俺より先に高級レストランに予約しただと、コロス・・・なアメリカン・サイコ

アメリカン・サイコ


監督:メアリー・ハロン
出演:クリスチャン・ベール、ジャレッド・レトー、ウィレム・ダフォー 他
言語:英語
リリース年:2000
評価★★★★★★★☆☆☆




~”見終わる頃には自分も狂っていそうな程、意味深だが狂気じみた作品”~
~”痛々しいグロさはないけど、血飛沫や血の海は度々・・・耐性ない人は要注意”~

 もくじ


 あらすじ


ウォール街に勤めるイケメンエリートのパトリック・ベイトマン
裕福で一見完璧に見えるベイトマンだが、彼の裏の顔はサイコな猟奇連続殺人犯
羨望や熱狂的な物質欲に突き動かされる彼の犯罪の数々は、ある同僚の殺害を機に拍車をかける
彼はどこまでこの狂気の沙汰を続け、いつまで気付かれずに済むのか?
彼はエゴと競争心を手放す事が出来ず、殺し続けるのだろうか?
そしてついにはベイトマン自身を取り巻く世界も狂い始めて行く・・・


 レビュー

”浅い”と言えばそれまでのバイオレンス、ちょいスプラッタ映画

ただ、逆転の発想でまさに”浅い”事がこの映画のメッセージだとしたら、これ以上にインパクトがある作品は中々ないでしょう。

主演クリスチャン・ベール演じるサイコパス、パトリック・ベイトマンのオーラは独特そのもの。世の殆どの女性を手中に出来そうな、ミステリアスで何を考えているか分からない金持ちイケメン、に留まれば良かったのですが彼は真の異常者。


淡々と電話しながらフェチ系のAVを観るベイトマン


出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

怖いもの見たさや理解できない異常性に興味を持ってしまうのが人間。連続殺人鬼のテッド・バンディやジェフリー・ダーマーの様にチャーミングで女性にモテそうな人間の裏の顔を知りたい様な知りたくない様な。そんな心理をくすぐるのがアメリカン・サイコ。そんな人間をドンピシャに演じる事ができるベールには、もう脱帽です。

公開当時、物議を醸したという問題作でもありますが見方によっては考えさせられる作品。狂った様に人を殺していく、支離滅裂な幻想と現実が入り混じったカオスな映画にも関わらず、脳裏にしっかりと印象を残していくあたり、凄い作品だと思います。

アメリカン・サイコ
スカイ君
ネタバレありだ!結構色々と狂気じみた作品だから苦手な人は嫌いかもな・・・おい、モカ、お前はダメだ
アメリカン・サイコ
モカ君
えっ、ボクも観たいのに・・・
薄っぺらさがエリートの本質

まさにこれがメッセージ。

アメリカン・サイコでは、ベイトマンを中心に彼と似た立場の人々が登場します。ウォール街、投資銀行員、高級レストラン、ブランド品。作中の男性は、全員こうした共通のキーワードで表わせる人間で互いに負けまいとする闘争心も明らか。


名刺の大きさ、質感、フォントの色、肩書でマウンティングする男たち

出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

結局はエリートになればステータスや身に着けるブランド品などの物質的、上辺の世界でいがみ、争い合うところまで堕ちるのだという事。アメリカン・サイコがユニークなのは、この描写を馬鹿げているくらい極端に描いている事。

”俺よりも良い名刺だと・・・・クソ野郎、殺してやる”

これがパトリック・ベイトマンの思考回路です。まさに、Reductio ad absurdum(ある主張を、極端に誇張して、その結果のバカバカしさから主張そのものを批判するという考え方)ですが、ベールの巧妙な名演技のお陰か、”バカバカしさ”よりも、悍ましさに引き込まれてしまう。妙に納得感が出る。極端に誇張されては居るけど、寧ろ主張に拍車を掛けている。


遂にはステータスも地位も関係ない女性まで手にかけ始めるベイトマン


出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

途中からは適当に呼びつけた売春婦までも殺すなど、最早何の為に誰を殺すのかも見失い始めるベイトマン。直前に性行為に及んでいる事から、快楽殺人に切り替わった事が示唆されている様な気もします。

復讐劇でも何でもない、私利私欲と呼ぶ程でもないただの”しょうもない”殺人はエリートたちの”しょうもなさ”を反映した描写になっています。

サイコはベイトマンだけではない

ベイトマンがアメリカン・サイコなのは明白な事実ですが、彼はあくまでも主人公、つまり作品の代表格です。

アメリカン・サイコーズでこそないものの、映画が風刺しているのは”エリート”に括られる権力者やスーツを纏った裕福な人間。ベイトマンとマウンティングし合っている連中も、漏れなく作品のアメリカン・サイコたちなのです。ここが面白いと思った点

ベイトマンを中心とした世界が描かれていますが、実際には他の一見脇役に見える男たちもサイコ。ベイトマン程狂っているのか、もしやそれ以上なのか察しはつきませんが、彼らも裏で互いを抹殺し合っていたとしても不思議ではないでしょう。


いくら夜でもこの状態で誰も気付かないなんてあり得ないでしょ


出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

それが伺える場面は幾つかありますが、例えばチェーンソーで逃げ惑う売春婦をベイトマンが追い回すシーン。夜の静寂を破るのは、ベイトマンの笑い声、娼婦の震える叫びとチェーンソーのエンジン音。これが高級集合住宅の中で起こっていたら、誰か一人は異常に気付くはずが誰も出てこない。その後、事件にすらなっていない。

次で語る”夢オチかどうか”の議論の余地はありつつも、作品が殺人をエリートの異常性の象徴としている事から、このシーンは”他のアメリカン・サイコもベイトマンと同じ様に自分にしか関心がない”事を表していると考えています。

つまり、チェーンソーで女がメッタ斬りにされようがどうでも良いのです。逆にベイトマンがそんな場面を目撃したとしても、放って置くでしょう。彼の様な人間が住んでいるマンションなら不思議ではありません。

ベイトマンにスポットライトが当たっているものの、このストーリーの恐ろしさは彼も含めたアメリカン・サイコだらけの世界、社会そのものが存在している事なんです。

正直、夢オチじゃないと話が成り立たない・・・のだろうか

殺したはずのポール・アレンがラストで”生きている”とベイトマンの弁護士から伝えられますが、この時点で多くの人がベイトマンの夢オチストーリーと考えた様です。

ほぼ同タイミングで秘書が見つけたベイトマンのノートにも、女性を裸にして切り刻むなどの悍ましい絵が描かれており、彼の異常性な空想がスクリーンに映し出されたまでと思った鑑賞者も少なくなかった様です。


犯人が分かったら、そこで物語は終わったも同然


出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

この点に関しては、敢えて”各々の想像に任せる”というのがハロン監督の意図なのでしょう。

そして私としての考えは、あくまで作品のメッセージ性は絶対的にブレないものだと考える為、”夢オチではない”が正しい結論ではないかと考えています。

先程のチェーンソーの例も、非現実的とは言う意見もあると思いますが、それを言ってしまえばこの映画で起こる全ての事が非現実的です。名刺の厚みや質感であからさまにマウンティングなどするでしょうか。更に言えば、名刺に何人もVice President(副社長)の肩書が書いてありますが、そんな事あるでしょうか。

ベイトマンなど存在せず、誰かの空想、と言うなら”誰か”は即ち原作者です。フィクションなら全て”空想”そのものですから。では、フィクションのストーリーでも、その中のキャラクターが”夢オチ”したかどうか、で言うと全てのシーンが現実と考えるべきでしょう。


”この映画の全てがサイコ”、それくらい支離滅裂でないと逆に筋が通らない


出典:”American Psycho(2000) ©Universal Pictures”

この作品の目的はあくまでもエリートの馬鹿馬鹿しさ、薄っぺらさに誇張を重ねたトンデモな描写で誰にでも伝わる様に描く事だと捉えています。

その為には登場人物全員がアメリカン・サイコだと考えた方が自然です。ポール・アレンは生きていて、先日夕食を共にしたというベイトマンの弁護士もサイコ。ならば、冒頭でベイトマンが取り違えた様に同じブランド品のスーツ、同じ名刺、同じ眼鏡、同じ髪型をしたエリート男を誰かと取り違えていると見て間違いないです。ベイトマンがアレンと思って殺した男が別人なのか、弁護士が会った男が別人なのかははっきりしませんが、そこは重要ではない。

そんな様子を淡々と観ている自分ももしかしたら、ジャパニーズ・サイコなのかも知れないと感じて、少しブルッとしたけど非常に深い作品だと感じました。


 この映画を観られるサイト

勿論お勧めするのは動画配信サービス、ですが、ダテにお勧めしているのではなく。

正直、私も面倒だしカネ払うのかなぁと思ってたクチなんですが、何だろう、生活が変わりました。車に近いです。買うまでは金もかかるし、場所も取るし面倒でしかなかったのですが。

買って取り敢えず生活してみたら、案外楽しいじゃねぇか・・・という。

一度いつでも映画とドラマが観られる生活、体験してみてください。”んなもん”・・・と思いつつ、不思議と楽しくなります。例によって、せっかくなのでアメリカン・サイコが観られるサイトから!いずれも無料体験期間ありになりますので是非!

 

 

 まとめ

ミステリーか何かだと思って観ると期待外れにはなりますが、ネタバレありとは言え、レビューを読んで頂いた方がもしかしたら楽しめるかも知れません。ドニー・ダーコ的な”一回観ただけではよく分からない”映画なので、ひょっとすると予め”見方”を分かった方が良いかも。

勿論、何も知らずに観るなら数回は繰り返し観る覚悟で。

少なくともカップルで仲良く観る様な作品ではありませんが、意味深なスプラッタ系が好きな人にはお勧め(・・・そんな超ニッチなカテゴリ、あるのか分からないけど笑)

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