朝起きると今までの記憶が・・・隣に居る男、私は、誰・・・?

リピーテッド


監督:ローワン・ジョフィ
出演:ニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング 他
言語:英語
リリース年:2014
評価★★★★★★☆☆☆☆




~”あくまで記憶喪失の発端となる事件を探るミステリー”~
~”ノーランのメメントに近しいが、主人公と同じく、記憶にはあまり残らない作品”~

 もくじ


 あらすじ


クリスティーンが朝目覚めると、そこは見覚えのない部屋
そして隣には見知らぬ男性が寝ていた
困惑する彼女に、ベンと名乗るその男性は説明を始める
クリスティーンは事故の後遺症で記憶障害を患い、
毎朝目覚める度に前日までの記憶を全て失ってしまうのだという
ベンは彼女の夫であり、自分の存在や結婚したことも忘れてしまう妻を
10年以上献身的に支えているのだった
しかし、何かがおかしい
断片的な記憶がゆっくりと導く驚愕の真実とは・・・


 レビュー

娯楽映画として頭を空にして観ればスリルと深まる謎を楽しめる作品。ですが、ミステリーにしては少し謎が浅い感じは否めない。

謎のスパイラルに目が離せなくて、最後の種明かしで爽快なスッキリ感が得られる様な傑作ミステリーではありません。

にも関わらず、大した事ない謎がしばらく尾を引いて映画が進行するので人によっては途中で飽きかねないのも想像できますが、私としては結末が知りたくてそれなりに楽しめた映画です。


ハンサムな男は夫、幸せな結婚生活を送っている様に見えるが・・・

出典:”Before I Go To Sleep(2014) ©20th Century Fox”

エンディングも急いでラップアップした感があり、総じて各シーンの時間配分が上手くない事が問題で現実味が薄いとは言え、ストーリー全体に大きな欠陥があるとは思いません。

スカイ君
ネタバレありだ!まだ観てない人は注意だ
クリスティーンの恐怖と混乱が身に沁みる

ありきたりかも知れませんが、非常に効果的なのが混乱の渦中にいる本人の目線からストーリーを語ること。

毎朝困惑するクリスティーンの”謎な状況”が彼女を通じて語られる事で、極力共感できる様に演出されている。メメントしかり、こうした記憶消失系では正攻法とも言えます。

それがまたミステリーとしての醍醐味でもあります。新しい情報が手に入る度に彼女と一緒に推理する必要があるけど、リピーテッドでは謎が非常に曖昧なのも楽しめる理由。密室殺人という不可解な現象が明確なら、どの様に密室を作ったのか、そしてそれが出来たのは誰だったのかという”解くべき謎”がハッキリしていて考え易い。


毎日、自分の過去を何とか探ろうとするクリスティーン

出典:”Before I Go To Sleep(2014) ©20th Century Fox”

が、この場合は”過去に何が会ったのか”という漠然とした謎があり、果たして悪者が居るのかどうかも分からない。謎が深まるが、解くべき謎は具体的に分からない。これをフラストレーションと感じるか、よりミステリアスに感じるかは人次第でしょう。

その点、かなり意見が分かれそうな映画だと思います。

毎朝起きた後にベンが彼女に記憶喪失について説明し、自己紹介するルーティンは分かりきっているけど、日々起こる出来事が違うので私は特に見飽きてしまう事はありませんでした。

記憶喪失し続ける主人公のキャラクターは飽きる

このミステリーの起点となっている記憶喪失のトレードオフとも言えるのが、クリスティーンというキャラクターがずっと人物として一本調子なこと。毎日記憶が消えてはキャラクターとして進歩のしようもなさそうだ。

だが、主人公という事も物語が彼女を通して語られる事もあって作中は常に彼女に付き合わなければならない。そこが一つ、映画としてつまらないと言われても仕方がないポイントかも知れません。

更に登場人物もそもそも少なく、所々夫のベンや主治医のナッシュが怪しく見えるがキャラクターとして興味深いと言える人物は居ないので面白くない。彼らはあくまでもストーリーを前進させるパズルピースを小出しに分け与えてくれる役割がメインで人柄や生い立ちはあまり物語に寄与せず、靄に包まれてエンディングを迎えます。


毎日”私は誰、ココはどこ”から始まる

出典:”Before I Go To Sleep(2014) ©20th Century Fox”

ただ、ニコール・キッドマンが演じるクリスティーンを始め、コリン・ファースのベンも演技は間違いなく見処です。クリスティーンの怯えた表情や言動からはこちらも心臓が脈打つのを感じるくらいだし、ベンが急に態度を翻して優しい夫から甘いマスクを被ったサイコパスに変貌する瞬間は、その表情に寒気が走ります。

ファースが辛抱強く誠実なイケメン旦那と気性が荒々しい冷徹なサイコパスを代わる代わる演じているのは本当に見事で、どちらが真のキャラクターなのか分からなくなる程。

ハリウッドでもトップと言える役者らしく、ある意味でキャストの実力が活きたと言えます。救いきれているか、は議論の余地があるとは思いますが。より難易度と不可解さが際立つミステリーを求めている方には物足りない上、キャラクターも言ってしまえば浅いので不満が出かねないのも理解できます。

ワンタイムなエンタメ性に留まる事も否めない

総じて”誰がどの様な理由で何をクリスティーンにしたのか”を漁る、いわば外在的な謎を探求するミステリーに徹しており、それぞれのキャラクターの内在的なミステリーは一切ない。クリスティーンに降り掛かった災難の発端もまた短絡的で、つまらない。ベンとの不倫がもたらした不幸。この不倫も共感を得られる様な描写や、経緯は殆どなく”あぁ、よくあるヤツね”で包められてしまい、インパクトもない。

そのせいで、ラスト15分程で明かされる外在的な謎のアンサーを得てした時点で、私たち観ている者にとっては映画が終わったも同然です。その後に起こる事は殆どどうでも良く、更に言ってしまえばベンが怪しいと気づいた時点で残りのストーリーは冗長になってしまうでしょう。


犯人が分かったら、そこで物語は終わったも同然

出典:”Before I Go To Sleep(2014) ©20th Century Fox”

クリスティーンが無事、ベンから逃げられるのかというサスペンスを与える様なストーリーの進め方をした訳でもなければ、ラストも大してサスペンスを喚起する様な描写にそもそもなっていない。

私は頭を殆ど空にして映画を観ていたのでそれなりに楽しめたクチですが、心理学、殊に記憶喪失に関する知識を持っている方やそれなりに勘や推理力が働く方なら尚の事、映画のラストはかなり早く読めてしまうのではと考えます。

その為、一時の楽しみとしてはそれなりですが印象に強烈に残る様な作品ではない。クリスティーンの様に朝起きたら忘れてしまうでしょうね。


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 まとめ

キャストの素晴らしい演技力はさすがと言ったところで、映画の大事なエッセンスを司っていますがそれだけでは傑作に届かない作品。ミステリーとしても割と浅く、良くも悪くもさーっと観て終われてしまいます。

要所で手に汗握る瞬間はありつつも、全体として印象に残る様な作品でもないが思考しなければそれなりに楽しめます。考え始めるとシャープな人や勘が良い人は大体結末が読めてしまう。

”記憶喪失になった理由”という外在的なミステリーを探る映画でしかないので、結末が読めた時点でそれ以上観る理由が殆どなくなってしまいます。ミステリー通にはお勧めしませんが、それなりの、難しくないミステリーを楽しみたい方は一応一見の価値はあるかも。

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