映画『パピヨン』のあらすじとネタバレありレビュー!意外にも観どころが無い、実話とされる自伝映画

パピヨン


監督:マイケル・ノアー
出演:チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、トミー・フラナガン、イヴ・ヒューソン、ローラン・モラー、マイケル・ソーチャ、ニーナ・セニカー 他
言語:英語
リリース年:2017
評価★★★☆☆☆☆☆☆☆

Papillon(2017) ©Bleecker Street『参照:https://www.imdb.com


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~”痛い、辛い、重い、暗い!ラストも何処か侘しく、光を掴んだはずなのに明るさを感じない映画で終始息苦しさが付き纏う”~
~”1973年のオリジナルと比べてリード二人のチャームやカリスマ、キャラクターが浅くてもう一度観たいとは中々思えない作品ですが、キャストのやる気はしっかり感じられる”~

もくじ


あらすじ


アンリ・シャリエールはパピヨンの愛称で知られる金庫破り
しかし殺人事件の濡れ衣を着せられてギアナで強制労働に従事させられる
労働環境は著しく劣悪で、脱獄者を出さないための警備も厳重だった
ギアナへ向かう途中、パピヨンは偽札職人のルイ・ドガに出会う
他の囚人たちはルイが金を体内に隠し持っていると確信し、
ルイを殺害してその金を奪い取る機会を窺っていた
身の危険を感じたルイはパピヨンに警護を頼む
パピヨンは断ろうとしたが、脱獄に必要な紙幣の偽造を申し出るルイ
その魅力に抗えず、結局はルイの護衛を引き受けることにした
利害の一致で協力することになったが、2人の関係は真の友情へと変貌していくのだった


レビュー

40年以上前に公開された『パピヨン』(1973年)のリメイクとして制作された『パピヨン』は、スタイルとグリップ力に欠けた作品。1973年当初、大スターとして名を馳せていたスティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンのタッグは『パピヨン』をヒットに導き、屡々名作として語られるに至りましたが、本質的にオリジナルを名作と称してしまうのは少々短絡的と感じています。クラシカルでも無い。単に古い映画です。

1973年の『パピヨン』にはシネマトグラフィが煌めく瞬間やカリスマティックとも言うべき、ホフマンのパフォーマンスが一見の価値を与えますがリメイク版は全体的にその模倣に近い。捻りが無いとは言いませんが、錚々たるインパクトはありません

アンリ・シャリエール、”パピヨン”が送り込まれた地上の地獄とも言える環境の、劣悪で冷たく、光を感じさせない描写はスクリーンから死臭を微かに漂せますが1973年のオリジナルと比べた目新しさはありません。スティーブ・マックイーンに代わってチャーリー・ハナムがパピヨンに扮し、厳めしい表情とテストステロンしか感じない肉体を見せ付けるシーンを存分に与えられ、一方でラミ・マレック演じるルイ・ドガは緊張した面持ちで、鼻梁に載った牛乳瓶の底を刳り貫いた様な眼鏡を押し戻す。知力と腕力が出会う瞬間は、その後の展開を期待させますが、『パピヨン』に起伏は少なく、横這いでラストを迎えます

『パピヨン』は泥臭い脱獄劇を描いており、血と怒声が飛び交うデビルズ島もパピヨンが脱獄を試みた罰則として隔離された独房も、肉体と精神の強さを試された男が苦悩する様子を描く分には充分ですが、それに留まってしまう。その泥臭さも実話として考えると納得出来なくも無い一方で、原作となったアンリ・シャリエール自身の伝記もフランスでは自伝では無く、屡々小説として取り扱われる事もあって大幅に脚色されたストーリーである可能性も捨て切れず、ならばフィクションらしいプリズン・ブレイクに期待したいドラマティックなスリルに欠ける様にも感じます


映画『パピヨン』のネタバレ
ギアナに送り込まれ、地獄の生活を迎えたルイ・ドガとアンリ・シャリエール


出典:”Papillon(2017) ©Bleecker Street”『参照:https://www.imdb.com

一環して精神の奥底を抉る様な重苦しい雰囲気も、。ただ、それがノアー監督の意図だったのかも知れません。

『パピヨン』を観ていると殺風景で、砂と石で出来た壁の質感を舌先で舐める様な感覚に陥ります。ハードで男臭い、喉を掻き毟りたくなる息苦しさを表す事は確かに出来ていました。

その無味乾燥なスクリーンの向こうで、国や正義の名の下であれば人間が如何に残虐で非人道的な事を平気で行えるものかが恐ろしく良く分かりますし、暴虐の被害者となった人間が何を拠り所とし、誰に救いを求める様になるのか興味深いテーマに繋がりそうにも思えましたがラストに向けて有耶無耶になってしまう。パピヨンとルイの固い友情こそ『パピヨン』唯一の強いメッセージですが、テーマとしては事新しくも無い。無実の罪、罪悪感と法の在り方に思慮を巡らせた様子も無く、いつ訪れても不思議では無い無残な死を前に軽口を叩きながら逞しく生き抜く男らしさを前面に押し出し続けます。
(南米に渡航中、気弱な囚人の一人が寝ている間に腹を裂かれて飲み込んで隠していた金を奪われるシーンさえあります)

ルイとパピヨンの友情さえ、心底声援を送り出したくなる様な共鳴を呼び起こすものとも言えない。環境、出来事、記憶、性格。何が二人の友情を喚起し、固めたのか私は明確に語れる自信がありません。いつしか芽生えたと表現すべき関係性を素直に美しいと捉えるか、その経緯を突拍子無く納得感の薄い描写と捉えるかは好き好きと言えますし、評価の分岐点にもなるポイント


映画の評価
ボディガードと金銭の関係にあった二人がいつしか互いを心から案じ合う仲になったのは何故なのか、良く分からなかった


出典:”Papillon(2017) ©Bleecker Street”『参照:https://www.imdb.com

パピヨンとはフランス語で蝶。

アンリの胸に彫られた刺青から生まれたニックネームでもあり、1973年の『パピヨン』が描いた人間が進化し、変化して行く様子を羽化する蝶に喩えたタイトルでもありますが、2017年の『パピヨン』には感じられるべきインスピレーションも前向きな気持ちも喚起されない。知と力のマリアージュの様で、ミスマッチに終わってしまった『パピヨン』はチャーリー・ハナムのファンでさえ首を傾げながら劇場を後にせざるを得ない作品でした。

映画『パピヨン』のネタバレあり評価
スカイ君
重かったなぁ、いやぁ重かった。うん、俺も130分間重みだけ感じて終わったよ・・・
モカ君
何だか疲れたねぇ、ポスター観て、もっとスタイリッシュなクライム映画っぽく仕上がっているのかと思ってた!
映画『パピヨン』のパピヨン
スカイ君
残念ながらアドベンチャー感もあまりないし、スリル的な感じもそんなに強くない映画だったな。パピヨンとルイ以外にもキャラが何人かいたけど、雑に扱われ過ぎて誰が誰だか良く分かんなかったってのも正直なとこだ・・・アンリは実在したし、本人曰く実話らしいが、その辺がグレーなのも何ともな。取り敢えず、ここからはネタバレありでレビューを進めて行くぞ!
リメイクのポイントが感じられない『パピヨン』に何を期待すべきか

パピヨンを演じるハナムからは作品を通して熱気を感じますし、コミットメントも伝わります

独房で2年間空腹に耐え抜くシーンでは、『パピヨン』の前半で見慣れたハナムの肉体美も劣えて痩せさらばえた囚人と化し、当時大きな話題を呼んだ『マシニスト』(2004年)で不眠症を患った骸骨の様なキャラクターを演じた直後に『バットマン ビギンズ』(2005年)でブルース・ウェイン/バットマンを演じるべく筋骨隆々とした体躯を披露したクリスチャン・ベールに通ずる意欲を感じました。CGiや特撮技術が著しく進歩した現代、健康上の影響が懸念される手法として善し悪しを議論する余地はありますが、そのモチベーションは認めたいところ

しかし、そうした熱が注がれたにも関わらず『パピヨン』の存在意義は鑑賞しても釈然としないのが残念

リメイクは屡々オリジナルとは全く異なる視点でストーリーを語ったり、新たな捻りを加える事で新風を吹き込む事がありますが、然りとてオリジナルを超えて評価される事は少なく、オリジナルに肩を並べる事が出来れば御の字。2019年に日本で公開された『パピヨン』の方が血生臭く、視覚的には良くも悪くもリッチですが飽き足らず繰り返されるシーンが多過ぎてオリジナルに匹敵するとは言い難い。


映画『パピヨン』のギアナ
劣悪な環境である事は良く伝わりますが、それは飽く迄も映画としての一側面に過ぎない


出典:”Papillon(2017) ©Bleecker Street”『参照:https://www.imdb.com

『パピヨン』に最も期待出来るのは、そうした視覚的なリアリティと圧倒的な絶望感

閉塞的なムードの重々しさが好きな方に限られるとは思いますが、パピヨンとルイが置かれる憂鬱な環境の描写は、既に述べた通り観ていて一緒に牢獄へ放り込まれた様な錯覚を起こしかねない。ストーリーも絶望感を煽る事には長けており、小舟で海に逃れたパピヨンやルイを海上で襲う嵐や、辛くも流れ着いた島で島民に助けられて療養されると思いきや、裏切られてギアナへ引き渡され、5年にも亘る独房での生活を強いられるパピヨン。不可能とされた脱獄をいよいよ遂げ、島で初めて笑顔を見せて解放感を味わった刹那、正気を失うと言われる一面乳白色の独房にカメラが戻されてしまうシーンの落胆感と失意たるや。観どころと言う程ではありませんが、『パピヨン』を通して、この一連のシーンが最も集中出来ましたし、手に汗握る感覚を覚えました。

然りとて40年前に語られた物語に塩を一摘み振りかけた程度の映画である事に変わりは無く、何故『パピヨン』をリメイクしたのかがどうしても分からない。40年も経ったヒット映画だからと言うだけではリメイクする理由になりません。

『96時間』(2008年)や『ソウ』(2004年)、一層マニアックでグロテスクな例を挙げるなら『ムカデ人間』(2010年)の様に人間が人道に著しく背く拷問や暴力の餌食となる様子を描いた映画は夥しく存在しているし、133分のランタイムは身構えていた以上に長く感じました

『パピヨン』はキャラクターの行く末や希望を応援するよりも、早くエンドクレジットに移りたくて無事脱獄出来る様に願ってしまう作品だったのは残念。

屈強な雄々しさが際立つ『パピヨン』、ヒーロー映画が君臨する現代性を反映した結果か

『パピヨン』のストーリーやリメイクの意義に纏わる不満はここまでとしても、キャラクターの描き方も得心出来ないポイントの1つ

ルイ・ドガが悲惨とまで言える程に、脚本家を務めたグジコウスキとノアー監督の注意を与え分けられていない。『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)でフレディ・マーキュリーを演じ、アカデミー主演男優賞を受賞したラミ・マレックですが、『パピヨン』ではシーンが変わる度に、違うキャラクターをメガホン越しに指示されている様な印象を受けます。定まらないキャラクター像にマレックも戸惑っている様に見受けられる瞬間もありました。『パピヨン』を鑑賞した後に、最も感情移入し難いのも特徴を明確に述べられないのもルイ・ドガです。

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ルイと言えば、見慣れぬ人間の醜い側面に青ざめるばかり。

一方でハナムはマレックの分をも担うかの様な勢いでパピヨンを演じ、視線を引く肉体も披露しますが、これは恰も昨今のアメコミ映画に影響された現代のハリウッドを象徴する様な描写。ヒーローたる者、男性らしくも整った顔貌だけで無く、鍛え上げられた胸筋とモナカの如く隆々とした腹筋が無ければその役目は務まらないと暗に示している印象を受けます。


映画『パピヨン』のネタバレあり評価
心身共に疲弊して行くルイ・ドガですが、キャラクターとしては最後まで親しみの持てないカメレオンの様な位置付け


出典:”Papillon(2017) ©Bleecker Street”『参照:https://www.imdb.com

『パピヨン』で当時の時代背景を映したバックグラウンドに最も良く馴染んでいるキャストもハナム。1900年代の風景に難なく溶け込める風貌は、現代に勿体無いとさえ感じる程でした。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)で従来のイメージとは一変し、良く肥えた身体を披露したソーがヒーロー陣に加わるまでは、メインを務める俳優がジムに通い詰めて当たり前でしたが、それでも肥満体はコメディのエッセンスとして扱われていて男らしさや雄々しい魅力として描かれません。女性に関してはプラスサイズが声高に、個性であり、平等の名の下で美として認められるべきと唱えられる昨今ですが、男女間で差があるのは実に不思議。その点は現代性が垣間見られる作品でした。

それに追従するハナムの姿勢は先述した通り素晴らしいのですが、極度な精神的、及び肉体的なストレスに長期間曝された人間とは思えない点は見逃せない。殴られれば苦悶に表情を歪めるものの、それ以外は凛々しい顔付きで地獄を耐え抜いてしまいます。不屈の精神を持つ男とは言え、心折れそうになる瞬間や恐怖に慄く場面は見られず、同じ人間とは思えなくて共感する事は難しかった。シーンに応じて身体を鍛えたり、痩せ衰えたりする役者魂に加えて、より表現力を活かして欲しかったと感じました。


映画『パピヨン』のネタバレ
非日常で特殊な環境下で人々が何を思い、何をするのか胸打つパンチ力が今一つ


出典:”Papillon(2017) ©Bleecker Street”『参照:https://www.imdb.com

『パピヨン』でフォーカスされるべきは、絶望的で過去な環境に置かれた男が、どの様に状況を打開したのか、その道程で何を犠牲にし、どれ程苦悩し、何を思ったのかです。無論、奇想天外な脱獄計画を描いてくれる分にはスリルやアクションの楽しみが増えますが、『パピヨン』に関しては二の次にしても良いエッセンス。

殊、独房にパピヨンが隔離されるシーンも年単位で幽閉された実感は無く、面窶れはしていますが、感動や感心を喚起される事はありませんでした。

『パピヨン』はリメイクする事が目的だったリメイクの様で、印象的なシーンも少なく、重苦しいトーチャー映画を観たいので無ければお勧めは出来ない作品です。


この映画を観られるサイト

『パピヨン』は6月21日より全国の劇場で上映中!気軽に観に行く映画ではありませんが、1973年の作品をご存知の方なら、改めて鑑賞してみる意味で観てみるのは良いかも知れません。

まとめ

チャーリー・ハナムの苦痛に歪んだ顔と肉体美であれば、度々拝める作品。

1973年のオリジナルに比べた目新しさは殆ど無く、パピヨンとルイ・ドガのスポットライトの当たり方に関しては寧ろ後退したとさえ表現しても良い映画でした。各々のキャラクターにエッジを利かせたヒューマン・ドラマでには至らず、ハナムやマレックが注いだエネルギーが実に勿体無い。

一本槍に過酷な環境で藻掻く男たちを観たいのであれば『パピヨン』は誂え向きですが、ハウス風な色合いのスタイリッシュなポスターに惹かれただけであればお勧めはしません。

映画『パピヨン』ネタバレレビュー
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