スリル好きとSNS世代にお勧めする現代のサスペンス映画、search/サーチ

 

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監督:アニーシュ・チャガンティ
出演:ジョン・チョー、サラ・ソーン、ミシェル・ラー 他
言語:英語
リリース年:2018
評価★★★★★★★★☆☆



~”PC画面を見ている気になってちょっと疲れるけど、待ってたよ、こんな感じのサスペンス・ストーリー”~
~”心もグッと掴むハートフェルトで主人公に負けないで欲しい映画”~

もくじ


あらすじ


デイビッド、パメラと一人娘のマーゴットは幸せな家族だった
しかしパメラは白血病に罹患し、闘病も虚しく逝去
ある日、高校生になったマーゴットが友達と勉強しに行くから夜も遅くなると連絡を入れて出掛ける
その夜、デイビッドが寝ている間にマーゴットから数回に渡って電話が
翌日、異変に気付いたデイビッドがマーゴットに連絡を試みるも応答はない
自分が起きる前に学校へ行き、習い事のピアノ教室に行ったのだろうと考えたデイビッド
しかし、マーゴットはピアノ教室を半年前に辞めていた事が判明
己の娘なのに知らなかった事だらけ
彼女はどこへ行ってしまい、何が起こったのか
驚愕のラストが待ち受ける、意表を突いたサスペンス


レビュー

観ていて、とても不思議な感覚に陥る映画でした。

リアル。多くのシーンがパソコン上で語られており、”あるある”な入力ミスなんかも時折あるので、本当に誰かがスクリーンを操作しているみたいな演出。まぁ、この演出自体は新しいものではありませんが。

その演出自体がリアルと言っているのではなく、その演出でグッと見えてくるプライベート。誰かの人生です。その生々しさたるや。

一方で、ストーリーがトントンと進むので出来すぎている感があったり、お父さん役があまりに名探偵だったり。ですが、1時間半程度の映画にしては充分過ぎるほど楽しく、ドンデン返しと言えるラストも待っていて非常に素晴らしいサスペンス。


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妻を病で失ったデイビッドは最愛の一人娘も何者かに奪われてしまうのか

出典:”Searching(2018) ©Sony Pictures”

search/サーチが素晴らしいのはサスペンスだけでなく、ある意味表裏一体かも知れませんが、チープなスリルより感情を抉る様なパンチを狙っている点。イージーで一時な”あー怖かった”や”あー楽しかった”に留まらない点です。

生々しく感情に訴えかける演出、二転三転するストーリーの相乗効果で観入って行く中でベースにあるありきたりなメッセージもパンチ力を増しています。

テクノロジーの力は驚異的ですが、気付かない内に毒されて腐った人間が多い。若年世代の私も耳にタコが出来る程言われる事ですが、客観的にSNSを含むネット世界を映画として観た事で痛感しました。

スカイ君
一応ネタバレなしだ、最後にはサプライズが待ってるからな!是非観て体験してみてくれ
陳腐なフォアストーリーもダイレクトなアプローチで感情の奥底を掴んで来るが・・・

キム一家はアメリカで暮らす幸せな家族。ですが、娘がまだ幼いのに家族に辛い報せが届きます。

母親のパメラが白血病に罹ってしまい、闘病を続けるも次第に彼女の容態が悪化。辛いのは、この一部始終をキム一家のホームビデオで見せられる事でした。

夫婦で仲良くジョギングをしていたビデオ、パメラと娘のマーゴットが楽しそうに料理をしている写真が、次第にジョギング中に足を止めてしまい苦しそうにしているパメラの様子を写したビデオに変わります。心配して駆け寄る、夫のデイビッド。ついには、管を繋がれ病院のベッドから痛みをこらえた笑顔を送るパメラが映し出されます

PCのカレンダーには一家が何よりも心待ちにしているイベントが。

“Mom Comes Home!(ママが退院!)”


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今や誰かの人生はデジタル化され、動画や画像、フォルダー名などを見せられるだけで気持ちがこみ上げる

出典:”Searching(2018) ©Sony Pictures”

ですが、そのイベントがドラッグされて別日に後ろ倒しされます。そして、しばらくすると後ろ倒されたイベントが右クリックされ、少し躊躇った後に”Delete(削除)”されてしまう。

私の涙腺が緩いのかも知れませんが、これだけで涙目です。映画というフィクションの世界では、あまり涙を誘わないバックストーリーですが、こうして誰かのプライベートを通して見せられると物凄くグッと来ます。自分の家族に降り掛かっている災難みたいですから。

この冒頭10分の流れがなければ、単に良質な”シングルファザーと娘を襲うサスペンス”にしかなりませんでした。導入の秀逸さが、娘をも失うのがデイビットにとって何を意味するか明白にしてくれる為、娘を捜す彼の必死さにも感情移入し易い。サスペンスとしての質を非常に底上げしてくれるエッセンスだったのです。

一方で、この演出には残念ながらマイナスな効果も。


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ニュース映像を見せられても、あまりヘビーに受け止められないよね

出典:”Searching(2018) ©Sony Pictures”

後半でクライマックスに向けて緊張が走る中、PCを含むデジタルメディアを通した演出にこだわるあまりマーゴットの捜査進捗や状況を半ば無理に監視カメラやニュース映像から引っ張ってきています。

観客の不安や緊張をもっと煽る映画ならではの演出も出来るはずですが、あまりドラマティックな効果のないデジタルスクリーンに縛られてしまいます

とは言え、そうした浅めのパンチに拍子抜けするのは一瞬で作品として掴んだ流れにはさほど影響なく、物語のリアルな感触を最後まで楽しむ事が出来ました。



あなたの”友達”は本当に何百人も居るのかな

search/サーチでは今やスマホを持っているならほぼ全員と言えるSNSユーザーに、遠慮なく現実を突きつけます。

個人的にはSNSに小論文級の長さで自己啓発を投稿する人から、子供の成長記を挙げていく”友達”に気持ち悪さを覚えたものですが、そう思うのは自分だけじゃないんだと少し安心しました。

どんな事でも良いから注目されたい。見え透いた動機に突き動かされているだけなんですよね。

そしてそんな事をする人間は、2種類に分けられる。見え透いている事に気付かず”断固として欲求を否定する”派と、芸能人でも何かしたわけでもない私が”主張して注目してもらって何が悪い”と開き直る派。search/サーチではそこまで深掘りしませんでしたが。


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“いいね”と注目の為なら涙も流せてしまう人はさすがに少ないと思いたいけどね

出典:”Searching(2018) ©Sony Pictures”

マーゴットが行方不明になった後、デイビッドは彼女のFacebookアカウントに入って”友達”を手当たり次第に聞き込みますが、いずれも結局返ってくる返事は”実はそんなに親しくないんだよね”でした。

“友達”って?

事件が進展し、マーゴットが家出ではなく誘拐された可能性が出てくるとメディアは待ってましたとばかりに大ニュースとして取り上げます。彼女の“友達”も例外ではなく、涙ながらに”マーゴットは私の親友でした。心から彼女の無事を祈ります”などと語るビデオをSNSやYouTubeにアップロード。ちなみにこの辺、一番胸糞悪かったシーン。

“スノーとぶりっ子顔しかアップしない若い女”と”武器とかタバコとかやってるのがタフでカッコいいと勘違いしている男”をウザいとか薄っぺらいって感じる人間って俺だけじゃなくて良かった・・・。

無事を祈るビデオをアップロードするくらいなら、お父さんと一緒に彼女の”友達”の聞き込みでも進めてくれよ。映画だから誇張された様で誇張されていないのが、また真に迫る。

これくらい気持ち良いストレートパンチを食らうと、考え直してしまいますね。

このA級サスペンスを支えているのは名探偵過ぎるパパ

そう、お父さんが尋常じゃない名探偵。

と言っても、”96時間”のリアム・ニーソンじゃないのでご安心を。

娘を必死に探し回る状況に陥ったら、人のIQと注意力は跳ね上がるのかも知れませんが、デイビット、凄い。search/サーチのサスペンスは是非、映画を鑑賞して体験してもらいたいのでディテールは避けますが。


サーチ 映画
何かがおかしいぞ、と気付いてしまう凄いパパ

出典:”Searching(2018) ©Sony Pictures”

数秒だけ見た集合写真に写っている人物の顔を憶えていて、後で別の写真で登場した時に同一人物だと気付くとか。しかも写り方も違う写真とか。

結構自力でマーゴットの足取りも追うし、こんなお父さん居たら凄い。でも、この時点で既に感情を鷲掴みにされている観客としては、そんなの寧ろ行け行けドンドン。だってマーゴットに見付かって欲しいじゃないですか!奥さんをあんな風に失って・・・

でもマーゴットは・・・あ、言っちゃいけないんだった。

結末までの筋道が予想できないスリリングなサスペンスを楽しみたい方、キム一家の運命とマーゴット失踪の真実を知りたい方は観るしかない。この映画は”えっ、どうなるの?どうなるの?”が好きな方には特にお勧めです。


この映画を観られるサイト

19年1月時点でまだ一部映画館で上映中の作品らしいです。てっきり、もう上映は終わったものかと思っていましたが。

TSUTAYAでならその内借りられそうですが、動画配信サイトでも配信され次第、こちらも更新します。何だか散々お勧めしておいて、すぐ観られないというのももどかしいですね。

が!一旦、無料体験期間も設けている各動画配信サイトをご紹介します。初回登録で有料映画1本分のポイントもくれるU-NEXTは特にお勧め。(私も良く使っています)

細かな違いはコチラ!あー読むのも面倒臭ぇ、って方はコチラの早見表でもいかがでしょうか。

 

 

 

まとめ

最高にエンターテイニングで良く出来たサスペンスをお求めの方にとにかくお勧め。決して”よくあるパターン”に入らないストーリーと、明らかに監督が考え抜いた演出で開始10分で引き込まれる事間違いありません。但し、事態が二転三転するので注意してちゃんと話を追っていないと置いていかれちゃいます。

ストーリーの質と演出、キャストのパフォーマンスもあって印象深いキャラクターが多いですし、観て絶対に損はない作品。チャガンティ監督のデビュー作とは思えないエンターテイナーで、一人で観ても面白い。

観た後は、しばらく振り返ったり考察してみると二度美味しい、search/サーチでした。

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