、他方がアナである事を説明します。即ち、架け橋そのものはエルサでは無く、アートハランから不思議な歌声でエルサに呼び掛けていた母イドゥナだった事になります。第5の精霊なる存在が沈没船と共に最期を迎えるのも納得し難い話ですが。或いは、袂であるアナとエルサと合わせて3人が第5の精霊なのか。架け橋は喩えに過ぎず、その目的が明確で無い以上はエルサが氷を操り、アナは常人である理由には繋がりません。

続編で途端に水が過去を全て記憶している事となるのも理解出来ず、姉妹がヒントを必要とするタイミングでスカーフの文様まで忠実に再現した精巧な氷の像が出現する事も甚だ疑問です。前作の謎を解明するどころか、新たな疑問を呼び起こす点はマイナス。


映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
今まで精霊が一切エルサに呼応しなかったのは何故なのか、声が聴こえなかった理由も良く分からない

出典:”Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures”『参照:https://www.imdb.com

如何せん子供向けですが、最低限、筋は通すべきでは無いかと思うのが本音です。

しかし、『アナと雪の女王2』は真のスター、オラフが少しばかり救ってくれます。前作では少々鼻に付く呆けた存在でしたが、『アナと雪の女王2』では実際に抱腹させてくれる瞬間を届けてくれる点はグッド。ハイライトは前作の粗筋を才能溢れるワンマン寸劇で演じてくれるシーンですが、他にも和ませる様なコミカルなキャラクターを発揮する場面が多々あり、好感度が上がります。ストーリーが難解で比較的ダークな側面も持ち合わせているだけに、オラフの扱い方には幸いしました。

笑いと言えば、クリストフのソロ・ナンバー。

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台湾ポップ歌手のMVを彷彿とさせる映像編集、アジアンなボーイズ・バンドを思わせるソウルフルなエレキギター、恥ずかしさの余り目を背けたくなるけれど面白過ぎて釘付けになる振り付け。凝っているのでシリアスな意図やトーンがある可能性も脳裏を過ぎりつつ、私は笑いが終始止まりませんでした。

加えてストーリーの焦点もラブリーなロマンスでは無く(尤も、クリストフはアナへのプロポーズに幾度と無く失敗しますが、ロマンスよりもコミカルな毛色が強い)、姉妹の愛情と互いへの想いに置かれている事もスマートな選択。我々男性も、背が高くて勇敢で強く、女性が窮地に陥ったら助けなければならないステレオタイプにはよいよい辟易している。昨今の女性がファム・ファタールを忌み嫌い、ガールズ・パワーの解放を声高に叫ぶ様に、男性としても雄々しい白馬が似合うハンサムで完璧な髪型を風に靡かせた、モデル体型の王子として女性を守らねばならないイメージ象に苦しめられている側面があるので、男性の理想像が女性の中でも崩されるなら有難い話です。


映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
『アナと雪の女王2』の真のスターはオラフ!笑いのMVPはクリストフと良い勝負

出典:”Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures”『参照:https://www.imdb.com

流れが複雑である事以外にも、ストーリーとして落胆したのはオラフの死。ラストで生き返るのであれば、子供には死が齎す悲嘆や重さを実感させられない。顔面に散弾銃を撃ち込まれてもリスポーンして生き返るシューティング・ゲームのキャラクターと変わりません。

同様にアレンデール王国が過ちの誅罰を受ける事無いエンディングにも肩を落としました。崩壊する王国を観たかったのでは無く、重要なのは童話と同じ様に『アナと雪の女王2』から学ぶ教訓です。アナとエルサは正しい行いをしましたが、それが凄惨な過去の代償を帳消しにする事になりませんし、そうあるべきでも無ければ現実的にそうはならない。無論、取り返しがつかない死や終焉は子供向けには残酷ですが、それこそが御伽噺のポイントでは無いかと思います。

チキンレースで土俵際に急ブレーキを掛けてしまった『アナと雪の女王2』は、単なる金の木以上の意義を持てる機会を無下に捨ててしまっており、口惜しさは否めませんでした。

『アナと雪の女王2』の観どころは特に風光明媚な景色と映像美、でもやっぱり足りないのは・・・

秋色に包まれたアレンデール王国は前作で観られなかった美しさを放ち、魔法の森での冒険も素晴らしい映像美が次々とスクリーンに映し出されます。

エルサが水の精霊、ノックの背に乗って水面を疾走するシーンは神秘的で吸い込まれる様な魅力に満ちています。エルサへクローズアップするシーンでも、衣装へ注目すると肩回りを飾る装飾が、エルサの微妙な動きに合わせて光を反射し、生地の編目とテクスチャも微かに分かる。触らなくても、その手触りが想像出来そうな程でキャラクターの肌艶も前作の様にプラスティックを想起させる仕上がりでは無く、血が通っていそうな温かみが感じられます。

CGiで創造された映像に変わりはありませんが、視覚的にオーディエンスへ与えるインパクトは大きい。

『イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに』を披露するシーンでは、美麗なCGiが本領を発揮し、黒夜を背景にエルサがイルミネーションの如く大小様々な光を手から放つ様子を、華麗に映し出します。特殊効果では描き切れない、最先端技術とアーティストが生み出す相乗効果には息を呑みます。

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魔法の森でも、背景に聳え立つ樹々でさえ恐ろしくリアル。独特の湿った香りが漂って来そうで、『アナと雪の女王2』のアニメーションはアベンジャーズに加盟出来そうなエルサのパワーを描くだけに限らず、セット全体を驚くべきクォリティで仕上げています。ストーリーには不満ですが、映像だけでも楽しむ為に鑑賞しても良いと思う程です。


映画『アナと雪の女王2』の評価とネタバレあり感想
『アナと雪の女王2』のエルサはアベンジャーズ級のスーパーパワーを披露

出典:”Frozen II(2019) ©Walt Disney Studios Motion Pictures”『参照:https://www.imdb.com

これまでディズニーが世に送り出した映画や作品の価値や素晴らしさは、全て時代と関係無く、タイムレスである事だと感じています。しかし、『アナと雪の女王2』はタイムレスな名作に及ばない。タイムレスである事の要因は多様で、音楽を例に挙げると『アラジン』(1992年)の『ホール・ニュー・ワールド』の様に30年近く経過した現代でも幾度と無くカバーされ、老若男女に知れ渡ったメロディはこの先も映画史に残る伝説と言っても過言ではありません。そこにストーリー、アイコニックなキャラクター、記憶に残るアニメーションやシーンの数々が重なってタイムレスとなります。

それがディズニーの映画の魅力で、その体験価値を求めて映画館に足繁く通ったものでした。

『アナと雪の女王2』に限った話ではありませんが、昨今は常識としての形が定まらないフェミニズムやLGBTQに纏わる複雑な問題に左右され、”今出来る正しい事”に合わせているばかりに、マジカルでタイムレスな作品を描く事よりも、世間体を意識し、オーディエンスの顔色を窺う事がメインになっている所感は除き切れません。『アナと雪の女王』、『アナと雪の女王2』で縊れた細いウェストに美しいブロンドを湛えた姉妹の容姿に関しても、女性の美をステレオタイプするものだと批判する声もある中、そうしたデマンドに応える事を余儀無くされている映画業界の関係者に同情の余地はありますが。
(先程述べた様に女性のキャラクターに限らず、それならば男性もメインは背が低くてプラスサイズの禿げ上がったキャラクターをアナやエルサのプリンスに迎える事も女性には許容頂きたい)

『アナと雪の女王2』は後付けで考えられたストーリーとしては上出来で相応にエンターテイニングですが、難がある事は否めず、姉妹の平穏な日々を無理に叩き壊してスクリーンに呼び戻すのは今回を最後にした方が賢明であろう事を痛感する作品でした。


この映画を観られるサイト

『アナと雪の女王2』は11月22日より全国の劇場で上映!映像美が最大のポイントだと思うので、IMAXで鑑賞する事をお勧めします。

まとめ

前作に比べて格段に難しいストーリーは子供の気を逸らしかねませんが、歌とオラフが辛うじて繋ぎ留めてくれます。如何に映像美が美しくても『アナと雪の女王2』は明らかに制作スタジオのドル箱として生まれた存在である事は否めません。

結果的には相応のエンターテイメントですが、何処か誤魔化された様な靄が残る印象。中核にあるエルサの力の由来が結局は分からないので、少し騙された様な感覚も気持ちが悪い。

一見の価値はあると思いますし、子供が何度も観たくなるタイプの映画ですが、残念ながら一時の産物、時代の移り変わりと共に忘却される作品では無いかと感じました。

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