ジョン・ウィック
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ミカエル・ニクヴィスト、アルフィー・アレン、エイドリアンヌ・パリッキ、ブリジット・モイナハン、ディーン・ウィンタース、イアン・マクシェーン、ジョン・レグイザモ、ウィレム・デフォー 他
言語:英語
リリース年:2014
評価:★★★★★★☆☆☆☆
John Wick(2014) ©Summit Entertainment『参照:https://www.imdb.com』
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~”スリークでスタイリッシュな殺し屋、ジョン・ウィック!最大の観どころは、ベテランのスタントマンが監督したアクションの数々”~
~”キアヌ・リーヴスらしさは健在!『マトリックス』で見せたキレのあるアクションは、『ジョン・ウィック』でも炸裂、更にミステリアスで翳りのある男臭いキャラクターに”~
もくじ
あらすじ
嘗て裏社会にその名を轟かせた凄腕の殺し屋ジョン・ウィック
最愛の女性ヘレンと出会い足を洗うがヘレンは病に倒れ帰らぬ人となった
生きる希望を失いかけるが、ヘレンはジョンに仔犬を遺していた
自分が死んだ後も、ジョンには愛する何かが居る様にと
ジョンの新たな生きる希望となった仔犬のデイジー
その矢先、ジョンの愛車を狙った強盗が家を襲撃してしまう
そして車を奪われただけでなく、デイジーも殺されてしまったジョン
大事なものを再度失ったジョンは、復讐すべく裏社会へ戻ることを決意する
レビュー
アクション・ファーストでハードボイルド。
『マトリックス』(1999年)でその名を馳せたキアヌ・リーヴスも、『ジョン・ウィック』公開当時既に50歳を迎えていたと言われてしまうと驚きを隠せません。『ジョン・ウィック』はエレガントながらも激しいアクションに彩られた復讐劇。ストーリー・セカンドな映画として、物語は恐ろしく単純で映画史に限らず、使い古されてきた内容ですが、スタイリッシュなガンスリンギングが新鮮な活気を感じさせます。その単純な物語は、ジョンが愛した亡き妻が遺した一匹の仔犬に端緒を開きます。
凄腕のヒットマンとして暗躍していた過去を捨てさせた最愛の妻、ヘレンは愛する者を失ってしまうジョンを心配して仔犬のデイジーを遺して病に屈します。失意に暮れるも、デイジーを可愛がり、日常に戻って平穏な生活を送るジョン。しかし、ガソリン・スタンドで給油中にロシアのマフィアがジョンのフォード・マスタングを気に入ってしまい、譲る様にとジョンへ迫るも、応じなかった為に力尽くで奪われてしまいます。愛車だけでなく、愛犬のデイジーも強盗の巻き添えとなって惨殺されたジョンは裏社会へと戻り、復讐を誓う。ストーリーは『LOGAN/ローガン』(2017年)を想起させる、”最後のミッション”の類です。
『ジョン・ウィック』は全体を通してストーリーにスマートな捻りも無ければ、特筆すべき面白さも無い為、物語は期待出来る観どころではありません。唯一、ほくそ笑んだとすれば、マフィアにジョンが宣戦布告したシーン。『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011年)で権力を笠に着たシオン・グレイジョイを演じたアルフィ・アレンは、『ジョン・ウィック』でもマフィアの頭、ヴィゴ・タラソフの実息である事を振り翳す愚者、ヨセフとしてジョンの憤怒を爆発させます。
出典:”John Wick(2014) ©Summit Entertainment”『参照:https://www.imdb.com』
小魚の様で大した事の無い畏れを知らぬ暴君の様な男が、愚昧な行為で自らの墓穴を掘る。己に適う存在など無いと自惚れた猫が、寝ている虎に向けて面白半分に放尿した直後に地獄を見せられる様な満足感。ジョンが電話でヴィゴ・タラソフに来る死の嵐を予告するシーンは特に気持ちが良い。
そしてシンプルながら、クレバーなのがジョンの復讐劇に火を点ける理由となった仔犬の存在。架空のキャラクターよりも、誰が観ても愛らしい仔犬の無残な死の方がジョンの悲しみや怒りに共感し易い事は否めません。分かり切った展開のストーリーを緩慢に語らず、ジョンが再び銃にマガジンを込める理由を素早くオーディエンスに伝えてアクションのスクリーンタイムを長くする為に最も合理的なプロット・デバイスでもあったのだろうと思います。
そして『ジョン・ウィック』最大の観どころであるアクション。
モノクロで撮影されたかの様に寂れた、色味の少ない序盤のシーンとは一転してジョンがH&K P30の銃声を轟かせるとスクリーンは途端に鮮やかなカラーを取り戻します。『マトリックス』でリーヴスのスタントマンを務めたチャド・スタエルスキ監督は、ベテランのスタントマンとしての経験やノウハウを活かして『ジョン・ウィック』のアクションに揺るぎない安定した自信の様なオーラを感じさせます。正式にはクレジットされていませんが、スタエルスキ監督とタッグを組んだデヴィッド・リーチも同じく経験豊富なスタントマンで、『ファイト・クラブ』(1999年)のブラッド・ピットや『ボーン・アルティメイタム』(2007年)のマット・デイモンのスタントを務めた経歴の持ち主。そのシナジーは『ジョン・ウィック』で確かに堪能出来てエンターテイニング。
出典:”John Wick(2014) ©Summit Entertainment”『参照:https://www.imdb.com』
但し、『ジョン・ウィック』のアクションはフラッシーなだけで無く、血生臭さや痛々しい描写もセットでスクリーンに広がりますので、グロテスクな映像が不得手な方は少々注意が必要かも知れません。
死体の数が秒針と共に増えて行くに連れて飽きて来る感覚はありますが、鮮烈な暴力とアーティスティックなアクションに限らず、『ジョン・ウィック』の世界観の魅力が解毒剤として効力を発揮します。スクリーンに飛び散る鮮血に嫌気が指した頃に、その疲れを中和する様に場面はヒットマン御用達のホテル、ザ・コンチネンタルへ。このホテルには暗殺を生業としている者たちだけが訪れますが、ホテル内での殺人は禁止されているなど細かな掟が存在し、ジョンが暴走する外の世界とは隔離された異世界の様なコントラストを持たせてくれます。
アクション以外にも洗練された要素を求めてしまう私としては、少々物足りなかった『ジョン・ウィック』ですがファンが存在しても不思議では無いアクション好きの為の映画でした。
優美な気品に男臭さを漂わせたキアヌ・リーヴスが戻って来た。
ブルース・リーやジャッキー・チェンの様にアクション界の代表格として名が上がる錚々たる俳優に及ぶか否かは議論の余地がありますが、リーヴスは銃器を片手に爆炎を纏って迫って来ても不思議な落ち着きを醸し出すユニークなスター。その揺るぎ無いオーラこそ、気が狂いそうなカオスと美しいコントラストを織り成す俳優です。リーヴスにジョン・ウィックなるキャラクターを演じさせれば、ミステリアスでクール、幻の様な存在に息を吹き込んでしまう。それが素晴らしく良い。
『ジョン・ウィック』は差し詰め、深々と席に座って頭を働かせずに観ても楽しめるマインドレスな映画。
しかし、リーヴスのパフォーマンスが生み出したアイコニックなキャラクターが、一見簡素で無為無聊なストーリーを新しい作品に仕立て上げてくれる。キャラクターが如何に映画を構成する重要なパーツであるかを改めて感じさせてくれます。
出典:”John Wick(2014) ©Summit Entertainment”『参照:https://www.imdb.com』
『96時間』(2008年)や『スノー・ロワイヤル』(2019年)など出演作品は際限無く連なるリーアム・ニーソンが君臨する、元殺し屋、或いはスパイのエースが復讐に躍り出るバイオレンス映画の王座にリーヴスも静かに登り詰めた様に感じられる『ジョン・ウィック』。リーヴスは『マトリックス』を始め、様々な作品で成功を収めた役者ですが、常に謙虚で控えめな姿勢から目立つ存在ではありませんでした。しかし、リーヴスの絶妙なニュアンスを含ませたジョン・ウィックなるキャラクターは、『マトリックス』のネオと同じく、如何に偉大な役者でもリーヴス以外に代替出来る人物では無くなくなったと言っても過言ではありません。単に屈強でマスキュリンなファイターとは対照的な靭やかで悲哀感に満ちたミュトスを抱えた男を演じる事が出来るリーヴスこそ、ジョン・ウィックに相応しい。
そしてキャラクターで幸いしているのはリーヴスだけではありません。
アルフィ・アレンのヨセフ・タラソフを大悪の中枢としてしまうと、『ジョン・ウィック』はアクションやリーヴスで誤魔化そうとしている退屈な脚本を意識せざるを得なくなりますが、ヨセフの父親ヴィゴ・タラソフはジョンの手腕を骨の髄まで熟知しており、ジョンを賢明にも恐れている人物としてストーリーに重みを与えてくれます。ヴィゴに扮するのは、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)や『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年)で知られるミカエル・ニクヴィスト。十全十美に仕上げられたテイラード・ジャケットに身を包み、重厚なオーラを醸し出しつつも主張し過ぎない俳優です。ニクヴィストは地の果てまで威嚇的なキャラクターではなく、一定の重々しさを湛えながらも『ジョン・ウィック』の単純で軽いアクション映画としてのアンビエンスを阻害しない程度にコメディックなリアクションも見せてくれるバランサー。
こうしたキャストから滲み出るエネルギーも『ジョン・ウィック』の観どころの1つです。
『ジョン・ウィック』のアクションには斬新な閃きの恩恵を受けた目新しさはありませんが、一言で表現するなら実に滑らか。
難点を挙げるとすれば、アクション不足。もっとアクションが映えるシーンが欲しかった。
リーヴスが如何にジョン・ウィックとして適役であるかは語り尽くしましたが、『ジョン・ウィック』では同時にそれが弱点にも繋がります。リーヴスからカメラが遠ざかり、シーンが切り替わると『ジョン・ウィック』の勢いが衰えて行く様子が否めない。サポーティング・キャストにも不満は無いし、先程述べた通り『ジョン・ウィック』を在り来たりなリベンジ映画に留まらせないエネルギーを持ちますが、多くのシーンはジョン・ウィックの恐ろしさを語るばかり。伝説的な才腕と、それに付き纏う死の化身としての逸話を聞かされるよりも実際に見せて欲しい。オープニングの最愛の妻と、仔犬の涙ぐましい死が充分なバック・ストーリーを与えてくれたので、ランタイムの残りはクリエイティヴで、引き込まれる様なアクションにフォーカス出来ていたらベストでした。
タラソフの様子を事細かに確認する必要は無いので、カメラはジョンに向けたままで良かった。
出典:”John Wick(2014) ©Summit Entertainment”『参照:https://www.imdb.com』
然りとてジョンに纏わるマフィアの数々の噂話は決して無駄では無く、オープニングに30分費やした後に噴き出すアクションへの期待を高めてくれます。
そして裏切らない。
精巧にデザインされた擬斗には間違いなく目を奪われます。複雑なアクションを施したシーンに使われる事も珍しく無い、スローモーションの効果に肖る必要も無く、素早く、そして巧みに繰り出されるムーブメントは芸術的でさえある出来栄え。『ジョン・ウィック』のアクションは殊の外シームレスで、信じ難い動きを平然と熟してしまい、オーディエンスとしてもそれを目の当たりにした驚きや感動は大きい。伝説として語り継がれても不思議では無いと思える男を確かに創り上げています。
そしてアクションがスクリーンに切り込むと、ネオンの綺羅びやかで妖しげな光が『ジョン・ウィック』に命を吹き込んでいる様にも観える演出は、その観どころをエンハンスする重要な役割を果たしています。
出典:”John Wick(2014) ©Summit Entertainment”『参照:https://www.imdb.com』
暴力的な描写は様々な映画で度々アーティスティックに演出されており、特筆する程斬新なポイントではありませんが、『ジョン・ウィック』には、そこにスタイルが存在する。アクションを彩るサイケでシックなライトに限らず、ジョンが生きる裏社会のルールもファンタシーの世界への憧れの様な感情を喚起させます。ジョンがマフィアを掃討した後の遺体を処理するミステリアスなアンダーテイカー、そしてヒットマンの間で使われる独自の金貨など暴力的で血生臭い死とは対照的な、神秘的でエレガントな異世界を思わせる『ジョン・ウィック』のセッティングは秀逸です。
『ジョン・ウィック』はリーアム・ニーソンの出演作品に劣らず残虐で痛々しい描写に溢れた映画ですが、あらゆる側面、世界観とも呼べる空間をアートフルに創り上げたエンターテイニングで肩の力を抜いて観られる作品です。ストーリーへの捻りが不足している点はマイナスせざるを得ませんが、確かなスタイルを確立したリベンジ映画として『ジョン・ウィック』は1から10までアクション重視で鑑賞する事をお勧めします。
この映画を観られるサイト
『ジョン・ウィック』はこちらのサービスで観られますので、是非お試しあれ!
そう!言葉通りお試しで、1ヶ月にも上る無料体験期間を用意しているのはU-NEXT。
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まとめ
『ジョン・ウィック』はアクションを第一に観た方が落胆しない作品。ある種、難解で堅苦しいクライム映画よりも、暇な休日にコーヒーを片手に流して観るのが丁度良いでしょう。
暴力的な表現は相当ストレートなので、苦手な方にはお勧め出来ません。
アクションは単純に派手なだけでは無く、監督陣がベテランのスタントマンである事から実に良くコレオグラフされており、信じ難い動きをいとも簡単そうに熟してしまう美しさを感じさせます。そして、それをアカンパニーするセッティングや世界観も秘密結社を覗き込んだ様な憧れを誘う。続編にも是非期待したいアクション映画でした。