インクレディブル・ファミリー
監督:ブラッド・バード
出演:ホリー・ハンター、クレイグ・T・ネルソン、サミュエル・L・ジャクソン 他
言語:英語
リリース年:2018
評価:★★★★★★★★★☆
~”14年越しの続編は期待値超え!いやはや前作を超えたかも、エクセレンテ!”~
~”ヴィランもストーリーもユニーク、そして何よりジャック=ジャックが好き過ぎる”~
もくじ
あらすじ
スーパーヒーローの活動が違法になった世界
スーパーパワーを持ったパー一家はそんな世の中にもどかしさを感じていた
そんな中、通信会社を経営するウィンストン・デヴァーに声を掛けられる
“もう一度、スーパーヒーローを合法にしないか”と
ヒーローの目線で闘いを世に発信する事で、彼らの活動の真意を伝えようと持ちかけるウィンストン
彼の妹、イヴリンと共にヒーローの合法化に向けて動きだすがそこに現れた謎の男”スクリーン・スレイヴァー”
彼はスクリーンを介して催眠術を施し、行動を支配して危険な事件を起こす
スクリーン・スレイヴァーの正体を暴くべく、闘い始めるパー一家だがー
レビュー
第一作がヒットした手前、続編の方が楽しい映画なんて珍しいと思いますがインクレディブル・ファミリーはそんな珍現象。あらゆる観点から見て、とてもよく出来ている映画でした。
インクレディブル・ファミリーは”Mr.インクレディブル”のラストで続編を匂わせたシーンから始まります。シンドロームの野望を打ち砕いたパー一家ですが、突如街中に現れたアンダーマイナーとの闘いから幕を開けます。ドラマティックで身が入る音楽とともに、派手なアクションシーンが思い切り楽しませてくれます。トンネルでも掘れそうな、暴走したアンダーマイナーのドリルタンクをMr.インクレディブル、イラスティガール、ヴァイオレット、ダッシュ、フロゾンがそれぞれの力を活かして止める場面は何度観ても楽しい。
止められるかどうか、で言うと”止まるんでしょ”なんですけど何が楽しいかってアベンジャーズの様に各ヒーローの特性を活かした闘いが観られる事。ハイスピードで展開する事態に目が離せません。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
そして単純に上手く出来たアクションとカメラワークに留まらず、伝えたい事もちゃんとあります。X-メンしかり、ヒーロー映画ではLGBTの様に”普通と違うから差別されること”を批判する事が多いのですが、インクレディブル・ファミリーではフェミニズムが主張します。
イラスティガールが主役を飾る運びになる事からも明らかですが、台詞の端々からも良く分かります。オープニングでヴァイオレットの正体を知ってしまった少年、トニー・ライディンジャーが記憶を消去される前に事情聴取されますが、そこでの発言が分かり易い例の一つ。
ヴァイオレットがスーパーヒーローだと分かって、”別に強い女性が嫌なわけじゃないんだ、自分の男らしさには自信がない事もないし”という一言。アニメの世界から出て現世に戻っても、現世でも時折物議を醸すテーマですよね。あるべきは”平等”であって”優位”じゃないはず。
実は、職場の同僚が“ピンピンしてるけど生理休暇使えば遊べるじゃん?どれだけ上司でも、男なら生理ですって言っとけば口出せないからイイよ”って言っていてもやもやしたタイミングでこの映画を観たので、個人的にこのテーマがより引っ掛かってるってのはあります。その考え方って”平等”なのかな。
休暇取る分、与えられた仕事をしっかり終えられるなら、寧ろ喜んで休ませたいけど仕事残していたり品質悪いのに、“女性”と言う事を使う人間は、一生責任ある仕事は出来ないんだろうなと。本当に優秀で頑張る女性の邪魔をしている人間は、頭のカタい差別的な男性だけではなく、女性側にも居る事を痛感。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
少し深入りし過ぎてしまいましたが、しっかり男性側にも”子育て”と言うヒーローな役割を与えているので全然良いと思います。Mr.インクレディブルだって立派に3人もの子供を育ててますからね。
いずれにしても、イラスティガールの活躍は観ていて非常に楽しい!けどそれを超えるエンターテイナーが、何を隠そうまだ赤ん坊のジャック=ジャックでした。
炎を纏い、分身、目からレーザー、テレキネシス、テレポート、巨大化。ジャック=ジャックのスーパーパワーはこれだけに留まりません。
まだオムツはとれないけどね。
前作を超越する楽しさを与えてくれるインクレディブル・ファミリーのエッセンスは、次から次へと発現するジャック=ジャックのパワーにあります。最初にパワーを見せてくれる場面など、インクレディブル・ファミリーのベストシーンと言っても過言ではありません。予告編にもあった、アライグマと闘う(ケンカ?)するシーンです。
めっちゃ笑える(笑)。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
クスクスからブフォな笑いまで全部詰め込まれたシーンです。まだ言葉もおぼつかない赤ん坊のジャック=ジャックが全身に炎を纏って”あじゃぷぎゃー!”と叫びながらアライグマとケンカしている(笑)。
そして図らずも、ジャック=ジャックが相手取るのはアライグマだけではなくて肝心のラストでもしっかりと活躍してくれます。イラスティガールがスクリーン・スレイヴァーのマインドコントロールから解放されたのもジャック=ジャックのテレキネシスのお陰ですし。これも笑っちゃうのが、闘うつもりがなくてただクッキーが食べたいから機嫌を損ねているだけなのに、ジャック=ジャックが凄過ぎて周りがそれに翻弄されまくるところ。悪役も機嫌を損ねただけの赤ん坊にやられてる(笑)。
マインドコントロールされたヒーローたちが、巨大化したジャック=ジャックのお尻の下敷きになったシーンとか笑わずにいられない。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
何が良いかって、誰にでも分かるギャグなんですよね。言葉遊びの様なジョークよりも、スクリーンを観ていれば伝わるコミカルな映像に爆笑出来るというシンプルなジョークの連続。
そのシンプルさは映画全体にも言える事で、各シーンのスムーズな繋がりと調和が素晴らしい。
オープニングからエンドクレジットまでが一本の繋がりになっているのは映画なら当たり前の様で、意外と見ないもの。
家族で楽しめるキッズ・フレンドリーなコメディをシーンの間にねじ込む事が多く、どうしてもストーリーとしての流れを要所で止めてしまい、違和感を憶える事も多いです。
インクレディブル・ファミリーはコメディ面もしっかりしつつ、ストーリーとしてのフローも滑らかでシーンが”分断”されていない。長引き過ぎない程度の笑いを入れて真剣なシーンやアクションシーンの意味合いを損なわない様にちゃんと設計されています。パー一家が2週間以内に職に就かないと路頭に迷う事になってしまう、というシリアスなシーンに笑いやアクションを引きずらない。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
これだけコンテンツフルでありながら、グチャグチャにならないのが凄い。
何より、全体としてアクションシーンも多いしどんなシーンでもしっかりストーリーの進行をプッシュする”意味のある”場面であり、さながらファミリー、アクション、コメディの間をシームレスに行き来する構成と撮り方が上手い。
先程のジャック=ジャックで楽しませてくれるコメディも”頑張っちゃってる感”が全然ないからこそ尚面白い。それはどのシーンにも、結果的にこの映画全体にも言える事で、映像とストーリーに自然と集中できる凄く良い作品に仕上がっています。
インクレディブル・ファミリーにはピクサーのお得意なイースターエッグやクレバーなヒントが散りばめられていますが、それはそれで一本の記事が書けちゃうくらいのボリュームなので別の機会に。
ですが、その中でも今回の悪役スクリーン・スレイヴァー(イヴルン・デヴァー)の正体はある事に注目するとすぐ分かっちゃうネタが。
一番気付き易いのは、名前。イヴリン・デヴァー(Evelyn Deavour)を繋げて読むと、イヴリンデヴァーとなり、イーヴル・エンデヴァー(Evil Endeavor)つまり“邪悪な行い”を意味するフレーズになります。日本語だとちょっと無理やりに聞こえるかも知れませんが、英字にして読むと割と明らかにEvil Endeavorをベースにした名前なんだろうなと。
よりイースターエッグに近いポイントとしては、イヴリンのイヤリング。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
このイヤリングは良く見ると、後でスクリーン・スレイヴァーの不気味な隠れ家にイラスティガールが侵入した時に画面に映っていたあるものと一緒なんです。
このシーンには他にも隠された小ネタが入っていますが、イヤリングのデザインはこのポスターに描いてある目の中にグルグルがある絵そのものですね。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
二回観て気付いたのはこのくらいですが、やっぱり感心するのはこうしたディテールへの力の入れよう。さすがピクサー。ちなみに、スクリーン・スレイヴァーの隠れ家に侵入するシーンは結構気味が悪くて一人で観ている時はちょっと緊張しました(笑)。スクリーン・スレイヴァーのマスクも結構無表情でガイコツの様な気持ちの悪さを持っています。
このスクリーン・スレイヴァー、その名の通りスクリーンを介して人をスレイヴ(奴隷)化する悪役ですが、このヴィラン設定にもバード監督の意図を感じます。
スクリーン・スレイヴァーの登場は、“映画、そして世界を楽しんで欲しい”というメッセージだと感じました。
“お前たちはトークするんじゃない、トークショーを観る。どんな体験もスクリーンを通じてソファーから腰を上げないお前たちの足元まで送り届けられる必要があり、それをお前たちは体験する事だと思っている”
あるシーンで、スクリーン・スレイヴァーはこう言って挑発します。これでは目にスクリーンを糊付けした我々に何らかの恨みを持っていそうですが、黒幕のイヴリンにはそんな動機は無さそう。彼女はあくまで、ヒーローに頼ってしまう事で一般人がいつまでも弱い者扱いされ、自力で立ち上がれない事に怒りを憶えている様でした。ヒーローの存在こそが、自分たちを弱くしていると。
つまり、このヴィラン設定はバード監督が意図的に仕組んだもので、明らかに寝る時以外にスマホを手放せない今時の人間に対するメッセージなのです。
スクリーンを手放して世界を楽しめと。
出典:”Incredibles 2(2018) ©Pixar Animation Studios”
個人的には、エンドクレジット上映中に隣でインスタやってた女性に映画が終わるまでスマホを出すんじゃねぇと言いたかったのですが(笑)。
皆さんもこの映画を観る時はスマホやタブレットを置いて、インクレディブルな一家のアクションでフルパックな最上級エンターテインメントをとことん頼む事をお勧めします。
前作を観た人でも、そうでない人でも楽しめるファミリー映画、是非観て頂きたいと思います。
この映画を観られるサイト
公開されて間もないインクレディブル・ファミリーですが、早速U-NEXTでは配信しています。アクション映画で手腕をふるうバード監督の作品なので、是非高画質で!
月額、たったの2千円で洋画6,500本が見放題でアダルト作品まであります。2日に一本缶コーヒー買うのと同じ程度の出費、しかも毎月1200ポイント付与されるから課金しないと観られない最新映画も実質、月2本まで無料で観られる!これまで紹介させて頂いている映画の殆どを取り扱っているので、ご検討ください!
まとめ
前作が好きなら、確実に楽しいインクレディブル・ファミリー。
いや、そうでなくても絶対に楽しい!大人も子供も幅広くエンジョイ出来る良作なファミリー映画。
親世代なら子育てのシーンなど共感しつつも、スーパーベイビーが巻き起こす波乱に富んだ場面の数々に子供と一緒に大笑いできます。イラスティガールのアクションはピクサーの美しいアニメーションもあって、”おおっ”と声があがる様なエンターテインメントですので是非!ラストにヒーロー勢揃いで見せてくれるアクションも見逃せません。