もくじ
日本人が特に苦手な冠詞
さて、最近SNSで良く見る”日本語の下に英語で書いてます”な投稿。
イイこと書いてるんだけどね・・・
良く見るのが、AとAnとTheの使い方をミスっていてせっかくの”英語留学した成果をみせてやるぜ!”の魂胆が勿体無いことに。
それ以外は特に目立つミスがないのですが、とにかくこの辺のミスが多い!
と言う事で、今回は使い分けの考え方についてご紹介します。
(クイックな纏めは以下の通り)
先ず、”複数形”と”単数形”から。
ご存知の通り、英語には数えられるモノ(可算)と数えられないモノ(不可算)の仕分けがありますね。
例えば、水などの液体や空気など一定の容量を持った容器などに収めない限り”一つ、二つ・・・”と数える事はできませんよね。
一方で、車や人など日本語でも”一台、二台・・・”や”一人、二人・・・”などと誰もが分かる様に数えられるモノがあります。
数えられるモノには、名詞の後ろにsを付ける事が原則可能ですので”車”であればCarとsを足してCarsですね。
”人”の様にPersonにsを足すのではなく、Peopleと変化する名詞もありますので要注意。
(Personsとする場合もあるのですが、こちらは話が逸れてしまうので一旦置いておきます)
AとAnは必ず”単数形”の前に着き、Theは”単数形にも複数形にも”着くと先ず覚えましょう。
でもまだこれだけでは、使い分け方はしっくり来ませんね。
では、AとAnの使い分け方にフォーカスしてみます。
違いは、名詞の発音がa,e,i,o,u(母音)のいずれかから始まるか否か、それだけです。
”発音”と強調した点に注目してください。
そうです、綴ではなくて”音”が関係しています。
An owl.
フクロウを意味するOwl(アウル)ですが、こちらは簡単ですね。
カタカナ表記で表した通り、アから発音する単語ですので、単数形、つまり一羽のフクロウを指す場合はAn owlです。
では、次の場合は如何でしょうか。
An hour.
hourは”時刻”や”1時間”という意味を持ちますが、こちらの例では”1時間”を指しています。
綴はhから始まるのにAnが着いている理由は、発音が”ハワー”ではなくて”アワー”、先程のOwlと一緒でアから発音する単語だからです。
最後に少しトリッキーな例をお教えしましょう。
A year.
”一年”を意味するA yearですが、もしかしてヘンだと思いましたか?
だって、year(イアー)でイから発音している単語じゃん、An yearでしょ!ってな抗議が聞こえてきそうです。
これはたまにある勘違いで、YearとEar(耳)の発音が同じだと思うと混乱するポイント。
そう、カタカナでは”イ”が最も実際の発音に近いだけで、実はyの音がしっかり入っていてEarとは発音が異なります。
Yearの発音が日本語に存在するとすると、あ行ではなくてや行になるかな。
と言った具合で単数形の中でもAとAnはしっかり使い分けましょう。
ここが本題で、多くの方が間違えるところ。
例を使って違いを掴んでみましょう。
例えば、ガイ・ピアースの名演技が光る映画メメントのラストシーン。
妻を強姦、殺害された事件が原因となり10分間で記憶がなくなる男、レナードが殺人犯を追う本作。
手がかりを忘れない様に身体に入れ墨をしてまで犯人を追うレナード。
そんな彼を手助けしてくれる謎の男、テディ。
二人は、犯人の名前がジョン・Gである事まで突き止めるが、ラストでテディはレナードの記憶障害を利用して彼が次々とジョン・Gを殺害していく事を助けていただけと告白されます。
Teddy: Look at your police file. It was complete when I gave it to you.
Who took the 12 pages out?
Leonard: You, probably.
Teddy: No, it wasn’t me. See, you took them out.
Leonard: Why would I do that?
Teddy: To set yourself a puzzle you won’t ever solve.
You know how many towns, how many John Gs or James Gs, I mean Shit,
Leonard, I’m a fucking John G.
Leonard: Your name’s Teddy.
Teddy: My mother calls me Teddy. I’m John Edward Gammell.
妻殺害の警察事件簿から抜けている12ページはレナード自身が取り除き、
殺害犯を追い続けるという生きる理由を失わない様にしていたからと打ち明けられるレナード。
You know how many towns, how many John Gs or James Gs, I mean Shit, Leonard, I’m a fucking John G.
(ジョン・Gやらジェームズ・Gなんてどんだけの町に何人居ると思ってるんだ、くそったれめ俺だってジョン・Gだぜ)
本名はJohn Edward Gammell(ジョン・エドワード・ガメル)と告白したテディですが、
I’m a fucking John Gと言っている部分に注目。
A John G、と言っていますがなぜここにAが着くのでしょうか。
I’m John G(俺はジョン・G)ではダメな理由は?
ここでジョン・Gはある特定の個人を指すのではなく”ジョン・Gという名前を持つ誰か”を指すからです。
つまり、ジョン・Gの名前を持つ殺害犯は一人ですが、ジョン・Gだけならたくさん居ます。
”いっぱい居る中の一人”を指すならA John G、”殺害犯というジョン・G”はThe John Gになります。
似た例を考えてみましょう。
飛行機の中で急病人が出たら、日本語では”お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?”と機内アナウンスが流れますよね。
これを英語にすると次の様になります。
To all passengers, please notify our cabin crew if there is a doctor on board.
(お客様各位へ、お医者様がいらっしゃいましたら乗務員までお声がけください)
さて、ここでThe doctorとしてはいけない理由は”お医者様”の中でも特定の人物を探しているわけではないからです。
”お医者様”なら誰でも良い中で、The doctorと言ってしまうと”医者の中でも、ある人じゃないといけない”事になります。
唯一無二の医者を乗客の中から指し示すのであれば、The doctorになりますがそんな事あまり無いですよね。
最後に、次の2つの例を比べてみましょう。
He’s a doctor who treats my back pain.
(彼はお医者で、私の腰痛を治療してくれているの)
He’s the doctor who treats my back pain.
(彼は私の腰痛を治療してくれているお医者なの)
ニュアンスが微妙に違う事を感じて頂けたでしょうか。
前者は医者である事を説明し、その中でも腰痛の治療をしてくれている事を指す様な言い回しですが
後者は腰痛の治療をしてくれている医者を指しています。
どちらも意味合いとしては大きく変わりませんし、間違いではありませんがこの微妙な差を掴む事が重要です。
こんなケースは如何でしょうか。
He was talking to a lady. The lady was laughing.
(彼は女性と話していた。女性は笑っていた。)
同じ女性なのに、AとTheが使われているのは何故だ!
ただこれも良く考えれば今までのルールから逸脱しているケースではないんです。
He was talking to a ladyでは、このLadyが文脈上初めて登場するどこのどんなLadyなのか分からない”ある女性”です。
ただ、2文目では先程”彼が話していた女性”、つまり他の誰でもなく1文目に登場していた特定の女性です。不特定多数の中の一人であるA ladyから、彼が楽しげに話している唯一のThe ladyになった訳です。
2文目もA ladyにしてしまうと、”彼は女性と話していた。女性が笑っていた。”
何だか変ですよね、2人目の別の女性が登場した様に受け取れてしまいます。
人であれ物であれ、対象がクリアならTheに切り替わると考えて頂ければ間違える事はあまりないかと思います。
しっくりこない人には読書がおすすめ
ええ、難しいですよね。
例外もあったり、感覚的なところが大きかったり。
ぶっちゃけ、何となく”ん?何かココでThe使うってヘンだな”で判断できる様になると理想的ですよね、文法を都度頭の中で思い返すよりも。
そこでやっぱり読書で色々な例を見るのが最も上達が速いと思います。
本ならすべてが文字なので、登場人物の台詞以外にも様々な例があって、インプットが多い。
映画もお勧めではありますが、いきなりだと聞き取れない事もあるので英語字幕で観て頂ければと思います。
如何でしょうか、もやもやしていた使い分けを今度こそしっかり掴めそうになりましたか?
是非、次のFacebook投稿ではこうした細かいところもマスターしてさすがと思わせちゃいましょう。