『アクアマン』は可能性を感じさせるも、評価できないCGiと陳腐な演出が目立つ惜しいヒーロー映画

アクアマン


監督:ジェームズ・ワン
出演: ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ウィレム・デフォー、パトリック・ウィルソン、ドルフ・ラングレン 他
言語:英語
リリース年:2018
評価★★★☆☆☆☆☆☆☆



~”ジェイソン・モモアのパフォーマンスは素晴らしいが、残念ながら内容とアンビエンスがイマイチ付いて来れていない”~
~”何度もヒーロー映画で観た事があるシーンを切り取ってアレンジして繋ぎ合わせた様な、典型的で目新しさに欠ける作品”~

 もくじ


 あらすじ


アトランティス王国の王妃、アトランナ
彼女は嵐の夜に出会った人間の灯台守トムと愛を育み、一子をもうける
アーサーと名付けられた男の子は人間として育てられるが、超人的能力を持つ事に気づく
アトランティス王族の末裔として人助けをしながらも人間として過ごす日々
しかしある日、異父兄弟でアトランティス王のオームが人間に戦争を目論んでいる事を知る
地上と海底、どちらのヒーローになるべきか
アクアマン最大の試練が彼を待ち受ける


 レビュー

率直な感想を言うと映画を観た気分ではなく、東京ディズニーシーで最新アトラクションに乗った気分でした。しかし期待外れ。

地上の人間には伝説とされるアトランティス王国。物語の全ては、アトランティス王国の王妃アトランナと人間の灯台守トーマスが嵐の夜に出会う事から始まります。手負いのアトランナを手当して灯台に住まわせ、徐々に心を通わせる二人。遂には愛し合ってアーサーと名付けられる男の子に恵まれます。半アトランティス人、半人間のアーサーこそ2017年のジャスティス・リーグでも活躍したアクアマンです。

私としては、この時点でアトランナのコスチュームと灯台のセット全体がアンマッチ過ぎて違和感でした。異世界の女性ではなく、正直コスプレイヤーにしか見えません。スピードスケート用のスパンデックスウェアに東急ハンズで手に入りそうなラメやキラキラした鱗っぽいパーツを貼り付けただけの様でした。演出として、例えば魚っぽく敷き詰められたヌメりが少しある鱗にした方がアトランティス人っぽいだろうに。コスチュームの予算が厳しかったのか、あまり作り込まれた感じはしませんでした。申し訳ないけど、TDLのパレード衣装にしか見えない。

地上の生活にも慣れ始め、アーサーもすくすくと育ったある日。アトランナを連れ戻すべくアトランティス王国から捜索隊が灯台を襲撃しますが、人数が少なかった事もありアトランナはこれを一網打尽にして一旦は難を逃れます。

しかし、何故いまさら捜索隊が現れるのか終始、意味が分かりませんでした。


アクアマン
海底に住まう種族というよりも、宇宙大戦争で宇宙人が着てそうなコスチュームを纏うアトランナ


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

この襲撃が起こった時、アーサーは2~3歳くらいで、アトランナとの運命的な出会いから逆算しても、少なくとも4年くらいは経っていると考えて良いでしょう。アトランナが海に戻ったり、発信機を付けている様子はありませんでしたし、地上に居た彼女をどの様に見付けたのか・・・海賊のデイビッドを除けば、アトランティス人が地上に繋がりやスパイを持っている様子もないです。デイビッドはこの頃、恐らくまだアーサーと同じ子供ですし。

この捜索隊による襲撃が無かったらアトランナは海に戻る事も無かったでしょうし、ストーリーが進まないので必要なシークエンスですが引鉄となるイベントが説明も無く起こる事に気持ち悪さを感じざるを得ません。理由やロジックよりもドラマティックなシーンでドラマティックな事を起こす事にフォーカスした、スーサイド・スクワッドの再来がこの辺りでいよいよ現実味を帯びて、心配と不安でいっぱい

アトランナが海に消えた後もアーサーはすくすくと育ち、アトランティス王国の参謀バルコによってアトランティス人としてのトレーニングを受け力強く成長します。そしてステッペンウルフの侵略から1年、アーサーは異父兄弟の弟オームが地上との戦争を目論んで居る事を知らされます。アーサーに王位を継承して戦争を未然に防いで欲しいと頼んで来たのはオームの許嫁メラ。赤髪が良く似合うアンバー・ハードが妖艶に演じます。


アクアマン
ジェイソン・モモアが放つカリズマティックなオーラは観る者を惹き付ける魅力がありました


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

渋々メラにアトランティス王国へ連れられるアクアマンは、オームと対峙。そこでは王になる為の試練が彼を待ち受けて居ました

『アクアマン』の見どころもこれから紹介しますが、どうしてもネガティブな指摘が目立つでしょう。総じて”選ばれし者”ネタにありがちなストーリーに、杜撰なCGi映像がコラボしたヒーロー映画でした。

スカイ君
オレも途中で流れは読めたし、本当に微妙だったな・・・あ、こっからはネタバレありだ!まぁ、人によっては凄く楽しめるみたいだから一度観てみても良いとは思うぜ、オレはお勧めできないけどな
斬新さもオリジナリティも薄くて味気ないストーリーとラスト

禁断の愛が育んだ、特別故にどこにも居場所がない”選ばれし者”の物語。ここまで言えば、ある程度映画やポップカルチャーに触れてきた方なら大筋のストーリーは描けるしょう。寧ろ、これで全く物語の流れに予想がつかないと言う方にだけお勧めしたい映画です。

伝説の剣を手にしたアーサー王に因んで”アーサー”と名付けられただけあって、まさにその通りの物語。

とは言え、もう少し捻りを加えられなかったものでしょうか。流れは鉄板パターン。選ばれし者が悪に挑み、一度挫折を味わって厳しい試練を経て再挑戦の末に勝利する。加えて“試練”や”挑戦”の見せ方もイージーモードで何ら工夫を感じませんし、『アクアマン』の薄っぺらさの元凶だと感じました。


アクアマン
“トライデントを取りに来たアーサー君?あ、選ばれし者なのね、はいはいどうぞコチラです”な白けるシーン


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

このパターンなら”試練”のプロセスが非常に重要で、そこを如何に面白く描くかが映画としてのエッセンスだと思いますが”試練”でさえ無い描写に愕然としました。彼自身が力を身に着けたのではなく、伝説の槍『トライデント』を手にすれば良いというアイテム頼りな筋書き。苦難の末に手に入れた勝利ではなくて、最初から用意されていたシナリオをお口にアーンしてもらった印象しか無いです。アクアマンは口を開けただけです。

スカイ君
一方で半地上人、半アトランティス人なんてぶっ飛んだ設定を映画化するのは、だいぶ難しかっただろうからワン監督は良くやったとは思うけどな
モカ君
ボクも細かいところはあまり気にならなかったよ!アクアマン、カッコ良かったけどなぁ

私もキャストは非常に良かったと思いますし、モモアとハードは特にカリスマ性が溢れ出る二人です。それが余計に勿体ない。美しいメラと小旅行の果てに伝説の怪獣カラゼンと相まみえるも、ただの話し合いでトライデントを手にする流れはやはり評価できない。『アクアマン』の出来事に疑問を呈すると”選ばれし者だから”という返す言葉が出ない理由で片付けられてしまい、モヤモヤする。オームに勝つのも、特段ファイティング・スキルに覚醒したと言うよりもトライデントが折れない最強アイテムだったからに過ぎない様な印象です。

勿論、ストーリーが短絡的だからと言って映画として駄作にはなりません。キャスト、映像技術、カメラワーク、アクションが絡むなら振り付けを含む様々なエッセンスが融合して出来るのが映画作品。ただ、『アクアマン』ではこうした多くのエッセンスにも問題がある様に見られ、どうしても低評価せざるを得ませんでした

アクション・シークエンスは上出来なのに月並みな演出で台無し

ありがちなストーリーと説明がつかないシーンの数々はさて置き、せっかく大スクリーンで楽しむなら最大の見どころはやはりアクション

CGiを駆使しつつ生み出される派手な動きはさすがと言ったところ。アトランナが捜索隊を返り討ちにするアクション・シークエンスは迫力に拍車をかける様なカメラワークと流れる様な彼女の美しい動きが素晴らしい。アクションには期待が持てそうだと感じたワクワクする瞬間でもありました。10秒で20カットくらい使う今時のアクションではなくて、アトランナを中心にグルっと回るカメラワークは非常にエンターテイニング。

しかし、多少は好みの問題もあるとは思いますがスローモーションを多用し過ぎです。その後のアクションは気になってしまうくらいスローモーションを使っていて、マーベルのブラックパンサーのアクションを思い出しました。ブラックパンサーもアクションはあまり好きではありませんでしたね・・・スピードが出たと思ったら、時々急ブレーキを踏まれる違和感に近い


アクアマン
オームの鎧のデザインはシンプルでカッコ良く、凄く良かったのですが続くアクションが・・・


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

それと、更に踏み込んだ事を言うと典型的なヒーローポーズが多い。トレーディング・カードゲームの撮影会じゃないんだ、そこに時間を使うならもっと驚く様なアクション・シークエンスを見せてくれと何度思った事か。仕舞には、”あーココはもうイイよ分かったから次行って、次”と思いながら観ていました。どの闘いも結末は予想がつくし、惹き付ける程のアクションも流れるスピード感もあまりない

アトランナの時と同様にカットを多用しないカメラワークはとても良かったのですが、水中での闘いは果てがある様な無い様な海底。楽しめたのはブラックマンタとの地上での闘いくらいでした。

そのブラックマンタとのアクションですが、それなりに楽しかったものの色々とディテールが気になりました。これは『アクアマン』全体にも言える事なのですが・・・

スカイ君
オレも細かいところは色々気になってしまって、映画に上手く集中出来なかったのは正直あるぜ
モカ君
(さすがは空からちっちゃいミミズを見付けられるハヤブサ・・・)
スカイ君
ん?何か言ったか?
モカ君
あっ、いや何でもないよ!
ディテールへの気配りがある様で無く、オーバーな演出でコミック感が抜けない

ここは議論の余地ありだと思います。

ディテールへの気配りが全くない訳ではありません。例えば、アトランティス人が水中で声を発する時は微かに口元の水が波立っていますし、ある程度考えている事は伝わらなくもありません。しかし、ブラックマンタと初めて闘うシーンで明らかになる様にアクアマンは人間がかなり大きめの槍や刃物で突き刺しても引っ掻き傷一つ残せない強靭な肌を持っています。一方でイタリアで襲撃された時、アクアマンはいとも簡単に左肩をブラックマンタに貫通させられて大怪我を負います。岩山を粉々にしてしまうアトランティス王国最新鋭のプラズマ・レーザーを正面から食らっても身体に穴が空かないアクアマンが、ですよ。

スカイ君
それにこの小旅行で少し闘っただけで恋に落ちるメラとアーサーも何だかな・・・どうせそうなんだろうと思いながらも、ディズニー映画みたいな発展の仕方は喉に無理やり詰め込まれた感じだし、チープ過ぎたな

ブラックマンタのスーツで通常の何倍もの力が出るとしても、アクアマンを刺せるとは思えません。この時アクアマンは特段弱っている様子もありませんでしたし、とことん白けました。地上に長時間居ると、肌や肉体が弱る設定でもあったのでしょうか。ヒーローのピンチ感を出したくて30分前のシーンで同じ事されて微動だにしなかった事なんて忘れてるんだろうなと。ちなみに、このブラックマンターのスーツも結構姿形はコミックスに忠実でしたが、質感や動きはイマイチで仮面ライダーの怪人役やっていた人が中に居るのかなと思いました。少し幼稚な印象。


アクアマン映画
コミックスに忠実なデザインは評価点かも知れないが、どうしても拭えない子供向け仮面ライダーの怪人感


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

そう、全体的なCGiのクォリティが予算不足を疑わせるもので半アニメ映画だったのは私として残念。ファインディング・ニモとリトル・マーメイドの”アンダーザシー”のコラボかと思った、20年前のCGi技術で再現された太鼓を叩くタコ。笑わせに来ているのかマジなのか、良く分からない。特にヒーローがゴリマッチョなアクアマンのに、このアンバランスなふざけ感に戸惑いました。

それに、海洋生物学の専門家でも何でもありませんが子供のアーサーと水族館のシーンは強い違和感を覚えました。CGi魚のクォリティは本当にファインディング・ニモに毛が生えた程度だし、水族館にホオジロザメが展示されている時点で有り得ない。少し調べてみましたが、ホオジロザメは飼育が非常に難しく、展示している水族館は見付けられませんでした。過去に何度か試みた経緯はある様ですが、最長で6ヶ月程度飼育して死亡。しかしこのシーンで水槽のガラスに体当たりを繰り返しているのは、どう見てもホオジロザメ。それにワイドショットでは、水槽の奥に何頭もホオジロザメが居ます



アクアマン映画
どの時代か分からないが、現代の物語であればホオジロザメが何頭も水族館に展示されている事は考えづらい


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

しかも、サメは目元や鼻付近が敏感でウィークポイントなはず。それにも関わらず、全力でガラスに鼻から躊躇いなく突っ込んでいる姿は有り得なさすぎて滑稽極まりありませんでした。アクアマンが無理やりコントロールしているのだとしたら・・・間違いなくこのサメ大ダメージ食らっているぞ。可哀想だからやめてあげなよ。

その点はディテールに異常にこだわったピクサーのファインディング・ニモ以下の力の入れようですが(単純にピクサーが凄すぎるだけなのか)、海をテーマにするなら私としてはそれくらいしっかり調べて考えて実写化して欲しい。

そして設定も良く分からない。途中、ニュース番組が映るシーンからも分かる様にアトランティス王国の存在は世界からひた隠しにされていて、アクアマンの登場を持ってしても世間は半信半疑、どちらかと言うとアトランティス王国の存在を主張する者は揶揄されると言う設定。かと思えば、トレンチの妖怪から巨大なタツノオトシゴ、カラゼンを交えたラストの大戦も陽光が充分に射し込む海面近くで大暴れ。その前からも当たり前の様にコスチュームを着たまま海面近くに大勢で登場するアトランティス人を含む海底人たち。それにも関わらず地上でアトランティス王国が存在する証拠が全くなく、殆どの人が信じないとは到底思えません。隠す気あるの、無いの?どうでも良いの?


アクアマン映画
この後、用無しと断言して鍵になるアイテムを粉々にしてしまうメラ


出典:”Aquaman(2018) ©Warner Bros. Pictures”

まだあります。オーバーで不要な演出。例えば、サハラ砂漠でトライデントの在り処を示すホログラム機を起動してメッセージを聞いた後に、メラは敵の手に渡る事を危惧して鍵となるアイテムを粉々にしますが・・・本当にホログラムを起動する以外に使い道無いのでしょうか。そうだとしても、何故確信を持って粉々に出来るのか、謎です。後で必要になったらどうするつもりだったのか・・・まぁ、都合良く後で使う必要は無かった様ですが。

こうした不自然さと疑問が多過ぎてクォリティが高い映画とは言えませんでした。スーサイド・スクワッドやグリーン・ランタンに比べると幾分かマシですが、傑作と呼ぶには程遠いCGi、ストーリーが目立ちます。細かい事が全く気にならない、何でも良いからハイクォリティなコスプレを観たい、またはキャストのファンでも無い限りお勧めはできない『アクアマン』でした。


 この映画を観られるサイト

日本では劇場公開2月との事で動画配信サービスではまだ観られませんが、それまでは映画館で!お勧めできないとは言え、観るなら大スクリーンの方が幾分か楽しめるとは思います。

 まとめ

結論的に高評価される理由があまり分からない、平均点以下のヒーロー映画。キャストのパフォーマンスとポテンシャルが高いだけに、映画としての作りが諸々雑なせいで非常に勿体無い。”何故?”が止まらないある意味ミステリー映画。

アトランティス王国の真の王になるまでのアドベンチャーはアンバー・ハードとのちょっとした小旅行に近いですし、アクアマンことアーサーのキャラクターがどの様に成長して行くかは全くスポットライトに当たっておらず、イタリアの絶景を楽しんだ方が良い。チープな質感漂うコスチュームデザインと、ネタなのか本気なのか判断に困るCGiに戸惑います。

加えて細部にあまり気を配っていないのも大変残念で、面白いとは言えませんでした。ファンでないならお勧めはできません。

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