アイデンティティ
出演:ジョン・キューザック、アマンダ・ピート、アルフレッド・モリナ 他
言語:英語
リリース年:2003
評価:★★★★★★★☆☆☆
~”これは夢だ・・・これは夢だ・・・だけど、誰の・・・?”~
もくじ
あらすじ
多重人格障害の疑いがあるマルコム・リバースは凄惨な連続殺人の罪で死刑を言い渡されていた
一方、大雨の為に寂れたモーテルに一晩閉じ籠った10人の男女を何者かが次々と殺害
だが、これはただの猟奇殺人ではなかった
殺人犯は血塗れの殺人現場を一瞬にして死体もろとも消してしまうなど人間には到底不可能な奇行をやってのける
その頃リバースは担当精神科医が判事の前で、多重人格障害者である事を証明できれば死刑を免れると知らされる
リバースとモーテル連続殺人の関係は?不可能犯罪の犯人は?
謎が謎を呼ぶミステリースリラー
レビュー
スリラー映画としては非常に楽しめた作品です。あらすじを読んだ上で、私が「スリラーとして楽しかった!」というとびっくり仰天する前代未聞のトリックが待っているのか?と思われそうですが、そうではありません。理由を書くとネタバレになるので一言で言うと、問題は殺人のトリックではなく、殺人が持つ「意味」なのです。
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で、ここからがネタバレ。モーテルでの出来事を観れば観る程「有り得ない」が重なり、特段勘が良くなくても「これ、片付けるには夢オチしかないな」と気付きます。
夢オチで良いなら、俺でもこの映画より不気味で怖いシナリオ書けるぞ!と思って萎えますよね。だって人が殺された理由も、殺され方も、犯人が誰なのか、そもそも居るのか居ないのかも意味をなさず、どうでも良くなって「この2時間は何だったんだ」となりますもんね。
まずスリラーとして楽しめた理由は「誰がどう殺されてしまうのだろう」というハラハラ感、そして審議室でリバース自身の命が天秤にかけられている緊迫感がダブルで迫る感覚。
ただ、正直モーテルのシーンはホラーに近い感じがして、演出のスタイルにはこれと言って目新しいものはなく、古いレシピをレンジでチンした様に思えるという指摘はあるかも知れないです。
個人的には割りとその点が好きでしたが。何度使いまわされても飽きない不気味な音、静寂の後に訪れる席から飛び跳ねてしまう様な叫び声や大きな音、ゆっくりドアを開けたらそこにいる死体とチラつく何かの影・・・ドキドキさせるには充分ではないでしょうか。
そのレンジでチンした感じが嫌いだと、最初の1時間弱はつまらない可能性はありますし先程述べた通りリバースとモーテルの関係に途中で大体予想が付いてしまうと思いますが後半はチンではなく、手料理が出てくる訳ですよ。サイドポテトにうんざりし始めた頃に出てくるバーガー。ここが私の中で最も評価したいポイントでした。
リバースが猟奇的な連続殺人犯が犯した殺人を頭の中で脚色もつけながら再現している、或いは殺し足りずに妄想しているのではないかという予想自体は大ブレしませんが、冒頭に書いた様にその「意味」がシンプルながらも「あっ」となるものなんです。
リバースの命を綱渡りさせているストーリーとモーテルの殺戮が直結する気持ちの良さ。モーテルの男女10人は全てリバースの人格で、殺人劇こそがリバースの命の行方を左右する重大なプロセスそのものだったのです。
このパワフルな啓示が、不可解な殺人や動機にトリック無しで快感にも近い納得感を与えてくれます。作品のユニークなどんでん返しは、分断されていた点が一気に繋がる(名探偵コナンがよくやる「ピシャッ そういう事か!」的な)これぞミステリー!と唸らせてくれました。
と言う一方で、ちょっとマイナスな点を挙げるとするともう少しキャスト陣の旨味を活かして欲しかったなぁとも思いました。
キューザックもピートも何となく一本調子で、恐怖心や混乱が後半にかけて伝わりにくくなってきます。特に、どんでん返し後は前半よりも不可解さが薄れてきて現象に対する恐怖よりも、俳優たちの細かな挙動に目が行ってしまうからかもしれませんが、噛み続けたスルメみたいにちょっと飽きてしまう。
そういう意味では、A-級になりたいB-級映画感は否めません。A-級になるポテンシャルはあったのに、後半に辿り着くまでが勿体ない・・・けど前半からちょっとA-級感を出そうとして来る感はありつつ、てな点は人によっては気になるかなぁ。
私も改めて考えてみると気になるポイントではあるので、リメイク版が出るなら是非この辺り工夫して欲しいなと。サイドポテトじゃなく、最初から最後までバーガーくれたら良いのに・・・
スリラー好き、ミステリー好きなら間違いなくお勧めな一品です。クライマックスに至るまでちょっと飽きる可能性はなきにしもあらずですが、エンディングに向けて観続ける価値は充分にあります。
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まとめ
特にホラー好きでもあるのであれば絶対観るべき作品。嵐の夜にカウチポテトするのに最適です。「ハラハラ」も「キャー」も「うっそ!」も揃ったIdentityは誰とでも楽しめるミステリースリラーのはず。