インセプション
監督:クリストファー・ノーラン
出演: レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディ、キリアン・マーフィー 他
言語:英語
リリース年:2010
評価:★★★★★★★★☆☆
~”街と一緒に観客の脳みそも曲がったり畳まれたり!考えすぎると脳がオーバーロードするかもしれない、クレイジーで斬新なエンターテインメント”~
もくじ
あらすじ
コブとアーサーは人の「無意識」に侵入できる軍の技術を用いて機密情報などを盗みだす産業諜報員
だが日本人実業家のサイトウは盗み出すのではなく、アイディアを植え付ける”インセプション”を依頼
サイトウの競合相手モーリス・フィッシャーが経営するエネルギー関連企業を倒壊が狙いだった
即ちフィッシャーの息子で後継者であるロバートに企業の解体をインセプションすること
しかし盗み出す事と違って考えを”植え付けられた”事に気付かれない為には何層もの無意識に侵入する必要があり、抜け出せなくなる危険があった
コブは仲間を引き連れて任務にあたるが、彼にはある秘密があった・・・
レビュー
難しいながらも楽しめた映画。実によく出来ています。
正直、相当構えてないと一度でインセプションの真髄には辿り着けないと思いますが、普通に見ていても007を思わせるアクションシーンもあり、充分に楽しめるはず。
ノーラン監督が得意とする”時間”の使い方に惑わされながらも、大筋のストーリーは見失う事なくエンジョイできます。
ですが、悪く言えばいわゆるストーリー全てが”夢オチでした、タンタン♪”で片付けられる代物。インセプションでは唸る様なドンデン返しはないので、そこは期待しない方が良いかな。目を細めて頭は回転させて、“どうなっている?”を探り続ける映画です。
出典:”Inception(2010) ©Warner Bros. Pictures”
どんなストーリーテラーも聞き手に求める事は、その想像力と発想に夢中になってもらうこと。インセプションを楽しむポイントはまさに、ノーラン監督の自由な発想です。
ノーラン監督は映画界のマジシャンであり、鑑賞者を煙に巻くのが大得意。
“インセプションは可能なのか?”はあくまでも映画を観る前に抱く疑問で、観た後はそんな事よりも気になって仕方ない事が山積みになるはずです。そしてその答えは誰も知らない。イルミナティよりもインセプションに対する仮説の方がたくさんできそう。
“インセプションは何の話だったのか”、”コブは自分の子供たちと遂に会う事ができたのか”、そして・・・・
“これは全てコブに対するインセプションなのではないか”
深読みや面倒な批評は一旦忘れると、映画のそのものは夏休みに丁度良いSFブロックバスター。
危険なミッションに繰り出す企業スパイたちの映画、それだけで何だか楽しそうじゃないですか。何となく友達を誘って週末にでも観に行く様な。
でもどうせ素人にはどうやったのかも、現実的なのかも分からないセキュリティシステムのハッキングから侵入まで見せられても、正直感動も薄いし”カッケェ”感もない。
映画に良く出る天才ハッカーね、的な扱いしか受けないし。
出典:”Inception(2010) ©Warner Bros. Pictures”
インセプションはその辺をちゃぶ台返しして”だったらいっそ、SFにしようぜ”と潔く舵を切りつつも、しっかりとした秩序に基づく世界観を創り上げます。
ハッキングはハッキングですが”世界一強固な大企業のセキュリティシステム”じゃなくて、“誰かの意識の中”にする事で”どうやるの?”感は殆どなくなります。”これは突っ込むトコじゃないな、一旦”という感じ。セキュリティシステムと違ってSFですからね。SFを観る気で構えるのか、インテリ犯罪集団によるイケイケなカジノ強盗を観る気で構えるのかで期待するロジックってかなり違いますからね。
そのコンセプトのもと、展開される”夢の中”のオーシャンズ11は見事なカメラワークに目を見開く様な特殊効果が加わったエンタメ。夢や記憶をテーマにした作品も多いですし(同ノーラン監督のメメントなど名作として有名)、イメージとして挙げたオーシャンズ映画の様なクライム・アクション映画も少なくありませんが、ガッチャンコしたのがインセプション。
結果で眼にも脳にも楽しいひねりが利いたユニークな作品に仕上がっています。
基本的な起承転結で構成された映画ではないので、ストーリーに付いて行くのはどうしても難しくなります。
主人公にスポットライトがあたり、彼や彼女がどんな人物かを知り、ある事がきっかけで物語が始まる、という構成なら分かり易いわけですが。オープニングは既に現実離れした世界で何やら任務遂行中に窮地に陥っているらしいシーンから始まります。
トム・クルーズの”ミッション:インポッシブル3″みたいな感じ。
いきなり主人公が追い詰められて仲間が撃たれるという強烈なシーンで鑑賞者を引き付けた後に”48時間前”あたりに戻って話が始まるアプローチはありますが、インセプションはそのままストーリーが進みます。
出典:”Inception(2010) ©Warner Bros. Pictures”
しかも時間の流れが変わったり、現実と夢の中を何の予告もなく行ったり来たりするので”今はどっちだ”と意識し続けないと訳が分からなくなります。
中でも辛いとしたら、ルール説明を聞かないといけないこと。
インセプションに乗り出すチームにリクルートされた新人のアリアドネが我々の代わりに色々な疑問を投げかけてコブに応えてもらいますが、ちょっとテレビショッピングを観ている感じ。”この商品は、どんな風に使うんですかー?”とそれらしく問いかける女性キャストに”これは優れものでしてね!”と嬉々としてデモンストレーションを始めるジャパネットたかたさん。
“夢の中で撃たれたらどうなるの?相手が起きたら?起こさない様にするには?何で夢の中に登場する人は私を攻撃しようとするの?”に一つ一つ応えてくれる、たかたさん。じゃない、ディカプリオのコブさん。
出典:”Inception(2010) ©Warner Bros. Pictures”
と言う様にその説明に使う時間があまりに多いので、インセプションではなく”エクスポジション(解説)”と揶揄された程ですが個人的には気になりませんでした。その点、面倒臭がりにはあまりお勧めできませんね。
幼い頃からその天才的な才能でもてはやされてきたレオナルド・ディカプリオ。
インセプションでは、主人公としての役割以上に彼が全てを握っています。メインストーリーはインセプションを成功させる事ですが、サブに留まらない彼のこれからの人生も気になって仕方がない。
ハッピーエンドかどうかは彼にかかっているというか。
インセプションの依頼主、日本の富豪で権力者サイトウは任務を成功させればコブを子供たちに会わせてやると持ちかけます。コブは自殺した妻に殺人の濡れ衣を着せられ、本国のアメリカから逃亡状態にあり、子供たちと離れざるを得なかった。
妻が自殺に至る経緯も痛々しい。失意と後悔に苛まれ、今も彼の夢には妻が登場する程。夢も現実も傷だらけのコブにとって、せめてもの幸せは幼い子供たちに会える様になる事なのです。
出典:”Inception(2010) ©Warner Bros. Pictures”
登場人物が多い映画ですが、感情に訴えかけて“負けないでくれ”と思わせてくれるのはコブだけです。他のキャラクターも味がそれぞれありますが、好きか嫌いか程度のもの。
演じるディカプリオも役者としての演技がどうというより、物凄く自然体で本人役かと思う様なパフォーマンス。だからこそコブという人キャラクターに気持ちが入るし、彼の物語のハッピーエンドが待っている様に応援する気持ちにもなります。インセプションのコンセプトが意味不明でも、夢か現実か混乱していても取り敢えずコブという人間の行く末は気になるのでこれはディカプリオが魅せてくれるパワフルなパフォーマンスの賜物。
体育でプールに入った後の数学の授業並にかったるいインセプションのルール説明も、物語の行く末が気になるなら必死になって聞くはず。インセプションとコブのストーリーをフュージョンさせたスマートな構成でもあります。
ノーラン監督が詰め込んだコンテンツを全て一度に楽しむのは大変な映画ですが、監督が10年掛けで制作した映画だというのも納得なクォリティ。とは言え小難しく捉えずに肩の力抜いて鑑賞しても楽しい映画なのは既に述べた通りなので、見逃しているなら勿体ない!
同じ日に二回観ると疲れるけど、絶対また観たくなるインセプションでした。
この映画を観られるサイト
せっかくスマホからも観られる優れモノな動画配信サービスですが、インセプションのハンパないビジュアルを楽しむ為にも是非大型テレビで。せめて超画質良いスマホで観るのがお勧め!Xperiaユーザーには朗報でしょうか。(iPhoneも最近は画質良いらしいですが)
いつでもどこでもドラマから映画まで観られるサービスなので、インセプションをきっかけに無料体験してみてください!1ヶ月ほど無料なので、その間にハマる作品を探してみてください!
まとめ
ビジュアルのスペクタクルは勿論、主人公コブの行く末も気になって観入った作品。ノーラン監督の作品の中ではダークナイトに次いで気に入った映画です。
考えれば考える程ノーラン監督がしかけた謎にハマって行く楽しさもエンジョイポインツの一つ。物語も良く出来ていますし、奥深さは何となくでも感じる作品ですので、アクションは好きだけどひたすらビルが爆発しているだけのスッカスカ映画は嫌だなぁ、という方にピッタリ。
是非ノーランマジックをご堪能あれ。