“TAU/タウ”が魅せる新しいA.I.映画のカタチ

SF
 

TAU/タウ


監督:フェデリコ・ダレッサンドロ
出演:マイカ・モンロー、エド・スクライン、ゲイリー・オールドマン 他
言語:英語
リリース年:2018
評価★★★★★☆☆☆☆☆


~”少し切なくもダークなサスペンス”~
~”独特な世界感が描くヒトとマシンの哀愁漂う関係”~

 もくじ


 あらすじ


夜の街で娼婦まがいの仕事をして生活している女性、ジュリア
仕事から戻ったある日、彼女は何者かに誘拐されてしまう
目を覚ますと殺風景な部屋で他にも誘拐されたらしい2人の男女が
3人で脱出を試みるもガードロボットに2人殺されてしまい、ジュリアも捕まってしまう
ガードロボット―TAU―は3人を誘拐した謎の男、アレックスが作ったAIロボットだった
アレックスの目的は?
ジュリアはTAUをすり抜けて無事に脱出する事が出来るのか―


 レビュー

映画ポスターに興味を持って観てみようと思ったのがきっかけでした。AIを用いたスリラー映画は珍しくなく「エクス・マキナ」などが代表例だと思いますが、TAU/タウがユニークなのは人間とAIの繋がり、それも“感情的”な繋がりを通じて両者の共通点を浮き立たせてくれる事

ネタバレなしなので、詳しくは考察で解説したいと思いますが、モノトーンで退屈なシーンやスッキリしない点はあるものの、後半にかけて「どうなるんだろう?」という好奇心をくすぐられる感覚は楽しめました。と言う事で残念な点とお勧めできるポイントを纏めてレビュー!

スカイ君
ココから先はネタバレありだよ!
幾何学模様が織りなす独特の世界観
マイカ・モンローが突然囚われの身に

少し観ただけでも感じる近未来感独特の人工的な雰囲気は、他の映画とはかなり違います。

作品全体の幾何学、”カタチ”の使い方が特徴的な事にお気づきでしょうか。TAUの開発者アレックスは、史上最もハイレベルなA.I.を開発して世界を一新しようとしており、その彼の登場シーンは全てジュリアが幽閉されている家の中。

仕事の為、外出する様ですが外出後の彼は一切映し出されません。その家と言えば、床の模様、オブジェ、仕切りの模様、テーブルの形状、全てが正方形や長方形。TAU/タウの”顔”も逆三角形の中に閉じ込められた円形ですね。

何処かも分からない地下牢の彼女を待つのは・・・

“だから?金持ちの豪邸っぽいデザインなだけじゃん”と思うなかれ、(まぁ、そういう要素もあるだろうけど)こうしたカクカクした直線的な形状を”近未来的”とか”モダン”と感じるのは、自然界に存在しない形だからです。

メインの舞台となるアレックスの家がいかに外界や自然から切り離され、そこに君臨する人工物はTAUではなく、主のアレックスである事を表しています。

冷酷で人間らしい感情を持たず、A.I.のTAU/タウの方が寧ろ純粋な子供の様で人間らしい。

 

そこまで考えると、TAU/タウの”顔”である直線的な逆三角形の中に円が閉じ込められているデザインにも意図があるハズ。

円形や丸みのある形は、寧ろ自然界に存在する”ナチュラル”なもの。アレックスと対比すると、より人間らしいTAU/タウの方が人工的な壁に幽閉された人格を持つ者を表すと考えられるのではないでしょうか。

アレックスが直線的な”人工の壁”でTAU/タウの本来的な人格、“円”を閉じ込めて支配している事を表すのではと。あらゆるモノの形に注目しながら鑑賞すると、より多くの意味を汲み取る事が出来て面白かったです。

 

そんなTAU/タウの人格が魅力的

ただの監視/殺人ロボットではなく、一人のキャラクターとしてその存在をしっかり魅せてくれるのは個人的に好きなトコロ。


TAU/タウとジュリアの複雑な友情は最後に・・・

人工知能だけあって、初登場時は全知全能な最強プログラムかと思いきやジュリアと会話させてみると「人はどこから来たの?」「外の世界って何?」「”木”って何?」と言った調子で一種のギャップ萌えを感じる。

チャッピー的な要素ではありつつも、オブジェ的な外観とは大きく違う中身がそもそもあどけない見た目のチャッピーとは異なるポイント。

そしてTAU/タウの表情もイカの頭もない様に見える逆三角の”顔”から発される心地よい深みのある”声”も実は気に入っているポイントの一つ。あのゲイリー・オールドマンの優しげで微かな色っぽさ漂う声音がTAU/タウの外形に不思議とマッチしてキャラとしてよく際立ちます。この点、キャスティングが良かったとも言えますね。

 

残念な点も結構あるから★★★★★

さて、悪いところを言うとそもそものストーリーラインが謎ではあります。

例えば、ジュリアが誘拐された理由は映画が進むにつれて明らかになりますが、あまり納得が出来るものではありません。厳密に言うと目的はクリアだし、アレックスがやりたい事も理解はできますが誘拐しないと実現できない事なのか疑問です。


冷酷で読めない天才、アレックス

アレックスほどの知能、財力、権力がある人物なら犯罪に手を染めなくても目的を達成できそうなのになぁ、と。そしてジュリアがTAU/タウに逆ストックホルム・シンドローム的な心理トリックをかまして脱出試みるシーンが続きますが、正直TAU/タウがA.I.にしてはバカ過ぎる?

ギャップ萌え要素はあるけど、それにしてもなぁと思うトコロもあって残念。A.I.と聞くとスーパー高IQな主人公との知能戦を期待しがちですが、アレックスもTAU/タウもその点は特に凄くなくてモヤモヤっとする感じ。でも始めからその点踏まえて観てもらえれば、そんなに気にならないかなとも。

要はA.I.という言葉に惑わされて先入観を持っちゃうと期待ハズレになっちゃうかもという程度ではあるかな。

と、映画の独特な雰囲気やミドコロ、残念なトコロをご紹介しましたが「あ、A.I.大戦的な映画じゃないんだ」と分かった上でも興味があれば一旦観てみると良いです。派手なロボット間のドンパチを期待しているなら、お勧めはしません。


 この映画を観られるサイト

Netflixオリジナル映画ですので、視聴できるサービスは現在のところNetflixのみとなります。



画像提供ⒸNetflix

 まとめ

この映画で楽しめるポイントは大きく2つ。
1.”カタチ”が織りなす独特の雰囲気
2.ジュリアとTAU/タウの遣り取りを通じた脱出劇
ですが、A.I.と人間のハイレベルな知能戦を思い描いている方には、お勧めしない映画ですし、評価は総じて高くない作品ですが個人的には嫌いじゃないです。マイルドなサスペンス好きの友達やカップルで観るのが丁度良いかと思います。

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