インサイド・ヘッド
監督:ピート・ドクター
出演:エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、リチャード・カインド、ルイス・ブラック、ビル・ヘイダー 他
言語:英語
リリース年:2015
評価:★★★★★★★★★☆
~”笑いの連発、頭の中で繰り広げられるアドベンチャー物語かと思えばあのラスト”~
~”子供はもちろん、大人にも是非観て何かを感じて欲しい映画”~
もくじ
あらすじ
ライリーは笑顔が素敵な女の子
11歳の彼女の中には5つの感情存在していた
その感情はヨロコビ、カナシミ、ビビリ、イカリ、ムカムカ
幸せな日々を送っていたライリーだが、急に遠くへ引っ越す事に
新しい街、家、学校に不安でいっぱいのライリー
彼女の感情たちはそんな不安を何とかしようとするが、ヨロコビとカナシミが迷子になってしまうハプニングが発生
ライリーは永遠にヨロコビとカナシミの感情を失ったままになってしまうのか-
レビュー
怒ったり喜んだり、何かを忘れたり思い出したり・・・そんな人間の脳内をアニメ化したインサイド・ヘッド。先ず心底感心するのは、クリエイターたちの発想。
妙にキャッチーなCMのテーマ曲を大事なテストの途中で思い出してしまってしばらく頭から離れないのは・・・記憶を管理している脳内の作業員たちがおもしろ半分で記憶を呼び出しているからだったのか!と言うか、記憶を管理している頭の中の作業員が居る設定なのかなるほど・・・って考えるとクスっと笑える。
“感情”という題材だけでなく、そんなクリエイターたちの自由でユーモラスな発想のお陰もあってか、観終わった後は映画とパーソナルな思い入れを抱かざるを得ませんでした。陳腐なメッセージやテーマを意図的に避け、ピクサーが生み出して来た数々の逸品の中でも際立って印象に残る作品です。
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
“あーあるある”な日常の一コマを広げて笑いや涙に変えてくれる、素敵な映画がインサイド・ヘッドです。
11歳の少女、ライリーの頭の中にあるマスター・コントロール・ボードを司る感情によって、彼女の行動が明るくなったり暗くなったり怒りっぽくなったりします。独立した感情と言ってもお互いがお互いに口を出すので結果的に思春期を迎えた少女らしい感情の起伏が起こる点も面白い。
ティーネイジャーが不安定なのは、頭の中でそんな事が起こっているからか、と思ったり。
言い換えるとインサイド・ヘッドは本当に人の頭の中で起こっている事を表していて、ディズニーやピクサー映画の多くと違い、ファンタジー映画にはなりません。
ヨロコビやカナシミ、記憶をストアするボール、人格を形成する”島”や夢監督たちは実態の無いものを象形化したに過ぎず、概念としては誰もが持ち合わせているものですよね。
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
インサイド・ヘッドの基軸は”現実”にあるのです。
これはライリー自身が生きる世界からも分かりますね。勿論、全てCGですが街や人や現象は全て我々人間が生きる世界そのもので、ハリー・ポッターの世界の様なファンタスティックさは持ち合わせていません。でも“あるある”な現実のシーンと、脳内で起こる感情のアップダウンを並行して見ると共感と同時に笑いも生まれるのが良く分かります。
ラストでライリーが同い年の男の子が落とした水筒を拾ってあげるシーンは爆笑モノ。水筒を差し出すライリーを見た男の子は思考停止した様な表情で彼女を見つめますが、脳内では・・・
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
いるいる(笑)。女子と話せない中学生くらいの男子。彼の”コクピット”ではサイレンが鳴り響き、パニックになって散り散りに走り回る感情たちに大笑い。これは映画館で声出して笑った(笑)。
勿論、ラストのクライマックスも心を揺さぶられてジーンと来ますが、悲しくて泣きそうになるシーンも。
ライリーが幼い頃、頭の中で生み出した架空の遊び相手、ビンボン。成長するにつれて、次第に忘れ去られていくビンボンですが、まだ完全に忘れられたわけではない彼は、ライリーとの楽しい昔の思い出を集めまわっているところをヨロコビとカナシミに遭遇します。
いつか思い出してもらいたい、そして一緒に遊びたい。そんな一途な想いで出番を待っている彼ですが、ハプニングが重なり要らなくなった記憶を捨てる谷の底にヨロコビと一緒に落ちてしまったビンボン。
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
このままではヨロコビまで完全に忘却され、二度とライリーが喜びを感じる事もないかも知れない。何より、彼女の人格を司る記憶を持ったヨロコビは何としても救い出さないと行けない。
ビンボンは自分を犠牲にしてヨロコビだけを救い出します。
忘却(脳の世界で言う”死”なんだと思いますが)を受け入れる彼の麗らかな表情は、涙腺を緩めます。彼にとっての大親友ライリーの為なら・・・自分が成長した彼女にとって、もう必要のない存在だと認める辛さを思うと、胸が締め付けられます。
子供にとっては愛着が湧いてきた頃に死んでしまうキャラクターに泣くでしょうし、大人はその自己犠牲の精神、一途さ、そして子供の縛られない想像力の産物は成長するにつれて消えゆくものだと改めて実感し、切なくなるシーンです。
もう記憶に完全にないけど、実は自分にも想像上の友達がいたりしてとか思い返してみたり。消し去っていたらごめんよ・・・
インサイド・ヘッドでは、ヨロコビやビビリやムカムカなどの感情にそれぞれ役割がある一方でカナシミだけは存在意義が分からないとされています。確かに、カナシミがコントロール・ボードを触るとライリーは悲しい気持ちになり、泣いてしまい、周りを困らせてしまう。
暗くて冷たい気持ちになるし、取り敢えずカナシミにコントロールさせないでおこう・・・
これって結構、常日頃色んな人から言われる事に似ているなと。私、結構慎重派と言うかネガティヴシンキングが働く方なので、物事を悲観的に考えてしまうんですよね。
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
運も悪い方だし。宝くじ買ってはいけないヤツ。
悲観しし過ぎるのも良くないのは確かですが、インサイド・ヘッドではカナシミにもヨロコビと同じだけの存在価値と意味がある事に気付かされます。
カナシミがあるからこそ人に涙を見せ、自分を大切に想ってくれている人たちに救いを求める事ができる。人間に与えられた素晴らしいコミュニケーションスキルの一つで、仲間にSOSシグナルを出して手を差し伸べてもらえる。
出典:”Inside Out(2015) ©Walt Disney Animation Studios”
気持ちを押し殺して仮初めの喜びを装い続けたら、ある意味人間は一人ぼっちなんだなと感じた瞬間に私の中でも色々な思い出や感情がドッと呼び起こされて泣いてしまいました。悲しい事も、泣く事も喜んで笑う事と同じくらい大事。
こんなに人間の心に触れる、美しいメッセージがあっただろうかと感動したインサイド・ヘッドでした。・・・私が泣いたのは、頭の中にいるヤツらのせいですからね。
この映画を観られるサイト
ユーモアの中で誰の人生においても大切な感情の事を思い出させてくれるインサイド・ヘッド。
見逃してしまった人も、久々に観たいなと思った方もこちらの動画配信サービスから楽しんで頂く事ができます。
まとめ
ピクサー作品の中でも奥深く、誰しも笑えるジョークでいっぱいな傑作。ストーリーも複雑ではないのに、とても大切な事を思い出させてくれるインサイド・ヘッドはどんな人にでもお勧めします。
ちなみに、英語を学びたい人にとってもとてもシンプルな英語を使っているディズニー映画ですのでリスニング力アップ、フレーズや単語を覚えるのにも打って付けです。
是非、大切な人と一緒に観て頭の中の小さな感情たちに泣かせてもらってください。