シュガー・ラッシュ
監督:リッチ・ムーア
出演:ジョン・C・ライリー、サラ・シルバーマン、ジャック・マクブライアー、ジェーン・リンチ他
言語:英語
リリース年:2012
評価:★★★★★★★★☆☆
~”トイ・ストーリー、シュレックのエッセンスをガッチャンコしたデジャヴな作品”~
~”ディズニーが送り続けるユニークなキャラクターたちはやっぱり魅力的”~
もくじ
あらすじ
ここはゲームの世界
アーケードゲームの”フィックス・イット・フィーリックス”で悪役を演じるラルフ
彼の悩みは悪役というだけで普段から他のキャラに煙たがられること
体も大きくて不器用だけど、本当は皆の仲間になりたい
そんな想いで他のキャラたちに接するも、何かと騒ぎを起こしてしまう
ラルフは自分がヒーローとして活躍できる他のゲームに忍び込むが・・・
ラルフはヒーローになって仲間たちに認めてもらえるのか?
彼のデジタルアドベンチャーが幕を開ける
レビュー
ユニークな世界観と可愛らしいキャラクターたち、”お、そういう事か”と素直に感じるひねりが利いた作品です。鑑賞後に考えてみると、二転三転する程のドンデン返し系ではないのでシャープにオチを考え続けてしまうと大体読めてしまうので純粋な気持ちで楽しむ事がお勧め。
如何せん子供向けの映画だしね。ツッコミどころを探そうと思えば探せますよってヤツ。
スピーディなレーシングシーンで派手に迎えるラストは、ある意味ありがちなパターン。人によっては、その辺りで冷めてしまうかも。ディズニー観ていたら、”はいはい、トゥルーラブね”って思うタイプの人だと、あまり楽しめないかも(メインストーリーに恋愛要素は一切ありませんが)
白雪姫、リトルマーメイド、美女と野獣、オチは大きく括ると全く一緒なんだけど、それぞれで楽しめる。”うん!”って思った人はシュガー・ラッシュをきっと楽しめるハズ。
出典:”Wreck It Ralph(2012) ©Walt Disney Animation Studios”
ただ、裏を返せばその”ありがち”さってストーリーやメッセージが分り易くて印象に残るなと改めて感じてて、やっぱりディズニーって凄いなと感じました。
ゲームの世界でキャラクターたちが、実は生きていてプレイしていない間に自由に過ごしていたら。スマホでもゲームが遊べる様になった昨今、そんな想像が脳裏をよぎった人はかなり多いハズ。
その一瞬の他愛なさそうな想像を膨らませた世界がシュガー・ラッシュ。
だけど”こんな事あったら良いな”とお花畑な世界を作り上げていないところが楽しい。別のゲーム内にキャラクターたちが行き来出来たり、自分のゲーム外で”死んだら、復活できない”など面白い設定も色々ある。
まぁ、細かい話、何でプログラムのゲームキャラが電源コードを伝ってあっちこっち行き来出来るんだ!みたいなツッコミは置いておいて、クリエイティブさが非常に活きた作品。
シュレックで”三匹の子豚”から”ピノキオ”までおとぎ話のキャラが夢の共演を果たし、笑わせてくれた様にシュガー・ラッシュでは様々なゲームキャラが共演。誰もが知るマリオのクッパやソニックなど、懐かしいキャラも満載。そう考えると、根は良いが厄介者扱いされてしまう悪役風の主人公にちょっと小うるさい相棒・・・この映画、明るいシュレックだ(笑)。
出典:”Wreck It Ralph(2012) ©Walt Disney Animation Studios”
でも、おとぎ話だと世界観まではそんなに大差がない。何となく、同じ”ディズニー映画”という魔法とメルヘンの世界で一緒にできてしまう。
でもゲームとなると、アクションゲーム、恋愛ゲーム、レーシング・ゲーム、レトロなインベーダーゲーム、ストリートファイターなどジャンルがもう360度違う世界が化学反応を起こして違うワールドが広がってくるという無限感が楽しいのかも。子供向けだから、GTAみたいなゲームは登場させられないんでしょうけどね。個人的には、そんなゲームも出して欲しかったりします。
ラルフが悪役なら、GTAで殺人したり盗んだフェラーリで街中ブォンブォン走り回ったり・・・その中にカービィとか居たら(笑)。カオスだ(笑)。
シュガー・ラッシュの魅力は、様々なゲームが作り出す世界観だけではありません。シュガー・ラッシュ、という名の通りお菓子をテーマにした架空のゲームで起こるストーリーがミソです。
ディズニーだけあってアメリカのスイーツが多く登場します。
日本語版だとこのお菓子系ジョークをどうしても違う風に翻訳せざるを得ず、クスッとした笑いが半減してしまうのが残念。
出典:”Wreck It Ralph(2012) ©Walt Disney Animation Studios”
例えば、一瞬登場するNesquik Sand(ネスクィック・サンド)。ネスクィック自体は、ご存知のNestle(ネスレ)が販売している商品でインスタントのチョコレート・ミルク。ただ、この”クィック”という部分を、Quick Sand(クィック・サンド=底なし沼、流砂)と掛け合わせてネタにしたジョークなんです。日本語吹き替えだと、単純に”底なし沼”と訳されちゃってる。
・・・っていう解説しちゃうと面白くなくなっちゃうパターン、これ。
似た様なアメリカンスイーツの名前をもじったジョークやネタが色々仕込んでありますが、英語でなくなるとどうやっても面白くなくなっちゃうのがシュガー・ラッシュの難点。映画が悪いワケじゃなくて、単に言語の壁の限界でしかありませんけどね。
ただ、全部そんなジョークというのではなく、ゲームの世界だけあって物理法則を無視した笑えるシーンはたくさんあります。レーシングカートにぶつかって勢い良くふっ飛ばされるとか。くだらないと思いつつ、いざ観ると大人でも”ンフッ”っていう変な笑いが漏れてしまうヤツ。
シュレックと同様、皆から”悪い奴”だと思われて厄介者扱いされる不器用な主人公が悩み、それに立ち向かうストーリー。”悪役だからって悪い奴じゃない”というコアのテーマは、らしく居る事、他人に自分というキャラクターのあり方を決めさせるな、的なメッセージを持ってそうだなと思うところ。
なのですが、様々な人の意見を見たり聞いたりする中でとても興味深い解説があったのでご紹介します。
出典:”Wreck It Ralph(2012) ©Walt Disney Animation Studios”
それは自閉症に纏わる映画だというもので、実際にある自閉症患者が書いたレビューにあった内容です。
自閉症患者はラルフ。彼はヒーローとそれを取り巻く”世間”からは隔離された存在で、そんな状態にフラストレーションを感じていますよね。重要なポイントは、”自分を変える”のではなくて”周りの見る目を変える”事がシュガー・ラッシュのストーリーであり、ラルフの目標であること。
私自身は経験が無いのであまり下手な事は言えませんが、自閉症患者の多くはどうやら似た状況にストレスや不満を感じる様なんです。自分の殻に閉じこもり、他の人と同じ様に行動しないから何かと変人扱いされる、白い眼で見られる。でも、自分が何か悪い事をしたのではないし、皆に嫌われる様な何かをしたわけでもない。ただ人と違うだけなのに。
ヴァネロペも同じで、メダルを奪った彼女を初めは恨めしく思っていたラルフもシュガー・ラッシュの世界で彼女が受けている扱いに気づいた瞬間から態度は一変します。ヴァネロペもラルフと同じ、違うゲームの世界で自閉状態にある似た者同士だった。そしてキャンディー大王は、自閉症を患った子供の典型的な親を表している様です。
出典:”Wreck It Ralph(2012) ©Walt Disney Animation Studios”
キャンディー大王はヴァネロペを世間(他のゲーマーやユーザーたち)から隠す事が、本人の為だと思っています。少なくとも、表面上の理由はそれです。でも本当はそれが彼らの幸せじゃない。
ヴァネロペも最後まで自分のバグを直す事もしないし、ラルフも悪役を引退してヒーローに転じたわけではありませんがハッピーなラストを迎えます。これが彼らが望んだ事、つまり世間が指を指して”欠点”だと指摘する”自分らしさ”を捨てたり変えるのではなく、世間が見る目を変えて受け入れてくれる事。
自分を思う様に見てくれなかったり、受け入れてくれないと分かっている部分があるから人に見せない側面て誰しもありますよね。共感をとても呼ぶテーマだと思いますが、こうした点から特に自閉症の方々に響く作品だった様です。個人的には、なるほどと思いました。
意外にも根深いテーマが隠れていたシュガー・ラッシュですが、冒頭で”凄いな”と思った理由を砕くときっとディズニーのこういうところ。子供も楽しめるし、大人も一緒に笑えるシーンがいっぱいありつつ、しっかりとしたテーマ性を持って分かる人には分かるメッセージがちゃんとある。
続編の公開も迫っている中、もう一度観ても楽しめる良作でした。
この映画を観られるサイト
シュガー・ラッシュが観られるのはこちら!
例によって無料体験期間を設けてますので、是非ご活用ください。合わなければ、全然解約すれば良いですしね。
まとめ
あるようで無かったゲームキャラたちのコラボ映画。と言っても、主人公は架空のゲームキャラですが誰もが知るソニックやパックマンなんかが同じ画面に紛れているだけで面白いし夢が広がる世界観がイイ。
シンプルなストーリーでありながら、随所に込められたメッセージやネタの秀逸さに大人も見入ってしまう作品で、デートにも家族の映画タイムにもお勧め。
明るい気分になりたい時にも打って付け!ヴァネロペのウザカワイさとラルフの純粋さを是非、楽しんでください。