強烈なクライム映画『ドライヴ』をネタバレありで評価!あのラストは果たしてドライバーの死を意味するのか

ドライヴ


監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、クリスティーナ・ヘンドリックス、ロン・パールマン、オスカー・アイザック、アルバート・ブルックス 他
言語:英語
リリース年:2011
評価★★★★★★★★☆☆



~”ネオノワール映画のお洒落なアンビエンスだけではない!流血が苦手な方は避けた方が良い身の毛もよだつバイオレンスの連続だが、これはヒーローの物語”~
~”寡黙なドライバーの表情を良く観れば分かる、『ドライヴ』の真価はトゥールビヨンを思わせる複雑な美しさ”~

もくじ


あらすじ


夜のロサンゼルス
卓越したドライビング・テクニックで警察を煙に巻く”逃し屋”
昼はハリウッド映画のカースタントをこなす2つの顔を持つ謎の男
寡黙な”ドライバー”は孤独な日々を送っていた
しかしある日、隣人の人妻アイリーンに恋をする
夫のスタンダードは服役中で息子のベニシオと暮らしているアイリーン
心を通わせ始める2人だったが、程なくしてスタンダードが出所
2人の関係は終わりを見せかけるも、スタンダードは服役中に借金を抱えてしまっていた
返済出来ずにいたスタンダードはギャングに強盗を強要される
アイリーンとベニシオを守るべく、強盗に協力する男だったが計画が狂い・・・


レビュー

暗夜に轟くエンジン音。

黒いボストンバッグを重そうに抱えた男が駆け込むと同時に、ドライバーが無表情にアクセルを踏む。けたたましいサイレンを煙に巻く、名も無き男は、『サムライ』(1967年)のアラン・ドロンを想起する凍てついた面様で車を疾駆させます。

素性も名も明かされないドライバーは端正な顔貌に無感情な瞳を輝かせる青年で、昼中は映画のスタント・ドライバー、夜中は逃走車のハイヤー。『ドライヴ』は一見、トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年)やダニエル・クレイグの『007 スカイフォール』(2012年)を彷彿とさせるカーチェイスを希求させますが、『ドライヴ』は人間の繊細な物語

『ドライヴ』はイメージと大きく異なるアクション不足と、至近距離で脳天をショットガンで撃ち抜かれる描写など醜怪とも言える暴力的な描写が謗られる事が多く、爽快な気分で劇場を後にしたい方にはお勧め出来ない作品です。

ライアン・ゴスリング扮するドライバーと同様、『ドライヴ』の根底にあるのは寡黙だが深い感情に突き動かされるストーリー。アイリーンとのプラトニックな恋愛も言葉少なに語られるからこそ、力強く心に響きます。唸りを上げるスポーツカーが火花を散らす勢いで荒々しく走るCGiに塗れた描写よりも、エレガンスとスタイルで描かれるドラマが魅力的な『ドライヴ』はドライバーの複雑な心の奥底を静かに覗く映画。


ドライヴ映画ネタバレ
寡黙で無感情に思える氷の様な表情の裏に深く、力強く流れるドライバーの想い


出典:”Drive(2011) ©Bold Films”

美しく、か弱いアイリーンと儚い恋を育むまではスローテンポで進みますが、夫のスタンダードが出所してからは文字通り『ドライヴ』にエンジンが掛かります。ギャングに借金の返済を迫られ、強盗を強要されるスタンダード。ギャングの魔の手がアイリーンとベニシオに及ぶ事を危惧したドライバーは強盗に手を貸しますが、スタンダードが逃走直前で射殺される事態に陥り、失敗

差し詰め身を隠したものの、盗金を所持したままのドライバーにも危険が迫ります。

果ては最も憂虞していた、アイリーンを巻き込みかねない局面へ。アイリーンと乗り合わせたエレベーターに潜んでいたギャングの刺客に追い詰められたドライバーは、意を決して男を殺しますが、その惨憺たる描写は見るに耐えません。『ドライヴ』の悪名高いシーンの一つです。

男を殴り倒し、怯んだ隙に間髪を入れず足蹴りを食らわせた後に頭を踏み潰す。肉を踏み散らす鈍い音に混じり始める、骨が砕ける乾いた音。数秒前までは人間の頭だった肉と脳の残骸を、荒れ狂う様に踏み潰し続けるドライバー。必要以上にグロテスクで、ショックを与える為だけに描かれたシーンとして誹謗され、『ドライヴ』を厭忌する理由として挙げられる事も珍しくありません。割れた卵の殻の様な頭蓋骨に溜まった血の海だけ見ると、総毛立つ恐怖心を煽る浅ましく、オーバーな演出に見えますが、重要なのはドライバーをこの凶行に駆り立てた動機です。『ドライヴ』は大仰な爆発と火柱を渦巻くカメラワークで魅せる様な作品ではないのと同じく、ただ嘔気を誘う為にグロテスクなシーンを挿し込む様な作品ではない


ドライヴ映画ネタバレ
心臓が弱い人には勧められない鮮烈なシーンが多い『ドライヴ』


出典:”Drive(2011) ©Bold Films”

『ドライヴ』は水面下で、しかし深く沁々と存在を感じさせるセンチメントに耳目を傾ける事でその真価を露わにします。あらゆる描写には意味があり、映ずる描写だけに捕らわれない深みが大きな魅力。

異彩を放つレトロでスタイリッシュな『ドライヴ』は予告編やポスターのイメージを覆す内容で、単純に”裏切られた”と感じるに留まれば着飾っただけの低劣な作品になりかねませんが、もう一歩踏み込むだけで 滋味豊かなレフン監督の世界を噛みしめる事が出来る映画。その事を念頭に一度鑑賞頂きたい作品です。

ドライヴ 映画
スカイ君
当たり前の様に人がパッパッと死んで行くからなぁ・・・映画によくある緊張感を煽るBGMがヤバいシーンを警告する様な感じもなくてさ。普通に目にフォーク突き立てられたりなぁ・・・映画全体としては漉きだったが、そういうシーンに耐性ない人は無理しない方が良いかもな
モカ君
ボクは怖くて途中まで観てやめちゃった
ドライヴ 映画
スカイ君
そいつは勿体ねーな、気持は分かるけど。あ、そうだここからはミステリアスなラストについても触れているネタバレありのレビューだ!ネタバレ無しで、どんな映画かだけ知りたかったって人は、こっから先読まない様にな!
ヘラクレイトス曰く、人格はその人物の運命である

サソリか蛙か。

年齢や名はおろか、素性も分からないドライバーは一体誰なのか。『ドライヴ』はもう一歩踏み込んだ、哲学にも近い人格にフォーカスを向けます。年齢や名は重要ではない、”人として誰なのか”を問う。

顕著なのが『ドライヴ』でも引用される、川を渡りたいサソリと川を渡ろうとしている蛙の寓話。後味の悪い話ですが、考察の余地を多分に残す奥深い物語でもあります。

『サソリと蛙』ってどんな話?

川を渡りたいが泳げないサソリは、丁度川を渡ろうとしている蛙に声をかけます。蛙の背中に乗せてもらい、向こう岸に連れて行ってくれないかと。しかし、蛙はサソリの毒針を怖れ、背中に乗せたら刺されて食べられてしまうのではないかと断ります。

一方でサソリは蛙を殺してしまうと、”背中に乗った自分も蛙と溺れてしまうので刺そうにも刺せないじゃないか”と反論。納得した蛙はサソリを背中に乗せて川を渡ります。安心して川の中程まで泳いだ時、蛙は不意にサソリに刺されてしまいます。

“お前も沈んでしまうぞ、何故だ・・・”と問う蛙に、サソリはこう答えます。

“すまない、これが私の抑えきれない性の様だ”

ヘラクレイトスの金言を引用した通り、『ドライヴ』の輝かしいエッセンスはシンプルなストーリーとは対照的に複雑なキャラクターの人格や感情。観客に考えさせ、様々な仮説や考察を誘う作品こそがアートだと言うレフン監督の意図が良く反映された映画です。

『ドライヴ』はまさしく、サソリと蛙の物語。

サソリは初めから蛙を騙すつもりで、向こう岸に着いたら殺して餌食にする事を目論んでいたのか、道連れにしたかったのか、或いは最期に答えた通り己も抑えきれない本能の犠牲になったのか。トレードマークのジャケットに装飾された黄金のサソリが、ドライバーの冷酷で抑えきれない凶暴な毒針を表すのか。

実は、ドライバーを蛙と捉えられる考察を刺激する演出も『ドライヴ』の大きな魅力。『ドライヴ』ではドライバーの口数が少ないだけ、表情や行動で感情を推し量る事が出来る様に描かれており、ドライバーを演じたゴスリングの喫驚する演技が煌めくのも観ていて感服します。ドライバーの心情を察すると、彼が蛙の様に思えなくもない。烙印の様なサソリの刺繍はドライバーを表すのではなく、のべつ幕なしサソリを背負い続ける運命を象徴していると釈する事が出来ます。


ドライヴ ネタバレ
ドライバーが背負続けるサソリは彼を地の果てまで呪う


出典:”Drive(2011) ©Bold Films”

『ドライヴ』が進むに連れてドライバーが感じているであろう心情に寄り添ってみると、あのエレベーターで男の頭部を完膚無きまで粉砕する理由も解せます

『タイタニック』(1997年)顔負けのロマチックで熱烈な愛の台詞を吐く様な男でもないドライバーが育むアイリーンとの愛の深さは、二人の瞳と表情を観て感じ取る他ありませんが、その想いを最も強く感じたのはこのシーンです。誰にも心を開かないドライバーが唯一、気持ちを募らせた女性を前に寒心に耐えない暴虐を振るわざるを得ない。関係を毀つ事になるとしても、護りたい

善良な人間になろうとしても、野蛮で醜い犯罪の深淵から襲い来るサソリからは逃げられない

エレベーターで迫られた峭刻たる選択を前に、ドライバーは己の運命を呪い、絶念し、アイリーンと別れの口付けを交わし、内に秘めていた想いの全てが爆ぜた様に思うと、忌まわしいサソリを感情の赴くままに撃砕したくなるのは言を俟たない。(『ドライヴ』では幾度かエレベーターのシーンが映し出されますが、抗えない破滅に向かうかの如く”降下”して行くエレベーターはこの時が初めて)

茫然として後退りながらエレベーターを降りアイリーンに、心為しか悲痛な眼差しを向けるドライバー。一言と交わす事なく閉じるエレベーターの扉を観て、二人が時を共にする事は永遠にない事を悟ると悲痛な情動に駆られます。

サソリから逃れられない蛙の運命がドライバーを待ち受けている事を、巧みに表現しています。

アートハウスな『ドライヴ』の美しく興味深いシネマトグラフィーもグッド

オープニングからスタイリッシュな『ドライヴ』。

ティールとオレンジの街灯が照らす夜の街は、一度観たら脳裏に焼き付くワンシーン。『ドライヴ』は随所に不思議と印象的なシーンが散りばめられており、美的な情景を意識したショットも大きな見どころです。洒落た光景をスクリーンに取り込むだけでなく、ストーリーに重要な意味を与える光景である事も、『ドライヴ』の真髄とも言える奥ゆかしさを物語っている様で感銘を受けたポイント。

『ドライヴ』を手掛けたニュートン・トーマス・サイジェルの手腕を改めて実感する事が出来ます。

『ドライヴ』のシネマトグラフィーに関してはワンカットずつ分解して一記事書き切れる程、考察の余地がある魅力的なテーマですが、一際凡手の業とは述べ難いのがサイジェルの映像が齎す心理的な影響。詳しく分析すればロジカルな説得力を持つ事は無論、直感的に訴える”何か”が確かにあります。


ドライヴ ネタバレ
夜景に限らず、ゴスリングが映えるスタイリッシュなシーンが魅力的な『ドライヴ』


出典:”Drive(2011) ©Bold Films”

ドライヴ ネタバレ
スカイ君
『ドライヴ』は一度観たら、エッジが利いたスタイルや洗練された街のランドスケープが頭から離れない映画だ。これから触れる通り、色の使い方に一貫性があって、ハラハラさせたり不安感を煽るシーンと、愛やあったかさを感じるシーンで、その心理とリンクした色が必ず使われているんだ
モカ君
説明されるまで気付かなかったけど、確かに!ライアン・ゴスリングがクールなキャラクターである事もあるけど、いろんなシーンのスタイリッシュさと見事に調和している感じ!
ドライヴ ネタバレ
スカイ君
ああ、ストーリーが良く分からなくて楽しめなかったって人も映像美だけは納得している事が多かったな。若干解説チックになっちまってるが、ドライバーの気持ちにとにかく注目しながら観ると『ドライヴ』は本当にユニークでイイ作品だと思うハズだぜ。おっと、次の章ではラストのネタバレに触れるから、もう一度だけ忠告しとくぜ
モカ君
うん、ドライバーとアイリーンがゆっくり絆と深めていくシーンとか、アクションを求めていたら退屈かもだけど、ボクは何だか優しい気持ちになったな!

アイリーンのリビングで会話するドライバー。

ドライバーとアイリーンの関係性を暗に語るワンフレームでは、陽光の様な暖かさを感じるオレンジを背景に立つアイリーンとは対照的に、陰鬱な緑のフレームで囲われた鏡にドライバーが映り込んでいます。オープニングの印象的な情景について触れた際に述べた通り、『ドライヴ』ではティールの様な緑と街灯のオレンジの様な橙が際立つテーマカラーとなっています。殊に緑はシャノンのガレージでも見られるネガティヴな意味合いを持ち、橙はアイリーンと触れているシーンで多用されるポジティヴなカラーリング

鏡に映り込ませる事で、アイリーンと向かい合っているのに恰も隣り合わせになっている様に見え、ドライバーの心願を暗喩しているだけでなく、カラーリングを駆使する事で想いとは対極的な世界に存在する二人である事を表します。鏡の左下に貼られたスタンダードとベニシオの写真は言わずもがな、暗い影を落としたドライバーは一家を不幸に陥れかねない侵略者の様に描かれています

冗長で歯の浮く様な台詞は一切使わず、スマートに心情と状況を巧妙に物語っています。クールな映像美と合わせて堪能出来る『ドライヴ』は、映画好きに堪らないカメラワークや工夫が見逃せない。

『ドライヴ』のヒーローはサソリの道連れか

ラストでバーニーと対峙し、腹を刺されて瀕死のドライバーと既に息絶えたバーニーが映し出されサスペンスはクライマックスを迎えます。

運転席に座り、暖かい陽だまりの中で血塗れの傷を片手で抑えて微動だにしないドライバー。ドライバーの目的は果たされ、遂に訪れた平穏とは対照的に観客の煩慮を煽る死の匂いが漂います。瞬きはおろか、微弱な心臓の鼓動が招く肌の僅かな動きでさえも感じられない、ドライバーの千古不易に変わる様子を見せない表情は、やがてその死を宜なわざるを得ない雰囲気を醸し出します

諦めたその刹那、瞬き

遠くを観たまま、車のハンドルを握って何処かへと走り去るドライバー。実にミステリアスなエンディングに、やはりドライバーは死んでいて、走り去る姿は幻想か天へ旅立つ様子を表しているとする推察も多いのですが、レフン監督自身の見解を伺うと驚きの答えが


ドライヴ ネタバレ
致命傷の様にも見える傷を抱えて動かないドライバーは、ここで終わりを迎えてしまうのか


出典:”Drive(2011) ©Bold Films”

“私の作品は必ず曖昧で観客の想像に任せるエンディングを迎えているが、『ドライヴ』のドライバーは生きて新たな冒険に踏み出して行く様子がラストで描かれているんだ”(一部編集)

出典:‘Drive’ Ending Explained ©Screen Rant”

観客の想像に任せ、オープンな解釈が出来る事に変わりはありませんが、少なくともレフン監督自身の捉え方によるとドライバーは生き延びている様子

あの焦らす様な微動だにしないドライバーのクローズアップも、レフン監督が映画に求めるアーティスティックな側面を与える演出ですが、その手法が至って秀逸です。

ドライバーの宿運を見届けるべく、生死のシグナルを見逃すまいと観客も瞬きをせず、スクリーンを見つめさせる演出。瞬きをしたら敗けです。この”瞬きゲーム”、ドライバーが凄惨な殺戮を繰り広げる前にベニシオとエレベーターやガレージで遊んだゲーム。レフン監督は、ラストでベニシオでなく観客と遊んでいる事に気付くと、『ドライヴ』全体に感じるスマートな技巧を最後に一度だけ味わう事が出来ました。

『ドライヴ』は一見反吐が出る血の海に溢れるレトロなテイストが利いたネオノワールな雰囲気重視の映画ですが、幾度か観るとあらゆる美しさと秀逸さが内面から滲み出る作品です。スカスカに観えて、実はトゥールビヨンの如く複雑に、精巧に創造されたアート。

未鑑賞の方は無論、一度鑑賞して良さが分からなかった方にも是非お勧めしたい映画です。


この映画を観られるサイト

『ドライヴ』はこちらの動画配信サイトで配信中!借りに行くの面倒だし、そもそも移動時間を使ってスマホやタブレットで観たい人にお勧め!

私は洋画好きなので、U-NEXT一択です。Huluはドラマやシリーズ系が多く、洋画は充実していませんので、洋画を沢山観たい人はU-NEXTで後悔しないハズ。

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まとめ

視界に飛び込む美しい情景と、身も縮むグロテスクなシーンが重なり合って視覚的なインパクトだけを残しがちな映画、『ドライヴ』。

しかし、各シーンやキャラクターの表情に隠れたディテールをしっかり観て行くと実に巧みに様々な創意工夫が凝らされている事が分かります。純愛に突き動かされて、大切な誰かを護る為ならどんな暗闇にでも潜り込んでいく本当のヒーローの物語。

慄くヴァイオレンスとは裏腹に、とても繊細な映画ですのでじっくり観てみる事をお勧めします。

ドライヴ
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