『アイ・イン・ザ・スカイ』ドローン戦争は本当に犠牲を生まないのか

 

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場


監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヘレン・ミレン、アラン・リックマン 他
言語:英語
リリース年:2015
評価★★★★★★★★★☆


~”静かな緊迫がゆっくりと迫る、目を離せないサスペンス”~
~”技術が進歩した新しい戦争が生む犠牲とは”~

 もくじ


 あらすじ


英国軍の諜報機関に所属するキャサリン・パウエル大佐は国防副参謀長のベンソン中将と協力し、ドローンを駆使してナイロビ上空からテロリストに対する合同捕獲作戦を指揮
ドローンと現地スパイによる偵察でテロリストが今まさに自爆テロを決行しようとしている事が発覚
状況の急転を受けて捕獲ではなくテロリストへのミサイル攻撃を決定
しかし攻撃目標の隠れ家付近で現地住民の少女アリアがパンを売り始める
予期せぬ民間人の巻き添え被害の可能性が発生し、司令部は巻き添え被害による少女の死亡率50%以下の目標地点を選定して攻撃を指示するが・・・
戦争とは、命とは
ドローンによる現代戦争の実態を描いた軍事サスペンス映画。


 レビュー

内容を思い返すだけでも苦しく、切なくなる映画。映画という立ち位置で考えると、ストーリーも分かり易くてサスペンスも程良いペースで与えてくれるので非常に楽しめる一本。

鑑賞中は食い入る様に展望に目を見張り、観終わったら考えさせられる、そんな映画。

その内容たるや・・・胸を締め付けられる思いでいっぱいです。


一刻を争う中、関係者が下した重大な決断とは

その一方で観た後はどこまでが映画で、どこまでが本当なのかと考えざるを得ませんでした。本当に英米のやり方、考え方は描かれている通り極端に違うのか(どんだけ上位者に責任転嫁するんだ)。軍事サスペンス映画だけあって、より鑑賞者の感情に訴えかける描写がある事は間違いありませんが、事実に基づくドキュメンタリーの方が実はインパクトがあったのではないか、とも思います。

重厚な緊張感に迫られる

映画の性質上致し方ないのかも知れませんが、ドローンによる現代戦争の”実態”を描いた映画というとちょっと違うかも知れません。冒頭に述べた通り、どこまでが実態でどこまでが鑑賞者のエンターテインメントの為に色付けされた脚色なのか判別できないからです。ただ言えるのは、脚色だったとしたら実に見事に楽しませてくれたという事。

自爆を目論むテロリストの隠れ家を特定するが・・・

私としては、本作に実態の透明性を求めているわけではなかったからここまで楽しめたかも知れません(過去事例を忠実に再現した内容を期待している人なら★はもう一つ少ない評価になるかも)。

 

ヘレン・ミレンが扮するパウエル大佐の重く、威厳のある雰囲気には引き込まれ易く、彼女のお陰でドローンを操縦するワッツ中尉やベンソン副参謀長の想いも理解し易かったです。

 

彼らは捕獲作戦を遂行するチームの一員で、想いは皆一緒のはず。ミレンの素晴らしい演技がその想いを代弁してくれていて、その後各々が何を優先すべきか葛藤する様子も始めに鑑賞者が彼ら全員に共通する想いをしっかり理解できたからこそ共感できるのではないかと思います。

 

鑑賞者も巻き込まれる新しい戦争映画

もう一つは、ドローンが『アイ・イン・ザ・スカイ』のテーマになっている事がミソだったのかとも。

何故なら、実際にミサイルの発射トリガーに手をかけているワッツ中尉もカメラが捉えた映像を映し出すスクリーンを見ているだけ。


無人ドローンによる殲滅作戦は罪なき人々を巻き込まずに済むのか

実際は遠く離れた米国で手を汚さずに戦場の様子を見ているに過ぎないのです。これがよくある戦争映画(戦場で叫び、殺し、死んでいく兵士たちが派手に銃器や爆弾を撃ち合う様な)との決定的な違いで、戦場をリードしている彼らと、映画館のイスに座ってポップコーンを頬張っている我々とで状況に大きな変わりはないんですね。

 

すると、より彼らと一緒に考え易くなります。我々も手許にマシンガンを持っているわけでもなく、暗く、スクリーンに囲まれた静かな空間で映し出された映像を観ているだけだが、自分ならどうするか。どうすべきか。

 

傍観者ではなく、一部、映画で次から次へと巻き起こる緊急事態の当事者であるかの様な錯覚に陥ります。

 

これがドキュメンタリーだったら相当上手く仕上げないと中々体感できない、映画ならではの良いところだと思いました。

飛んでくるのは銃弾ではなく、貴方ならどうする?いや、人としてどうすべき?軍人なら?守るべきは誰なのか?民間人の少女一人を殺してでも数百人の命を自爆テロから守る事が正義か?自分の道徳や倫理観、価値観が試される問い掛け。それをモロに受けて「うーん・・・」と悩むところが好きでした。

ニュースで見る戦場の裏側を覗いて感傷に浸る

ミレンのパフォーマンスについては既に褒め称えましたが、勿論、スネイプ先生でお馴染みのアラン・リックマンにもブラボーの一声を。

リックマンの遺作になってしまった本作ですが、私として誇るべき作品になったのではないかと感じています。何より最後に彼が吐き捨てた一言。



アリアを結果的に巻き込んだ攻撃作戦の実行を目の当たりにした女性政治家がリックマン扮するベンソン副参謀長を批判しますが、「安全な部屋でコーヒーとビスケットを食べながら」決断を下す事ができる人間が兵士に戦争の代償を語るなと一蹴します。気持ち良い(笑)。と言う一方で、我々にも言える事だなと。メディアが報じる事実の一端を自宅のテレビやスマホで見てはあーだこーだと批判するのは自分も一緒だなぁと思いました。だからと言ってどうしようもないのですが。

でもやっぱり何よりも、最後にアリアが巻き込まれてしまうシーンは観ていられませんでした。

撃った中尉、それを指示した上官たち、映像越しに観ている関係者、アリアの両親・・・各々の想いはありつつも、きっと全員拭いきれていない「なぜ?」という誰も応えられない疑問。とにかく切なく、悲しい。</p<

単純かも知れませんが、こう映像でストーリー立てて見せられると本当に起こった戦争の犠牲者、社会教科書にたまに出てくる白黒写真に隠された物語からテレビで”死亡者20名”の一言で纏められる事実に、どんなに人の想いが絡んでたのか・・・ザックリと心に刺さりました。


 この映画を観られるサイト

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 まとめ

是非一度は観て頂きたい映画。アクションパックで派手なスリルはありませんが、事態が二転、三転していって掌がゆっくりと汗ばんでいき、目が離せません。スリルとサスペンスは満点のドローン戦争映画。映画好きなら、ジャンルを超えて楽しめるハズなので、一人で落ち着いて観るのにもお勧めです。

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