『ダークナイト』の解説と考察、ノーラン監督が仕掛けた様々なテーマとアイディアの数々

SF

 もくじ

  1. 意外と深い二面性というテーマ
  1. ジョーカーの計算高さの根底にあるのはゲーム理論
  1. バットマンを待ち受ける”炎の試練”とは
  1. ジョーカー誕生の秘密とは

 あらすじ


ブルース・ウェインことバットマンが活躍するゴッサム市
それまで蔓延っていた犯罪者たちはバットマンが現れる夜に怯えて暮らしていた
しかし、依然として町から汚職や犯罪が一掃されたわけではない
新任地方検事のハーヴィー・デントはゴッサム市警のゴードンやバットマンと共にマフィアの掃討に当たる
追い詰められたマフィアは、ジョーカーに活動資金の50%と引き換えにバットマンの抹殺を依頼する
狂人と呼ばれるジョーカーはバットマンを陥れるために画策を始めるー


意外と深い二面性というテーマ

悪役となるトゥーフェイス、そして彼が好むコイン・フリップからも分かる様にダークナイトは陰と陽、”二面性”というテーマが非常に色濃い映画です。

このテーマは後ほど述べる通り、究極的に”真のヒーローとは何か”を問うもの

現実離れしたファンタスティックなヒーローアクションを楽しむよりも、ノーラン監督らしい奥行きを与えたバットマン映画、ダークナイト。でもこれだけ聞くと、他の映画でも似た様なのいっぱいある気が・・・ってなりますよね。

でもダークナイトが違うのは”ディテールへのコミットメント”、本当にそれだけで他のヒーロー映画とは一線を画す作品になっています。

ホワイトナイトとダークナイト

ゴッサム市の地方検事ハーヴィ・デントは、法の下で数多くの犯罪者を裁いた英雄的存在として夜闇に紛れて活動するバットマンとは対照的な存在として描かれます。

ブルース・ウェイン(バットマン)の元恋人、レイチェル・ドーズと交際中の彼がレストランでブルースとバッタリ会うシーンではこの事は如実に表現されています。ゴッサム市に必要なヒーローについて議論を巡らせる中、ブルースはハーヴィーこそが白日の下で堂々と犯罪者を監獄に送れるゴッサムの希望だと確信します。

ブルースの連れ、ナターシャが”もしハーヴィ・デントがバットマンだったとしたら面白いわね”と明らかにバットマンとハーヴィーを重ねる発言をするだけでなく、レストランのメニューをマスクに見立ててハーヴィの顔を隠します

ゴッサムのホワイトナイト、ハーヴィー・デントの顔をメニューで隠すナターシャ

出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

この時、メニューが白い事がハーヴィがダークナイトと対照的な”ホワイト”ナイトである事を表している事に注目。

つまり映画の前半で、ハーヴィーとブルースの相反する関係性が確立されます。が、矛盾の様に思えますが、ハーヴィーとブルースは同一の存在という関係でもあるのです。説明しますね(笑)。

ホワイトとダークはあくまでも悪を駆逐するやり方の問題で、どちらも”正義の味方”という意味では同一のアイデンティティを持つ者同士です。でもそれなら、ハーヴィーは法の使徒として、ブルースは法が届かない夜闇の番犬として共存する事もできそうですが、そうは行かない事を表すのがコイン。

幾度となくハーヴィーが使うコインこそ、ダークナイトの二面性を体現しておりますが当然、表と裏が同時にその面を見せる事は有り得ません。一枚のコインに表が二面は不可能、つまりハーヴィーかブルースか・・・そこには、“真のヒーロー”という唯一無二の概念が存在しているからなのです。


ハーヴィーが好んで使うコインは彼が巧みに人を操る特性も表している


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

“真のヒーロー”って何?

その答えは、ブルースの執事アルフレッドが教えてくれます。正しい選択をする為なら自己犠牲も、嫌われ役を買ってでる事も厭わない者。ジョーカーの要求に応じ、マスクを脱いで正体を明かす事を決めたブルースにアルフレッドはそう語ります。

しかし、記者会見当日、バットマンを庇って警察に自ら手錠をかけられたのはハーヴィー・デント。その場に居たブルースも、敢えて声を上げる事はしていません。

つまり、ダークナイトのイデオロギーに従うとゴッサム市の為に進んで自己犠牲に身を投じたハーヴィーの方がバットマンよりもヒーローとして相応しい人間なのです。ハーヴィーが代わりに逮捕された事態を受けてレイチェルがブルースに激怒した様に、彼は”真のヒーロー”失格です。


全てを失う覚悟でバットマンとして手錠をかけられるハーヴィ・デント


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

しかし、コインに表が2面共存する事はできない。

この後、映画的な意味合いでバットマンが真のヒーローになるにはハーヴィーに退いてもらうしかない。トゥーフェイスは、ホワイトナイトになれない二重人格的な彼の本性を剥き出しにした結果です。

ダークナイトのラストで死亡したハーヴィ・デントの悪事を暴露せず、ゴッサム市にとっての希望を象徴する人物としてのアイデンティティを持たせ、全ての罪を被る自己犠牲を払ったバットマンは、この時やっと”真のヒーロー”になった事を表しているのです。

映画的には、ハーヴィーはバットマンを真のヒーローにする為の踏み台となったとさえ言えますね。元々気性が荒い面があったとは言え、ちょっと可哀想な気も・・・

知らなかった!ダークナイト豆知識

出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

ブルースの秘密をテレビで暴露しようとしたリースがジョーカーに狙われた時、ブルースは愛車で彼を救いにゴッサム市を猛スピードでは知らせます。その車は、ランボルギーニ・ムルシエラゴ。ムルシエラゴ(Murciélago)とはスペイン語で”コウモリ”の意味で、白昼のバットマンにはピッタリな車なのです。

 

ジョーカーとバットマン

共存できないハーヴィーとブルースの関係性。その二面性とは対照的に、共存しなければ意味がないバットマンとジョーカー

ダークナイトの名シーンとなった、バットマンがジョーカーを尋問するシーンでジョーカーが放った台詞。二人は紙一重である事と、表裏一体でもある事が分かります。


Don’t talk like one of them. You’re not! Even if you’d like to be. To them, you’re just a freak, like me!
(あいつらの一人みたいな言い草はよせよ。お前は違うのさ!あいつらみたいになりたくてもな。やつらからすれば、お前は俺と同じイカれた野郎さ)


バットマンもジョーカーもゴッサム市民からすれば、ただの”フリーク”である事を語っています。興味深い事に、この時ノーラン監督が駆使しているカメラワークに注目すると面白い事が推測できます。

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カメラワークは原則、人間の直感に即した方法論に基づいています。例えば、”正義の味方”や映画の主人公格のキャラクターは通常、”画面左から右へ動く”様に撮影されます。文章を読む時を想像すると分り易いですが、人間は”左から右”に視線を移動させる事を”自然”と感じます。違和感がないのです。


シーンの始めはスクリーンの左側に居て目線は右向きだったバットマンが途中から左へ


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

一方で、悪役や主人公に敵対する人物は“画面右から左へ動く”様に撮影される事があり、これは人間の直感に反する動きだからです。これによって無意識な違和感、映っているキャラクターに対して何となく居心地の悪さを感じるのです。

このシーンでもバットマンは左、ジョーカーは右にそれぞれ”立ち位置”を与えられます。しかし、ジョーカーの話に聞き入るにつれ、バットマンが右、ジョーカーが左に逆転。最後には元に戻りますが、これはジョーカーが少しずつバットマンの頭の中を侵し陥れつつある事を表しています。つまり、ジョーカーの言う通りバットマンも彼も考え方によっては互いの境界線がぼやけてしまう事を示しているのです。

ブルースのパーティでも、二人のキャラクターを横並びで描写しているシーンがあります。遅れて登場したブルースの第一声と言えば・・・


Where is Harvey?
(ハーヴィはどこかな?)


二人とも登場してすぐグラスのシャンパンを捨てる描写もあります


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

同じ様に遅れて登場したジョーカーもこんな台詞を


Where is Harvey Dent?
(ハーヴィ・デントはどこだ?)


更に二人とも、酔わない様にする為かシャパンのグラスを捨てるシーンが。ノーラン監督はこうした相似性を二人に持たせる事で、裏を返せば二面的である二人の関係性を強調しています。

知らなかった!ダークナイト豆知識

出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

ラウを確保する為にバットマンが使った器具はスカイフックと呼ばれる、実際にCIAが使っていたものです。正式名称は Fulton surface-to-air recovery system (STARS) で、映画の通りの使い方をします。アイアンマンなどと違い、ノーラン監督はかなりリアリティを追求してダークナイトを制作していた様で、お金さえあればダークナイトに登場するバットマンは実在出来そう。

 


ジョーカーの計算高さの根底にあるのはゲーム理論

ゲーム理論とは経済学にも使われている数学的理論の一つで、社会や自然界における複数主体が関わる意思決定の問題や行動の相互依存的状況を数学的なモデルを用いて研究する学問を指します。

小難しい事を置いておくと、ある条件や状況の下、期待される最良の結果を導く戦略的なアプローチを導く考え方だと思って頂ければ。

実はこのゲーム理論、ダークナイトのあちらこちらで使われていた事をご存知でしょうか。

海賊のゲーム

ダークナイトの幕開けは、ジョーカーが企てた銀行強盗から始まります。

裏で指示だけをしている黒幕の様に見せかけ、実は実行部隊に潜んで居たジョーカー。その上、彼は密にそれぞれの役割を担う実行メンバーに、役割を終えた時点で相手を殺す様に指示していました。取り分を増やす為、金庫破りが金庫を破ったら殺して・・・と言った調子。

この手法は、ゲーム理論で言う海賊のゲームに似ています


次々と仲間を殺していく強盗団の一味


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

5人の海賊が100ゴールド(100万円とでも思ってもらえれば)を見つけ、それぞれの取り分を決めるというもの。最年長の海賊が配分を提案、全員で投票して過半数以上票を集められれば提案通り分配し、棄却されれば提案者は殺され、次に年次が高い者が提案する。このプロセスを繰り返すゲームです。

この時、どの様に配分を取り決めるのがベストかを考える事になります。そしてご存知の通り、強盗のシーンでは最終的に全ての取り分がジョーカーのポケットへ。海賊のゲームと同様に、ジョーカーの計画は幾つかの仮説に基づいており、例えば強盗の実行犯が全員金を何よりも優先する事。そうでなければ、ジョーカーの計略は成立しません。

彼が思惑通りに全ての強奪金を手に入れた事は彼がこうした戦略的なアプローチに非常に長けている事を表します。

縮むパイのゲーム

ジョーカーの計算高さが良く分かるのは冒頭のシーンだけではありません。特にジョーカー自身、己の緻密さに相応の自信を持っている事が分かるのが、マフィアたちとの会議シーン

ジョーカーに資金を奪われ、警察にじわじわと資金源を押さえられていくマフィアたちは、打つ手を相談しあっています。そこに乱入するのは当のジョーカー。

彼はマフィアの資金50%と引き換えにバットマンを殺す事を提案。50%という数字に、”お前はイカれている”と言われたジョーカーのリアクションは意外にも、静かな怒りさえ感じる様な心外さを持ち合わせています。

確かに、全財産の半分も要求されるとなると、かなりの額で一見するとムチャクチャで金に眼が眩んだ男の条件にも思えますが・・・


衝動的にムチャクチャしている様に見えて、実は計算しつくしているジョーカー


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

これは交渉ごとにおけるアプローチを問題にした、ゲーム理論の数ある思考実験の一つに基づいています。

縮むパイのゲーム

タカシとハナコがアイスクリームケーキをどの様に分け合うか交渉するシーンを想定してください。アイスクリームなので、交渉が長引けば長引くほど食べたいパイは溶けていき、全体の取り分が少なくなります。つまり、交渉に使う”時間”が命取りなのです

マフィアの会議でも議論に時間を使えば使う程、彼らの資金は危険に晒されて縮小していきます。



最終的にはギャンボルが言う通り”イカれた”エンディングを迎え、マフィアたちは滅ぼされます


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

縮むパイのゲームでは、様々な条件を課す事で様々な実験が出来ますがこのマフィアが置かれている状況に鑑みるとジョーカーの50%という提案は実はリーズナブルなのです。

つまり彼は状況と相手の意図を良く分析して、良く考えた上で会議に乱入しています。それにも関わらず、”イカれている”と鼻で笑ったマフィアに冷ややかな視線を送ったわけです。

知らなかった!ダークナイト豆知識

出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

トゥーフェイスになったハーヴィーがマフィアの頭、サルヴァトーレ・マローニを襲撃するシーンでは、彼がいつの間にかマローニの車の後部座席に座っています。が、マローニが車に乗り込む直前に車のサイドミラーに注目。良く見るとハーヴィーが乗り込む様子が見えます。画像では、ちゃんと彼のシルエットが映っていますが、分かりますでしょうか。

囚人のジレンマ

ジョーカーの戦略的な思考を表すもう一つの例が、クライマックスに向けて彼が仕掛けるジレンマ。

二隻のボートにはそれぞれ、一般市民と護送中の囚人たちが乗っており、いずれにも時限爆弾が仕掛けられている。同時刻に爆破する様になっているが、起爆装置を使って片方を先に爆破すればもう一隻は助かる、という手はずになっています。

お互いの起爆装置をお互いが持っており、互いに通信し合う方法もない。一種のチキンゲームです。

罪人か否かの観点で命の尊さを考えると、市民が助かるべきです。つまり、答えは簡単で市民がさっさと囚人のボードを爆破すれば良い。しかし、倫理や人の精神が他者を殺して生き延びる事を許すだろうか。それが、ここでのジレンマです。


一方のボートには囚人だらけ・・・爆破されるべきはこっちか?


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

オリジナルの囚人のジレンマとはこうです。

ある窃盗犯が宝石をギャングに売り捌こうとしますが、互いに面と向かって取引をするリスクを踏まえ、電話で遣り取りをします。そして、窃盗犯は宝石をある場所へ、ギャングは代金をある場所でそれぞれ隠すので引き取る様に指示します。問題は、相手が本当に宝石を持ち出すのか、あるいは代金を持ち出すのか互いに分からない事です。さて、窃盗犯、またはギャングはそれぞれどうすべきでしょうか

この場合も、互いのボートが起爆装置を押す意図があるのかどうか分かりません。さらに、何らかの行動を起こさねば命を落としかねません

ジョーカーが好むこうしたゲームの様なやり口で、彼はゴッサムの市民の化けの皮を剥ごうとします。モラル、統制、善良な市民という彼らの姿は”悪い冗談”だと述べ、中身は腐り果てているという彼の主張を証明する実験なのです。


ボタン一つで何十人を殺せば自分は生き残る・・・その決断はシンプルだけど簡単じゃない


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

しかし、この実験は失敗に終わります。これまでゲーム理論に基づいて巧みに人を操ってきたジョーカーが唯一失敗したシーンです。

ここで”失敗”したというのは、この実験だけでなくこの作品を通してジョーカーが証明しようとして来た事、偽善に塗れた人間が”良い人間”を装っていて、誰しも中核は腐っていてすぐに闇に堕ちる事を証明し損ねた事を指します。ハーヴィーがトゥーフェイスになってしまった事で、ジョーカーの主張にある程度の真実味を持たせる事になりますが、このボートのシーンが素晴らしいのはジョーカーの言い分を”起爆装置を押さない”というシンプルな行為で一蹴している事。これだけ緻密に計略に計略を重ねて来たジョーカーに、”何言ってんだ”と言わんばかりに簡単な行動で全てを否定しているのです。


バットマンを待ち受ける”炎の試練”とは

オープニングで燃えるバットマンのロゴが暗示している様に、ダークナイトではジョーカーが爆発物を使ってゴッサム市を恐怖に陥れます。劇中で、彼が最も好きな武器は”ガソリン”だとも発言していますしね。

こうした無秩序的なジョーカーの犯罪スタイルだけでなく、ブルースを待ち受ける試練の事も暗喩している様に思えます。

その試練とは、二面性の章で記載した通り”真のヒーローになること”


炎の中に浮かび上がるバットマンのマークが意味する事は・・・


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

何故炎が試練を表すかというと、英語の慣用句にTrial by fireというのがある事を知る必要があります。Fireとはご存知の通り、”炎”を意味しますが、同時に“発射・撃つ”を意味する単語でもあります。この慣用句では、”銃を撃つ”事を意味していて、意味は”やりながら学べ”

準備なしで戦地へ行き、敵を討つ様に、試行錯誤しながら進める事を意味しているのです。

ここで、Fireの2つの意味を掛け合わせて目に見える”炎”を使って、バットマンに試練が訪れる事を示しているのです。その試練の真骨頂が、レイチェルとハーヴィーがジョーカーに捕らえられ、時限爆弾を仕掛けられるシーン。

ゴッサム市の為、何千人もの人間の事を考えるなら犠牲にすべきはレイチェルですがブルースはヒーローではなく、一人の男としてレイチェルを救おうとします。ノーラン監督はFire(炎)を使って、この映画の大きなテーマは”試練”である事を表しているのです。

ジョーカー誕生の秘密とは

悍ましいスマイルが表す彼のメンタリティ

ジョーカーと言えば、白塗りの化粧に口裂け女の様な口元の傷。元々は化学物質によって色素がブリーチされて顔面蒼白になってしまった設定ですが、ダークナイトでジョーカーを演じるヒース・レッジャーがリアリティを追求してメイクアップをいつも自分でやっていたのはあまりにも有名な話です。

彼の恐ろしい口元の傷はグラスゴー・スマイルと言われ、スコットランドのグラスゴーにその名を冠しています。由来は、1920年代のグラスゴー付近で、ストリートギャングが互いを脅す為に相手の口元に傷を付けることが流行っていたからと言われています。


この傷の原因も映画の中で何度か説明があるが、毎回ストーリーが変わる


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

グラスゴー・スマイルはビクター・ヒューゴの小説が原作の”笑う男(The Man Who Laughs)”の主人公にも付いていて、2005年に発刊されたジョーカーのグラフィック・コミックスには同じタイトル(The Man Who Laughs)が付けられていました。

ダークナイトのジョーカーは、このコミックス版ジョーカーに少なからず影響を受けていると考えられています。顕著なのが、ジョーカーが人を殺すシーンです。


死体のフリをして担ぎ込まれたジョーカーだが、起き上がる瞬間に手下二人にナイフを突き刺して身体を起こしている


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

冒頭の強盗シーンで仲間のバスドライバーを殺す際にも、ジョーカーは相手に目もくれず殺します。ギャンボルの手下を殺すシーンでもジョーカーは急に立ち上がって、ナイフを彼らの胸に突き刺しますがこの時も一瞥しません。

彼のこうした特徴は、The Man Who Laughsのジョーカーが殺人をする時の描写に基づいているのではと考えられています。He didn’t even look at them, like killing them wasn’t even important(殺す事は何でもない事かの様に、彼らを見る事さえもしなかった)。

ジョーカーの悍ましいスマイルには、こんな意外なルーツがあったのです。

知らなかった!ダークナイト豆知識

出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

ジョーカーが顔も見ずに殺すバスドライバーが運転していたバス。このバスのナンバープレート、撮影のロケ地だったアメリカのイリノイ州のプレートデザインなんです。背景に映る車のプレートがイリノイ州のものになるので、違和感を与えない為だそうです。芸が細かい。

あの台詞に隠されていた?オリジン・ストーリー

巷でも有名な説が、元々軍人か兵士だったのではないかという説。口元の傷は、戦場で受けたもので戦地で地獄を見た彼は精神を病んでしまったとも言われています。

根拠は、ジョーカーがプロ級にあらゆる武器を扱いなれている事。ただのハンドガンだけではなく、RPGまで撃てるあたり、普通の裏社会では到底身につけられないスキルを持っています。

更には、アマチュアの放火魔の様にガソリンであれこれ燃やすだけではなく爆薬の扱いにも精通しているので、タダモノではない。

この様に観察に基づく推察も興味深いですが、もしかして台詞でもしれっとこの事が裏付けされているのでは、と唱えている説があります。


動くトラックの中からRPGをを発射するジョーカー、かなり手慣れている様だ


出典:”The Dark Knight(2008) ©Warner Bros. Pictures”

顔を半分焼かれたデントの病室に忍び込み、彼を悪人へと陥れる最後のトドメを刺すジョーカー。彼は、ハーヴィーの計画や統制に基づいた世界へ無秩序さを入れる様にと唆してトゥーフェイスになる事を誘います。


If tomorrow I told the press that, like, a gang-banger would get shot, or a truckload of soldiers will be blown up, nobody panics. Because it’s all part of the plan. But when I say that one little old mayor will die, well then everybody loses their minds!
(明日俺がメディアにどっかの暴力団員が撃たれたとか兵士でいっぱいのトラックが爆破されたとタレ込んだところで誰も驚きやしない。全て計画通りの出来事だからさ。だがどっかの町の町長が死ぬって言ったら、どいつもこいつも大騒ぎだ!)


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この“兵士でいっぱいのトラック”と一見、適当な例に聞こえる箇所はジョーカー自身の経験に基づいているのではないか。背景や経緯は分かりませんが、その“爆破されたトラック”に乗っていた兵士の一人が彼だとしたら、その一件で人が装う善良さを憎む事になったとしたら

緻密に細かいところまで作り込んでいるノーラン監督の事ですから、コミックスの悪役だからヘビーな銃器をも扱えるという設定を彼は許さ無さそうです。映画で描くかどうかは差し置いて、何らか彼なりにも理由がしっかりあると考えるのが自然です。

この台詞にも意味があるとしたら、やはり・・・?

推測の域を出るものではありませんが、確度はそれなりに高そうですよね。


かなり深いところも触れて盛りだくさんになったコンテンツでしたが、最後まで読んでくださった方、本当に有難うございました。少しでも興味深い発見や知らなかった事など、楽しく読んで頂けたのならこんなに嬉しい事はありません!

これからも頑張って参りますので、Film Talesを引き続き宜しくお願い致します。

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