ショッキングな結末と『マローボーン家の掟』で描かれる5つの掟をネタバレありで解説!

マローボーン家の掟


監督:セルジオ・G・サンチェス
出演:ジョージ・マッケイ、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・ヒートン、ミア・ゴス 他
言語:英語
リリース年:2017
評価★★★★★☆☆☆☆☆


 もくじ


『マローボーン家の掟』の主な登場人物

ジャック・マローボーン(ジョージ・マッケイ)
『マローボーン家の掟』

マローボーン家の長男で最年長者の20歳。凶悪犯罪者の父親から逃れる為、母親のローズに連れられて3人の兄弟と共にアメリカで新たな生活を始める。ローズが病死してからは3兄弟の面倒を見つつ、法的に保護者として認められる21歳を迎えるまで母親の死を漏らさない様にしていた。しかし、父親に一家が見付かってからは更なる苦悩が彼を襲う。アリーとは恋仲にある。

アリー(アニャ・テイラー=ジョイ)
『マローボーン家の掟』

マローボーン家が引っ越して来た町に住む少女。マローボーン家の兄弟とも仲が良く、特に長男のジャックとは恋仲にあるが、マローボーン家に疑念を抱く弁護士トム・ポーターからも交際を迫られて三角関係に陥る。衝撃の結末が明らかになった後、ジャックと共にマローボーン家に住む事になる。

ビリー・マローボーン(チャーリー・ヒートン)
『マローボーン家の掟』

血気盛んなマローボーン家の次男。兄弟想いだが、ジャックとアリーの恋仲に嫉妬している。掟の一つである”屋根裏部屋に近付いてはならない”を破り、怪我を負ってしまう。

ジェーン・マローボーン(ミア・ゴス)
『マローボーン家の掟』

マローボーン家の長女。他の兄弟と同じく、兄弟想いだが心配性な一面も。家の掃除や手入れなどを行ったり兄弟の生活サポートしたりと面倒見が良い。近付いてはならないと言われた屋根裏部屋に通じる天井の穴に、アライグマが引きずり込まれていくのを目撃してしまう。

サム・マローボーン(マシュー・スタッグ)
『マローボーン家の掟』

マローボーン家の末っ子。母親亡き後も兄弟を困らせる様な事はしないしっかり者。家に棲む”幽霊”を怖れており、家中の鏡が片されているローズの部屋で、図らずも鏡の中を見てしまい、そこで”幽霊”を目撃してしまう

トム・ポーター(カイル・ソーラー)
『マローボーン家の掟』

マローボーン家が引っ越した町の弁護士で、引っ越した家の権利書をローズの名義にする法手続を担当。素性が曖昧なマローボーン家に興味を持ち、彼らの父親が引き起こした惨劇を突き止める。家の屋根裏部屋に隠された秘密を暴こうとするが、その秘密はトムの想像を絶するものだった。

サイモン・フェアバーン(トム・フィッシャー)
『マローボーン家の掟』

ローズの元夫で、マローボーン兄弟の父親。イギリスで凶悪な事件を引き起こしたがジャックの告発で投獄されるも、復讐の念に駆られて脱獄。マローボーン家を追ってアメリカに辿り着き、兄弟たちに毒牙を向ける。

『マローボーン家の掟』
スカイ君
分かっているとは思うが、ココから先はネタバレありで解説を語って行くぞ!レビュー記事を読みたいって人はこっちをクリックしてくれな!前半はネタバレなしだ!この記事は映画を観ても、良く分かんなかった人向けだぜ

『マローボーン家の掟』の結末解説


屋根裏に隠されていた秘密と事の顛末

『マローボーン家の掟』は凶悪犯罪者の夫から逃れ、アメリカに引っ越して来たローズ・マローボーンと4人の子を襲う悲劇の物語

ローズが病死した後、長男のジャックが兄弟の世話をしていたが、復讐の念に駆られた父親がマローボーン家を見付け出すシーンからサスペンスが高まります。しかし、兄弟を見付けた父親との邂逅が齎したマローボーン家の末路は、衝撃のラストまで明かされません。父親に見付かり、恐怖に慄くジェーンが絶叫した後にスクリーンは暗転。シーンが変わって『マローボーン家の掟』は何事も無かったかの様に6ヶ月後に飛び、4兄弟の平穏な生活を描きます。

それ以降、父親に見付かるシーンまでは描写が無かった”幽霊”の存在が兄弟を脅かします。そして家の天井にはいつの間にか染みが浮かび上がり、破ってはいけない5つの掟が出来ていました。表上の説明は、マローボーン家を襲った父親を屋根裏部屋に閉じ込めて餓死させており、その幽霊は鏡を覗くと現れるというもので、兄弟が力を合わせて父親の手から逃れられたかの様にマローボーン家の生活が続きます。

しかし、結末が語った真実は・・・


マローボーン家の掟
ラストでアリーが手にしたジャックの日記に書かれていた衝撃の結末は・・・

出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

ジャックの告発により、犯罪行為の数々を暴かれて投獄された父親のサイモン・フェアバーン。報復すべく、脱獄を果たしたサイモンは一家を追ってアメリカへ渡ります。サイモンの襲撃を受け、ジャックはジェーン、ビリー、サムを屋敷の屋根裏部屋へ閉じ込めて避難させます。

ローズが奪った金銭を取り返しに来たと考えたジャックは、サイモンに現金を差し出して兄弟には手を出さない様に懇願しますがサイモンは聞き入れず、ジャックに襲い掛かります。隠し持っていた小刀でサイモンの首元を突いて怯ませ、兄弟の元へ戻ろうとするも再びサイモンに頭部を強打されて気を失ってしまう

目を覚ましたジャックが脱兎の如く屋敷に戻った頃には、煙突から屋根裏に侵入したサイモンに3兄弟は惨殺されており、屋根裏部屋には出口を失ったサイモンが一人閉じ込められていました。サイモンを餓死させるべく、屋根裏部屋の扉を煉瓦で封じ込めて失意に沈んだジャック自身は自殺を図ります。しかし、引鉄を引く直前でジャックは人格分裂を起こしてしまい、屋根裏で既に遺体となっている兄弟の幻覚を見始める。それ以降はご存知の通り、恰も4人が生存していて当たり前の様に生活している日々が描かれます。

即ち、屋根裏部屋に封印された秘密とは”ジャック以外の3兄弟が死んでいる”という事実。しかし、ジャック自身も驚いたであろうもう一つの秘密は父親のサイモン・フェアバーンが生存していた事になります。


マローボーン家の掟
辛うじて生きていたサイモンが屋根裏で一人、何を糧に生き存えたかは想像もしたくない

出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

一連の事件と屋根裏部屋の秘密が白日の元に晒された理由は、ジャックが複数の人格を抱え込む事でジャック自身が精神を蝕まれ始め、身体へも悪影響が出始めた為です。ビリー、正確にはビリーの人格に乗っ取られたジャックが屋根裏部屋に潜むサイモンに襲われた後に、激しい口論を始めた兄弟の人格に耐えきれず、発作を起こしてしまったのです。

ジャックの命を危惧した兄弟の人格がジャックを秘密から解放するべく、アリーに真実を明かして救いを求めます。時を同じくしてトムもマローボーン家に忍び込んで酸鼻を極める兄弟の遺体を発見しますが、サイモンに殺害されてしまいます。マローボーン家の悲劇はこうして日の目を見る事になったのです。


不気味な現象が意味するもの

結末で明かされる屋根裏部屋の秘密ですが、ラストに辿り着く前に起こる数々の不気味な現象にヒントが隠されていました

兄弟を象った人形が分かり易い例。ラストを除くとサムが外で遊んでいるシーンでクローズアップされる4体の人形ですが、玩具店で買った品ではなく、手作りの様な印象を受けます。

それもそのハズで、人形はジャックが兄弟の死後に作り、亡くなった兄弟を表します。自分を象った人形で遊ぶなど考えてみれば不気味な事です。

そして度々スクリーンに映される天井の黒ずんだ染み


マローボーン家の掟
屋根裏部屋に潜む幽霊に怖れ慄くマローボーンの兄弟たち

出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

マローボーン家の屋敷で特定の場所にだけ付着した染みは、天井裏で腐乱した兄弟の体液や血肉が広がったもの。想像するだけでもグロテスクで悍ましい状態ですが、ラストで実際にその姿を目にすると悲痛な気持ちに襲われます。

また、奇怪な事に隠された家中の鏡。後程紹介するマローボーン家に纏わる5つの掟の1つに強く関連していますが、鏡は常にありのままを映し出すもの。つまりジャックが如何に死んだ兄弟を生きていると信じていても、鏡に映った姿が必ず自分だけだと幻影が消え、痛々しい現実を突き付けられます

鏡を全て片付けた理由はジャックが幻を見続けられる様にする為だったのです。


マローボーン家の掟
いつしか額に痛々しい傷を付けられているジャックだが、その理由はラストまで分からない

出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

最後に、既に解説したジャックの発作に加え、父親に見付かって物語が6ヶ月後に急転した際、ジャックの額にはいつしか大きな傷が付いています。後に明らかになる様に、これはサイモンに殴られて気を失った時のもの

こうした現象は注意深く観察して考えてみると、屋根裏の秘密と辻褄が合いますし、餓死したサイモンが遺棄されていると示唆するミスリードも功を奏して的確に推理する事は困難ですが、緻密に計算されたミステリーである事が窺えます。

マローボーン家に纏わる5つの掟

鏡を覗いてはいけない

当初は鏡を覗くと幽霊に見付かるという立て付けで封印されていましたが、これは先述した通りジャックが幻影を見続ける為の掟です。分裂した人格を心の中で映し出す事は出来ても、鏡にまで反映させる事は勿論出来ない。

耐えられない真実からジャックを守る為の掟だったのです。

マローボーン家の屋敷を離れてはいけない

理由は大きく2つ

1つはローズ・マローボーンが病死する直前に危惧していた、兄弟が散り散りになってしまう可能性。母親であるローズの死が知れ渡れば、法的に保護する責任を持たない20歳のジャックから兄弟は離されてしまう為、ジャックが21歳を迎えるまでリスクを最小限に抑えたかったのでしょう。


マローボーン家の掟
屋敷の外に出られるのは唯一、ジャックだけだった

出典:”Marrowbone(2017) ©Universal Pictures”

もう1つは兄弟が殺害された後、ジャックの中に複数の人格が宿ってしまったから

町へ生活用品や食料の調達に向かっても良いのはジャックだけです。21歳の青年が5歳児であるサムや、女性のジェーンの人格で人前に出る事は当然避ける必要がある為、元々ローズが定めた掟を、より遵守すべき理由が出来たのです。

屋根裏部屋に近付いてはならない

結末を知っていれば、この掟の必然性は自明です。鏡と同様に、兄弟の死を突き付けられてしまう為、近付いてはなりませんが、ラストに至るまでは幽霊が棲んでいるからとされていました。

呪われた金に触れてはならない

幽霊の不興を買うとされていたのですが、これも屋根裏部屋で餓死したとされているサイモンの曰くに纏わる掟。ローズがサイモンから盗んだ金銭なので、サイモンの呪いを受けるとされた為です。

幽霊が現れたら砦に逃げなければならない

屋根裏部屋の幽霊が起こす不気味な音をかき消す為に音楽をかけられる砦。子供が遊びで作ったダンボールの秘密基地の様な場所ですが、理由は単純で音楽も相まって、ジャックを含む彼の人格が唯一幽霊から逃れられるとされた場所だからです。


いかがでしたか?

『マローボーン家の掟』は4月12日に公開予定!

私もまだ数回しか見直していないので、他にも解説ポイントがありそうなら記事をリライトしつつ、肉付けして行きますので、皆様も気づいた事があれば是非コメントください!

マローボーン家の掟
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