『マローボーン家の掟』衝撃の結末をネタバレありレビュー!ホラー映画としても物足りなく、どんでん返し力も不足した結末は評価できない映画だった

マローボーン家の掟


監督:セルジオ・G・サンチェス
出演:ジョージ・マッケイ、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・ヒートン、ミア・ゴス 他
言語:英語
リリース年:2017
評価★★★★★☆☆☆☆☆



~”ラストはどんでん返し系だがあまり意外性がなく、陳腐なホラー演出は確かに怖いけど観終わった後はちょっと安っぽいお化け屋敷から出た気分”~
~”すぐ怖がる、すぐ驚く・・・そんな方なら楽しめるけど、シャープな目を持った人はきっと納得できない結末が待っている”~

 もくじ

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 あらすじ


深緑が放つ不気味さが漂う森の中
大きな屋敷で不思議な5つの掟を守りながら暮らすマローボーン家
忌まわしい過去を忘れ、屋敷で再出発を図るも母親が病死
更には、マローボーン家が逃れたかった一つの秘密が兄弟に牙を向く
その後、屋敷内でも幽霊騒ぎが起こるなど不穏な空気が漂い始める
兄弟を守る為、長男のジャックはある決断を下すが・・・


 レビュー

フェルメールの『牛乳を注ぐ女』を追思させる淡く弱々しい色調が染み着いた、カントリーサイドに佇む一軒家。暖かい陽光が差し込んでも、どこかモノトーンで褪せた雰囲気を放つ家に、ローズ・マローボーンが4人の子を引き連れて移り住むシーンから物語は始まります

“ある過去”から逃れるべく、新天地で新たな生活を始めるマローボーン家。

近隣に住む少女アリーと親しくなり、好調な滑り出しを見せた生活もローズの健康状態が悪化して暗雲に曝されます。長男のジャックに兄弟の生活を託し、ジャックが法的に保護者として認められる21歳を迎えるまで自身の死は他言しない様に言い残して、ローズは世を後にします。しかし暗澹たる雰囲気の中、6ヶ月程経ったある日、マローボーン家が逃れようとしていた”過去”が遂に兄弟に牙を向く

銃声。

銃弾が貫通した窓から外を見ると、ショットガンを構えてマローボーン家の方を見ている男の影が。恐怖に慄き、長女ジェーンが絶叫した直後、スクリーンが暗転して何事も無かったかの様に6ヶ月後に物語は進みます。マローボーン家にはいつしか姿無き幽霊が棲んでおり、6ヶ月の間に何かが起こった事を暗示しつつもラストまでその衝撃的な出来事は明かされません。


マローボーン家の掟
ジャックとアリーの淡い恋物語は、それはそれで良いけども本筋からすると何とも蛇足的


出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

マローボーン家の過去、そして銃声と共に兄弟を襲った事件とは。

『マローボーン家の掟』の骨子は、秘密の重なり合い。秘め事を暴きたくなる人間の本能を刺激する映画ですが、終幕まで2時間も座って観続けるモチベーションにはならない事を悟ってか、サイドストーリーを挟みます。しかし、気を引くよりかは気が散るサイドストーリー。アニャ・テイラー=ジョイ演じるアリーとジョージ・マッケイのジャックの淡い恋愛関係が最も顕著です。

不器用な青春ラブストーリーかと思えば、家族の葛藤や苦悩を語るヒューマン・ドラマになり、時折ホラー映画である事を思い出させる様に月並みなジャンプスケアが差し込まれる。一貫性の無いトーンが続くので、間々何の映画を観ているのか分からなくなります

サンチェス監督はインタビューで”ホラー映画を作ったつもりはない、家族に関する映画だ”と仄めかしていたので、その意図が表れたと解釈していますが、映画が己のアイデンティティに悩んでいる印象は払拭できません。自分はホラー映画なのだろうか、あるいは青臭いラブストーリーなのだろうかと右顧左眄(うこさべん)する『マローボーン家の掟』

一方でフェルメールの絵画に喩えた様に、ホラー映画にしては晴れ間を覗き込む様な、自然の光を多用した風光明媚なシーンが特徴的。意外にも目には嬉しい光景が多い点は多少なりとも評価できますが、肩透かしを食らった様に残念なラストを覆すには不充分。真綿で首を絞められる様に、恰も前代未聞の秘密が隠されているかの如く、焦らし尽くされて上がった期待値に応えるだけの秘密とは言えませんでした。

マローボーン家に棲まう”幽霊”の描写や演出も、確かに一瞬は心拍数を上げるものの、数多あるホラー映画で使い古された手法ばかりでした。いずれも”来るぞ”と予想出来てしまいます(だからこそ一瞬”怖い”と感じてしまった自分が悔しい)。迫る不気味なスリルを楽しみたいなら『マローボーン家の掟』でなくても『呪怨』(2000年)の方が至って不気味ですので、そちらの鑑賞をお勧めします。


マローボーン家の掟
キャストと絶妙な演技もあって、確かにサスペンスフルなシーンは散見されるが結末のパンチ力の無さが全てを台無しに


出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

腐りかけの家、軋む扉、大きな鏡の数々。心から冷や汗を出させる恐怖を演出する為に必要な材料は充分揃っているのにサンチェス監督の眼中には無かった様です。

ストーリーテリングも流暢とは言えず、隠し事が下手な子供を観ている様でした。後々のサプライズに向けて隠そうとしている意思は伝わる一方で、中途半端な隠し方が少々勿体ない。その割には先述した通り、結末は恐怖心よりも同情心を誘う、ショッキングで痛々しいけれどホラー映画としては特に目新しくないパターン。

『マローボーン家の掟』を観るとしたら、観どころは美しいシネマトグラフィーがメインになるかも知れません。加えて、『ゲゲゲの鬼太郎』で震える様な怖がりなら、『マローボーン家の掟』をホラーとしても楽しめる一方で、やはり『マローボーン家の掟』でなければならない理由は特に無い。

マローボーン家の掟
スカイ君
見飽きた演出つっても、不気味なシーンは確かに不気味だし、最初は怖いって思ったが・・・ちょっと経つと、何かなーって思うパターンだ。ここからはネタバレありで語って行くから、まだ観ていないなら一旦劇場で観てみてくれ!オレは微妙だと思ったが、一応は結末の衝撃はネタバレしたくねぇからな
モカ君
あ、一応レビューとは別に解説記事もあるから、もう観たけど謎が残ったなーって人はこっちも是非是非読んでね!勿論、ネタバレしているからまだ観ていない人は、一旦読まない方が良いかも!
結末は”双子のトリック”に通ずる歯応えの無さが際立つ

暖簾に腕押し。

ミステリー小説愛好家なら賛否両論ある、一見不可能な犯罪を双子の犯人が遣り遂げるパターン。同一人物が同時刻に異なる場所に存在しなければ成立しないミステリーは知的好奇心を刺激する格好のパズルですが、結末で解を与えられるタイミングで双子や三つ子が鍵だと明かされても意外性は殆どありません

名探偵ファイロ・ヴァンスの生みの親、S・S・ヴァン・ダインが推理小説における禁止事項とするまで倦厭される手法です。

『マローボーン家の掟』の結末も、復讐の念に燃えてマローボーン家を追って来た父親がジャックを除く兄弟3人を殺害してしまい、ジャックはショックのあまり精神を病んで生前の兄弟を妄想していたというもの。所謂、多重人格や解離性同一性障害が引き起こした幻影を、ジャックの目線を通じて観ていた事になります。

『スプリット』(2016年)や『ミスター・ガラス』(2019年)の様に多重人格を題材にした作品や、『サイコ』(1960年)の様に多重人格がラストのどんでん返しに寄与する名作ホラー映画もありますが、裏を返せば『マローボーン家の掟』の結末は一驚よりもデジャヴを喚起します。屋根裏に転がったままの兄弟の遺体、母親を失った直後に兄弟を惨殺されたジャックの心境を考えると、間違いなくショッキングですが、2時間も席を温め続ける価値は汲み取れない。『マローボーン家の掟』に対するフレストレーションは、このオリジナリティの欠如が主です。


マローボーン家の掟 結末
胸は痛むが、激震が走る様などんでん返しとは言えない結末に拍子抜け


出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

その傍ら、背筋が冷えたのはジャックの父親が屋根裏に潜んでいた事。閉じ込められて骨と皮ばかりの痩躯を不気味に揺らしながら襲い来る様子は幽霊よりも恐怖心を煽ります。問題は刹那、正気を取り戻したジャックに発砲され、瞬殺されてしまう点。飽く迄も観客を怖がらせる事は、焦点にないらしい。

しかし結末を差し置いても、呆れる演出は所々ちらつきます。『マローボーン家の掟』は(一体どんな映画なのかハッキリしないものの)深刻で重苦しい雰囲気だけは一貫して漂わせますが、眉間に皺を寄せて弾丸に”DAD”とナイフで刻むティーネイジャーは失笑ポイントだと気付ていない。シリアスなだけに一段と滑稽。

しかし、便秘の様な顔つきで”DAD”と刻み込むビリーに扮するチャーリー・ヒートンを始め、『マローボーン家の掟』の救いはキャストの相性とパフォーマンスでした。

スカイ君
ネタバレしても”オイコラ”よりも”なーんだ”がやっぱ強いと思うけどね・・・ただ、これから語る様にキャストは良いし、全体を通すと悪い映画じゃない気もするんだが、結末に対してヘタに期待値を上げすぎて”あーあ”感が凄かったからかな
モカ君
ボクは最後も怖かったし、ラストもブルブルしたよ!だって、死んだ子供たちと何カ月も暗い屋根裏で過ごしてた、って・・・考えたくもないよ!
スカイ君
いやまぁそうなんだけど・・・それにしても、モカ、お前怖がり過ぎて番犬とか絶対できねぇな
マッケイを中心とするキャストに恵まれた『マローボーン家の掟』

ストーリーの粗末なバックボーンや陳腐な演出を両手に抱えつつも、刺激的なパフォーマンスを魅せてくれるジョージ・マッケイ

母親亡き4兄弟の最年長者で長男としての頼もしさと、若さ故の弱さを同時に感じさせる演技は素晴らしい。弁護士のトムと対峙しているシーンなど肩肘を無理に張っている、背伸びした20歳の青年である事を思い出させてくれます。彼の両肩に載った重圧たるや、マッケイの表情を観ればその繊細な演技に少し胸打たれる感覚を覚えました

マッケイの恋人役、アニャ・テイラー=ジョイも隅に捨てては置けない

『ウィッチ』(2015年)での感服する演技を始め、様々なホラー映画への出演で“Scream Queen”(絶叫クイーン)の異名を取った彼女ですが、『マローボーン家の掟』では本筋と関係ないサイドストーリーを進行させる勿体無い役柄であったものの、純情な少女らしい笑顔と振る舞いは見事でした。マッケイとの相性の良さも充分に感じさせるテイラー=ジョイは、二人の関係にシンパシーを齎してくれます。

一方で絶叫クイーンの名にし負うアニャ・テイラー=ジョイの演技は、動く屍の様なジャックの父親に襲われるラストで一瞬だけ観られますが、たゆたう物足りなさは否めません。

スカイ君
パフォーマンスで唯一文句があるとしたら、単純にセリフが本当に聞こえづらい所だな、未だに何つってたかハッキり分からないシーンとかあるぜ。ビリーと喧嘩して風呂に入っているジャックへジェーンが語りかけるシーンとかな。まぁ、監督の指示で不気味な演出を出したかったからなんだろうけど

マローボーン家の掟 結末
チャーリー・ヒートンとミア・ゴスはあまり奥行きの無いキャラクターを演じる事になる点は残念


出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

マッケイとテイラー=ジョイを除いたキャストの歯切れ良く、安定したパフォーマンスが光るシーンはありつつも、如何せん元より浅薄で一元的なャラクターを演じている為に、ここでもキャストの持ち味を棒に振った感覚は拭いきれません

不穏で禍々しい雰囲気も手伝ってキャストの絶妙な描写は究極的に功を奏するものの、映画としての全体的な評価を引き上げるには至らず

『マローボーン家の掟』に点在するエッセンスは煌めく可能性を感じさせるものの、観客の椅子を引き抜いて驚かせる事に固執するあまり、納得感がある結末に自ずと導く事が出来ず、語って来た経緯とは気持ち良く相容れないラストに帰着してしまう点が痛恨の極みでした。

マッケイとテイラー=ジョイの恋仲の方が心の琴線に触れそうだった『マローボーン家の掟』は、ホラー映画としては口惜しく、心底驚嘆し、恐怖したい方にお勧めする事は出来ない作品です。


 この映画を観られるサイト

『マローボーン家の掟』は2019年4月12日から劇場で上映しておりますので、興味がある方は是非映画館へ!

動画配信サービスでの取扱はかなり先になりそうですが、配信開始が確認出来次第こちらも更新致します。

 まとめ

善し悪しの起伏が、ある意味、激しい映画でした。

サスペンスフルな瞬間や”来るぞ”と分かっていても怖いシーンは確かにありますし、柔らかい陽光が照らし出すホーンテッド・ハウスはゴシックなホラー映画にしてはユニークなシーナリーで、映像美は一見の価値あり。一方で期待させられた程の一驚に値するどんでん返しはなく、恐怖映画というよりは悲劇。心が痛む様な、鬱な雰囲気で結末を迎えたい方には丁度良いラスト。

すぐに怖がるからホラー映画が苦手だけどマイルドな恐怖映画を観たい、またはどんでん返し系の映画には馴染みがない方なら驚くかも知れませんが、そうでなければお勧めはしませんし、鑑賞にあたって過剰な期待は禁物です。

マローボーン家の掟
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